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マノロ・ブラニクとロココの貴婦人




 

個人の蒐集が元になったロンドンのすてきな美術館、ウォレス・コレクションではマノロ・ブラニク展を開催中。

An Enquiring Mind: Manolo Blahník at the Wallace Collection

レイノルズやゲインズバラの描く貴婦人方には、わたしは面白みを感じられずあまり興味を持っていない。
でもまあ、肖像画を注文するのならば、自己愛と虚栄心がこのように美化して描いてくれる画家を選ぶであろう...だから彼女らの気持ちもよくわかる。

ロマンあふれるマノロ・ブラニクの絹の靴の展示と相まって、英国ロココの肖像画をとても楽しく鑑賞することができた。
優雅に理想化された女性たちは、実際にこのような愛らしくもセンシャルな靴をお召しだったのだろう。


真打はフラゴナールの展示だ。
『ぶらんこ』に乗った若い貴婦人は、木漏れ日が宝石を反射するかのように輝くなか、世にも美しいオレンジがかったピンクのドレスをまとい、ふわふわした裾から大きく足を蹴り上げる。ピンク色のミュールが脱げて空中を舞う。足元には愛人と、背後にぶらんこをゆする彼女の夫。くちびるに指を当てるキューピッドの像。

この官能的で背徳的で卑俗ですらある内容は、フラゴナールによってあくまでも明るく陽気で優雅な雰囲気に仕立て上げられている。しかもユーモアすら漂う。
「フラゴナールが描けば優雅に、ブーシェが描けば卑猥に」とは有名な言葉だ。

この絵のそばにもマノロのピンクのミュールが...ミュールは脱げやすいことから、性的に奔放(つまり尻軽)という意味を秘めている。なんという楽しげなエロス。


マノロ・ブラニクは現代の女性の靴を芸術に高め、同時に、少々皮肉ではあるが、女性がどんなに派手で浮ついた靴を選ぼうが自由なのだ! と謳った第一人者だったとわたしは考えている。

ビバ・マノロ!


最近、再び大人気を盛り返しているようだ。
わたしも大きいビジューがついているハイヒールを最近買った。次回はこの靴を履いてウォレス・コレクションへ出向いてみようと思う。
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