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アンダルシアのエンドレス




内陸のグラナダとセビリヤは、日中の気温が45度まで上昇。
食いしん坊バンザイのわたくしもさほど食欲が湧かない。夕方になるまでは...

日が暮れ始めると、タパスをハシゴで食べに街へくりだす。
この土地に限っては、真夏は、コース料理を食べに行こうという気にはあまりならない。もちろん美味しいお店もたくさんあるのでしょうけれど!

まずは大大大好物、ホタルイカ(チョピートス)の唐揚げ、エンドレスで。
白ワインと。
ザクザクした歯触りと、凝縮された旨味...海の味だ。




マテ貝のガーリックバター。
貝類は種類が豊富で(アサリやナミノコガイ)黙々と食べる。ガーリックバターってなぜにあんなにおいしいの...




イカ墨の旨味ときたら。




これがなくては。ハモンイベリコ。

ある日、両隣がアメリカ人の1人旅行の若い女性で、ひとりではいろいろな種類のタパスが食べられないのが残念だとおっしゃるから、遠慮するのを押し切っていくつかタパスを分けて差し上げた。
おばちゃんは若い子に食べさせるのが喜びなのである。





このジェラートのお店、超好み。
写真はミントとレモンのソルベ、ピスタチオと薔薇。チョコレートムースのジェラートでトッピングしてくれた。
別の日に食べたオレンジのシナモン風味も超絶おいしかった。




カフェ・コン・イエロ、アイスコーヒー最高。
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セビリアへ 歌は道連れ




グレナダから車で2時間45分。

アンダルシアの州都、セビリアへやってきた。




浅い知識しかないため、セビリアというと、フィガロやカルメンやドン・ジョヴァンニらのカラフルな面々が一番に思い浮かぶ...

アンダルシアの山の中(日中気温45度まで上がった)を運転しながら、『私は町の何でも屋』や『ハバネラ』、『ドン・ジョヴァンニ、晩餐に招かれたので参った』、ハイテンションで盛り上がる。

「セビリア」という街の個性はハナシの内容にはほとんど影響はないと思うのだが、どんなイメージがあったのだろうか。異国情緒あふれる豊かで遠い街?




途中、コーヒー休憩をした後、わたしが目を見開いて運転できるよう、娘がSpotifyのリスト「80年代神戸」をかけてくれた。

このリストにある曲をリアルタイムで聞いていた80年代、あの頃のわたしは想像できただろうか、2022年に自分の娘と2人でレンタカーを駆っているとは。




娘は80年代から90年代にかけて流行した曲の一部はクラシックとなり、今でもクラブなどでは人気であるという。
例えば
R.E.M "Losing My Religion" (91)
Black "Wonderful Life"(86)
Tears for Fears "Everybody Wants to Rule the World" (85)

他にもごまんとあるのだろう。


娘の質問に答えて

「今と違うところをあげるとしたら、80年代から90年代初頭にかけては、『希望』の雰囲気があったということかな。これから経済的にはますます豊かになり、後進国もその例に漏れず、ジェンダーや人種間の平等がすすみ、教育のレベルも底上げされ、戦争のない、より公平な世界が実現するのだという希望が共有されていたと思う。」




そういえばセビリアはわたしの大好きなベラスケスの出身地でもある...が絵画は鑑賞しながら運転するわけにはいかぬ。

アンダルシアの街並み、美しい。

わたしは通り過ぎていくだけの人だが、街並みも歌も、残るものは、残る。


カルメンが悪さをしていたような広場...
カルメンが働いていたタバコ工場のモデルになった建物は現在大学のキャンパスで
ファサード工事中だった
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アルハンブラは「赤い城壁」





「たーら らーららー...」

と、2013年の記事も、この鼻歌で書き始めている。

タレガ「アルハンブラの思い出」。誰もが知るあのギターの名曲。

(あるはずのない)懐かしい思い出に胸がいっぱいになるあの旋律。後世に残る名曲には、この「自分は個人的に経験していないのに、なぜかひどく懐かしい思いを掻き立てられる」という要素があるものが多いと思うのだがどうだろう。


シャトーの青い夜
エクサンプロヴァンスの青い朝
パリの赤い朝
アルハンブラの青い夜
アルハンブラの青い薔薇

と、しつこく続けて今日は

アルハンブラは「赤い城壁」という意味なんですって! 
アラビア語で「赤い城塞」を意味するアル=ハムラー。

ええ、たまたまです。




魔法を使ったので完全に無人、ライオンの中庭。

早朝の気温は21度。ひんやりした柔らかい大理石を足の裏に感じ、噴水の鈴のような音色と鳥の鳴き声だけが聞こえる。

ムカルナス(鍾乳石状の飾り)の森林に囲まれた明るい泉からせんせんと流れる小川。完全な調和。ロゴス。

4つに区切られ、水路が清らに流れるパラダイス(アラビア語の「庭」が語源)である。
四分庭園は「エデンの園」を模倣したものだ。4本の川で4つに分割された庭は「世界」の象徴でもある(聖書にもこの記述がある。起源はペルシャ)。




アルハンブラはグレナダの丘の上にある。

8世紀、イベリア半島にイスラム国家のウマイヤ朝が侵入、のちの後ウマイヤ朝時代に形成された砦が原型となっている。

11世紀になるとキリスト教徒の国土回復運動であるレコンキスタが起こる。

13世紀にはイスラム側に残されたのは、グラナダを中心とするアンダルシア地方のみとなっていた。
アルハンブラを拡大したのは、この時代のナスル朝(グラナダ首都)である。




