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Brugge Style
レイン
雨が降ると思い出す人がいる。
彼に初めて会ったのは15年以上前だ。
助教授をしていた友人が、院生兼客員(そんな待遇があったのか)の「レイン」の世話係になったので、食事時の会話つなぎにぜひともつきあってくれ、と言ってきたのだった。
今でこそわたし程度の英語を話す人はどこにでもいるが、(信じられないかもしれないけれど)当時は神戸大阪でも比較的希少材だったのであろう、よくこうやっていろいろな場所にかり出された。
待ち合わせ場所に着くと、彼らは2人してteacher'sを飲んでいた。
レインは「眼鏡をかけていて化粧もおしゃれもしていないくて、でもケルアックを読むような女が好みだ」と言った。
わたしはコンタクトレンズに化粧ばっちり、ブランドものの派手な洋服が大好きで、ケルアックだったらセリーヌが好き、と思っている女だったが、わたしたちは神戸ー三田(さんだ)間でひんぱんに文通(当時はまだインターネットなどなかった。いい時代だった・笑)をするほど仲良しになり、よく一緒に映画を見に行った。
ハル・ハートリー、ロバート・アルトマン、一部で流行っていたジョン・カサヴェテス。おおジェネレーションX(笑)。
彼は自分のガールフレンドのことを熱愛崇拝していて、obsessionをつけていた。
静かで、熱く優しく、真面目で、なぜか少々悲しげな人であった。
そうか、彼自身が「眼鏡をかけていて化粧もおしゃれもしていなくて、でもケルアックなどを読む」ような男だったのだ。
インターネットで文通(とは言わないか)ができる世の中になった。われわれは今は1年に1回クリスマスカードを交換している。
ボストンで弁護士をしている彼にはもうたぶん実際に会うことはないだろう
クリスマスのカードが届くだけ
でもなぜか暖かくやわらかい雨が降ったら彼のことを思い出すのだ。
...
何度読み返しても、レインについて何が書きたいのかということも、なぜレインについて書きたいのかということも、自分で全く分からない。
でも、もし分かっていたらここにこうして書くこともないのだろう。まあ、そういうことか。
しかも今日は雨なぞ降っていない(笑)。
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