犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

ベトナム料理を経営するミャンマー人

2015-08-10 23:48:06 | ミャンマー

 東京出張の夜、久しぶりに高田馬場のミャンマー料理屋に行きました。

 先客は一人だけ。店の主人とミャンマー語でしゃべっていました。

 プーディージョー(夕顔の実の揚物)をつまみに2本目のビールに突入したとき、話しかけてみました。

「出身はミャンマーのどちらですか」

「ヤンゴンです」


「今、水害がひどいみたいですね」


「ヤンゴンは大丈夫ですよ。北のほうがひどいね」


「日本は長いんですか」


「96年に来たから、もうすぐ20年です」


「どうりで日本語がうまいですね」


「奥さん日本人だしね。でも漢字は読めないよ」


 1988年の民主化弾圧のあと、大学が閉鎖されたり、就学年数が短縮されたりして、ミャンマーの学生たちはたびたび反政府デモを行いましたが、彼も大学2年のときにデモに参加。弾圧されたので、日本にやってきたとのこと。

「父は軍人でね、ぼくが民主化運動に関わったんで、大喧嘩になった。でも日本に来るためのお金は出してくれたよ」

「仕事は何ですか」


「レストランやってる。大学は工学部だったけどね、日本で生きていくには飲食店しかないから」


 名刺交換してみると、お店は六本木。

「娘が今、六本木で働いているんですよ」

「最近、二店目を出したんだ。武蔵小杉に」


「へえ、娘は武蔵小杉の近くに住んでるんです。偶然ですね」


 二人いる子どもの下の子は、インターナショナルスクールに通わせているというから、レストランは成功したようです。

 ここで名刺をよく見ると、レストランはミャンマー料理ではなくて、ベトナム料理でした。

「なんでまた、ベトナム料理なんですか?」

「うーん、それには深いわけがあってね。話せば長いんだけど」


「ぼくはベトナム料理より、タイ料理やミャンマー料理のほうが好きだけどなあ」


「でも、ヘルシーなイメージがあって、女の子には人気だよ」


「もしよかったら、もう一軒行きませんか」


 なぜベトナム料理なのかを聞こうと思って誘いましたが、二軒目のカウンターバーではそこにいる女の子と盛り上がっちゃって、結局、聞くことができませんでした。


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