16世紀直前、レコンキスタによってグラナダが陥落。
直後にカルロス5世がアルハンブラ内にカルロス5世宮殿を建設(未完)。こちらが前回の記事のコンサート会場として使用された建物だ。


アルハンブラは長く忘れ去られていたものの、19世紀に「再発見」される。

アメリカの作家ワシントン・アーヴィングが『アルハンブラ物語』という紀行文学を書いたことによって(『リップ・ヴァン・ウィンクル』の作者でもある)。
彼は数カ国語を操る外交官でもあり、カラフルな人生を送ったようだ。




アルバイシンから眺めたアルハンブラ。
向こうはシエラ・ネヴァダ山脈。

『赤い壁』と呼ばれている理由がはっきり分からないと書くガイドブックがあったが、ここから見るアルハンブラの夕暮れは、それはそれはロマンティックに赤い。
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アルハンブラの青い薔薇





『シャトーの青い夜』
『エクセンプロヴァンスの青い朝』
『パリの赤い朝』
『グレナダの青い夜』
...に続いて今夜は『アルハンブラの青い薔薇』。


スペインはアンダルシア地方、グレナダのアルハンブラ宮殿に属するカルロス5世宮殿で、マルタ・アルゲリッチがラヴェルを弾くと聴いて「行かない」を選択する人がいるだろうか。

マルタ・アルゲリッチは青い薔薇のようなひとである。





カルロス5世宮殿は...

数百年にわたる建築の複合体ともいえるアルハンブラは、8世紀のイスラムのイベリア半島侵入以降、徐々に、特に13世紀から15世紀のナスル朝時代に建築拡大された城郭都市であるが、15世紀になってキリスト教徒のレコンキスタによってグラナダが陥落させられると、カルロス5世は宮殿の建築を決めた。
「ペドロ・マチューカが、正方形の建物の中央に、円形の中庭を設けるという設計をし(現在も未完成)、スペインにおける純イタリア様式の成功傑作と称されている。(Wikipediaより)」

外から見ると頑丈な箱のような形。4面ごとに中央に設けられている扉から入館すると中はエンタブラチュアの並ぶ優美な円形で驚く。




この建物の外の頑丈さと内の優美さ。
どんなカメラならば収めることができるのだろうか。やっぱり絵かしら。

アルゲリッチの自由な精神と勇気と美しさは、どんな言葉なら表すことができるのだろうか。




手のひらの上で転がす、とはこのことではなかろうか(褒めてます!)...

ラヴェルのスコアのあらゆる美点をひきだし、きわだて、具体化し、驚異的なリズム感で楽しませつつ、他の楽器も忘れない...演奏だった。マンネリズムなどとは無縁の、フレッシュで、フレッシュで、フレッシュな演奏!

「能力の高い人」というのは、他の人の能力を最大限に引き出す能力のある人、であるとしたら、まさにその通りだ。

アンコールのバッハのイギリス組曲第3番2つのガボットも、パーソナルで特別美しかった。

アルゲリッチがものの30分ほどの演奏で颯のように去った後も(例によって例の如く、彼女は喝采に照れに照れ)コンサートは続き、終了したのは午前1時だった。
さすが南欧である。




昼間のカルロス宮殿もまるで薄紅色の薔薇のように美しい...





Palacio de Carlos V (La Alhambra)

Orchestre Philharmonique de Monte-Carlo
Martha Argerich, piano
Charles Dutoit, conductor

Maurice Ravel
Le tombeau de Couperin
Piano Concerto in G major

Piotr Ilich Tchaikovski
Symphony No. 4 in F minor, Op. 36
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アルハンブラの青い夜




パリを離れ、スペインはグラナダへ。

夫は仕事でマドリッドへ向かい、わたしは娘と落ち合う。
娘と2人きりで旅行するのは2019年のドバイ・アブダビ以来だ。


昨日の日中の気温は40度越え。
太陽が出ているうちは屋内に避難する以外の何もできなかったが(今日は34度だが曇りで風があるので暑さは気にならない)、アルハンブラ宮殿で22時半から始まったユリアンナ・アヴデーエワのリサイタルの頃には甘く涼しい風が吹いた。

グレナダ音楽祭の一環のピアノリサイタル、於コマレス宮アラヤネスの中庭。
22時の宮殿に設られた舞台は、薪能のような幽玄な雰囲気だった。

時おり、池の魚がジャンプして水音を立て、屋根の上を猫が歩き、小型のコウモリが飛び、星が瞬き、10秒間くらい大粒の雨が降った。

イスラム式の庭園は「楽園」「世界」を模している。
アヴデーエワの奏でるすばらしきバッハの音楽的宇宙と相まって、自分の内と外に広がる世界の境界線が消え、豊かさに満たされた。




ユリアンナ・アヴデーエワはわたしなんかが説明するまでもなく、2010年のショパン国際ピアノコンクール第一位(同時に最優秀ソナタ演奏賞も)。マルタ・アルゲリッチ以来、45年ぶりの女性優勝者として注目を浴びた。

(そして今夜はそのアルゲリッチのコンサートがアルハンブラ宮殿内のカルロス5世宮殿で開催される...)




こちらは今朝8時半の宮殿。


Yulianna Avdeeva, piano

Johann Sebastian Bach
English Suite No. 2 in A minor

Dmitri Shostakovich
Prelude and Fugue in D major No. 5, Op 87

Johann Sebastian Bach
Toccata in D majo

Dmitri Shostakovich
Prelude and Fugue in C-sharp minor (completed by Krzysztof Meyer, 2020)

Johann Sebastian Bach
Partita No. 2 in C minor
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