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Brugge Style
osipova/linbury
ロイヤル・バレエの大スターの一人、Natalia Osipova(以下ナタリア)は、同バレエに移籍して以来、自己キュレーションによる多彩なサイドプロジェクトをいくつも試みてきた。
今回の、リンベリー・シアター(ロイヤル・オペラ・ハウス地下)での最新作は、バレエの枠を超え、これまでで最も破天荒だったと言えるかもしれない。
もうこれはシアター(劇)!!
憑代(よりしろ)となる子供のように純粋で愛らしく、神の言葉を語る巫女のように力強く、成熟して、妖艶でさえある...
彼女にとっては、ダンスもセリフのある芝居も、境界線がないのかもしれない...
3つの演目は、70年代から歴史的な2つのダンス作品。
まずはマーサ・グラハムがミノタウロスの神話を再解釈したErrand Into The Maze『迷宮への使命』。
なんとセットはイサム・ノグチ氏による。
表現主義的な振り付けの、伝統的なバレエにない角度、苦悩するような小刻みな動き、身体の収縮と拡大で、ミノタウロスの圧倒的な男性的パワーに対峙し、やがて恐怖から解放され生まれ変わるアリアドネ役。
ミノタウロスを演じるのは、ロイヤル・バレエのプリンシパル、堂々のMarcelino Sambeであった。
次にフレデリック・アシュトンFive Brahms Waltzes in the Manner of Isadora Duncanの有名な『イサドラ・ダンカンのブラームスの5つのワルツ』。
映像作品でとてつもなく、胸が締め付けられ泣けるほどヒューマンで美しいのだが、生で見たかったよ...
最後に、ノルウェーの振付家ヨー・ストロムグレンによる世界プレミア作品The Exhibition『展覧会』(これがもう劇作品)。
巨大な絵画が展示されるギャラリーで出会う二人を描いた作品だ。
ナタリアはロシア語でペラペラと饒舌に語る奇妙で魅力的な女性役。
一方、パートナーのChristopher Akrillは、なんというかまあ、モテそうにもない英国人男性役。
なぜかナタリアは彼を殻をセラピー的にこじ開けることにこだわり、最後に絵画の中に一緒に飛び込み、絵画と一体化するのだ。
ひょっとして彼女はミューズだったのか...
期待していたものとは全く違っており、唖然とした(そりゃファンなら彼女の天衣無縫な踊りを期待している)が、彼女が何をしたいのかが十分伝わってきた。
次回のプロジェクトも楽しみである。
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