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Brugge Style
manon2019 marianela nunez
昨夜はMarianela Nunezの『マノン』だった。
相手役のデ・グリューはRobert Bolle、バレエファンを興奮させる組み合わせだ。
まずは盛り上がり方が違う。
拍手が鳴り止まないので他の回よりも上演時間がながくかかるという。
マリアネラは全てが揃ったバレエ界の女王だ。彼女には若い頃から「グレート・マザー」的な雰囲気があり、そういう役柄(キトリとかカルメンとか、あらゆる女王役、情けない男を許す役)、にひときわ映える。
『マノン』は関わる人間をことごとく巻き込んで不幸にしながら進む車輪のような絶世の美少女役で、ええ...マリアネラはとても何も知らないティーンエイジャーには見えなかった。
しかし、10代で清らかで弱々しくいたいけなだけではなく、堂々たるデカダンな風格でその場を支配する「女王的な」少女というのも説得力があるわけだ。
なんとなれば、一人の人の中にある両極性間の振り子運動、落差、といったものが、悪魔的なほどに魅力的な人物の秘密でもあるからだ。
1幕目の彼女がまさに大金持ちの貴族に売られようとするシーンの3人の踊り(上の写真)、2幕目の高級娼婦として大成功する彼女の秘密を明かすような大勢の男性客との踊り、舞台上を支配する色香と色気には満席会場がシーンとなったほどである。
デ・グリュー役のボッレのあの美しい瞳で見つめられたら(わたし、毎回同じことを言っている)、そりゃあマノンとてお金よりも愛を取ろうという気になろうというものだ...
バレエ版ではそういうことになっているが、原作ではデ・グリューが勝手にマノンを理想化し、自分はマノンと相思相愛だったと思っているに過ぎず、魔性のマノンはおそらく出会う男全員にかたっぱしから同じ思いを抱かせていたに違いないのだが。
以前、バレエ版『マノン』の話(アンシャン・レジューム下のフランス。修道院行きの途中、絶世の美少女が女衒である兄によって高級娼婦として売られそうになる。しかし青年と出会い、「ほんとうの」愛のために逃避行する。再び売られて大金持ちのミストレスとなり豊かな生活を経験。最終的に青年に説得され、再び逃げようと資金作りのイカサマ賭博をしかけるが露見、植民地であるアメリカ大陸ルイジアナ州に島流しにされ、そこでも問題を起こし、ついに沼地で息絶える)という内容を話したら「そんな不道徳な話を楽しむなんてどうかしている」と言われたことがある。
いや、たしかに不道徳で、女性蔑視で、郷ひろみの「ハウメニーいい顔」のようなくだらないバカらしさもあり、どうしようもない話だが、これは額縁のついた「お話」である。
昔、劇場で舞台上の悪役に憤慨するあまり客席から発砲したという事件があったそうだが、そのように混同してしまうケースは今の人々の間にもあるようだ。
愛かお金か。娼婦か聖女か。
昨日書いた内容の続きで言えば、このお話は「エッセンス」だろうか。
今シーズンのものではないが、ロイヤルバレエの映像
https://www.youtube.com/watch?v=pyAdb6xTel8
(写真は2014年で、ROHから拝借)
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