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Brugge Style
swan lake 2022 opening night
わたしの2022年の3月は、英国ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』のオープニング・ナイトで始まった。
当然のようにオープニング・ナイトは、オデット/オディール Marianela Nunez、ジークフリード王子 Vadim Muntagirovで予定されており、この組み合わせの大大大ファンのモエも最高の席を取って臨んだのだったが、前日になってMarianela Nunezに代役が立つというお知らせが来た。
もちろん事情は理解できるものの、正直言って相当がっかり...
SNS上でも騒然となる。怪我をしたのか、病気なのか、その他どんな理由があるにしても、早い復帰を心から望む、などと。
開幕前に暗い顔をしたダイレクターのKevin O’Hareが舞台上に現れて、「マリアネラは新型コロナから回復中」と語った時は、会場から「おお」というため息のような声の集合体が上がった。
加えて、ウクライナの状況を鑑み、支持を表明するため、ロイヤル・オペラ・ハウスが黄と青のウクライナ国旗の色にライトアップされていること、今後はバレエやオペラの開演前に毎回ウクライナの国家がオーケストラによって演奏されること(全員起立)などの説明があった。
「シリアやアフガニスタンやパレスチナの時はこんな対応はしないのに?」と思わなくもなかったが、whataboutismはもっとどうなのかと思うし(別に論じたらいいだけだ)、昨日の記事にも書いたように、西洋中心の独善的な政治他の状況がどうであれ、それを武力で解決しようとするのは完全に間違えていると思うしで、わたくしも敬意と連帯を表する。
さて、オープニング・ナイト、Liam Scarlett版ではロットバルトの風貌がプーチンにどことなく似ている...
という話は置いて、会場は大いに盛り上がり、最後は割れんばかりの喝采ではあったが、オーケストラを含め、全体的に一昨日のリハーサルの方がよかったのではないか、と感じた。
ジークフリード役のVadim Muntagirov、憂鬱な王子すぎ。恋愛している男のオーラ出てなさすぎ。
高くしなやかで美しいジャンプの着地は音もせず、正確さと上品な雅やかさも言うことなし、サポートも上手い。だが、もっといいのはもっと何回も見たことがあるぞと...こういった「わたしだけが知っている」というのはファンならではの特異な心理かもしれない。
もしかしたら彼も体調ががあまりよくないのではないか? とすら思った。
オデット・オディールのYasmine Naghdiは美しいが、どこか、何かが足りない。薫ってこない。もしかしたらこのレベルでは好みの問題なのかもしれない。
大技をさらっとやってのける割には、こんなところでよろつく? というところもありで、わたしは、もっとやわらかいバターのようななめらかな、とぎれなさ、縫い目のなさが好みかな、と思った。
特にオディールが普通の人すぎた。
オディールは登場とともに舞踏会の場の空気が一瞬にして変わるほど艶やかな色香漂わせ、高貴で、悪辣で、危険で、翻弄するようでないと、王子をまずたぶらかすことができないし、王子がまるでただのボンクラ(まあそうなんだけども)に見える。
もうひとつ感じたのは、ロイヤル・バレエは最近多くのダンサーを最上位のプリンシパルに昇格したためだろうか、たとえば重要で難しいパ・ド・トロワを完璧に踊るようなダンサーがいなくなったのではないか、と。
プリンシパルを厚くし、若手にチャンスを多く与えるのも大切かと思う一方で、こういう踊りをこそ完璧に見たいなあ。
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