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ボヴァリー夫人の夢と現実 ルーアン
普段は英国島のフォークストンからフランスのカレーにユーロトンネルで渡り、ベルギーのブルージュを経由してパリ入りするのだが、今回はカレーからベルギーには入らず沿岸沿いを南下、ディエップをかすめて、ノルマンディ地方のルーアンを目指した。
ルーアンを目的地にすると、気持ちはまるでエンマ・ボヴァリーのようになった。
ルーアンは、わたしの最も敬愛する作家フローベールの生誕の地であり、わたしはここをエンマ・ボヴァリーと切り離して考えることができない。
昨夜はつい電子図書版の『ボヴァリー夫人』を買ってしまい、ベッドの中で午前3時まで読み続けてしまった...
近代になって自由に見られるようになった「夢」が、凡庸な現実の前に破れる「ボヴァリスム」 (bovarysme) という造語すら生んだ、あの『ボヴァリー夫人』の主人公。
ボヴァリー夫人は「わたしだ」。
ルーアンの美術館には、近郊の街ル・アーブルで育ったモネの30近い連作、『ルーアン大聖堂』の一枚が架けられている。
現実のルーアン大聖堂と、モネのルーアン大聖堂。『ルーアン大聖堂:扉口とアルバーヌ塔、悪天候』1894年。
どちらも建築が溶け続けるようだ...
ルーアンは『ボヴァリー夫人』の中では、エンマの夢想が投影されるファンタジー・ランドとして、あるいはルーアン大聖堂はモネの「悪夢」でありながら、それ自体は決してエンマやモネの「物語」に染まることはない。
ただ現実の都市、現実の大聖堂として存在し続ける。
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