女将さんのオススメ本「リトル・トリー」を読んでみました。
紹介を受けた時にネットで検索したところ、作者の経歴についてとんでもない噂?があることがわかりました。
アマゾンでの紹介文↓
本書は、東チェロキーの山中における著者と祖父母との生活をつづった自伝的な回想録である。1930年代、経済大恐慌下の一生活記録として貴重だが、単にそれだけのものにとどまらず、どんな時代のどんな人にも共感を与えうる人間的な記録に高められている。万人の精神に語りかけ、魂の最深部に訴えかける力を持っている。
ということで、作者「フォレスト・カーター」の自伝的小説、ということですが、読者の書き込みを見ると、作者はチェロキー(インディアン)ではなく白人、チェロキーについての記述はでたらめが多く、悪名高い白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)の一員で人種差別主義者だった、という記述があったのです。
混乱しました。
そんな経歴の人が、多くの人を感動させる物語を書けただろうか?
正直、読むのを躊躇したのですが、なにより、女将さんが感動し、薦めてくださった本です。内容的に良書なのは間違いない。
読まずに偏見だけ抱いて済ませるわけにはいきません。
図書館の児童コーナーに1冊あるのを見つけ、読んでみました。
とてもいい話でした。
スレた感性の私は、涙するまでには至りませんでしたが、
信念を持ち、自然の掟を教え、リトル・トリーを育てる祖父母、見守る人々。
祖父母の生き方には共感を覚え、この二人に愛され育てられるリトル・トリーが羨ましくなりました。
そのエピソードの数々は、例えるなら子供の頃見ていたアニメ「ハウス名作劇場」のようでした。不幸な境遇にも関わらず、優しい人々に助けられたくましく成長していく主人公の物語。
白人やクリスチャンからの差別や偏見も描かれています。
生き物(命)に対する考え方も、とても納得できました。
ますます混乱。
作者が噂どおりの人物なら、決してこんな物語は書けないのではないか?
もちろん、心無い人物が金儲けの為に、美しい創作を書くことは可能でしょう。
少なくとも、この噂がそのまま真実ではないにしても、流れるだけの根拠となる事実はあるのかもしれません。
一方、噂どおりの人種差別的な考え方を持っているのだとしたら、この物語を書く「理由」も見つかりません。主義と全く反する内容だからです。
「騙された」という人もいます。
「嘘でもいい、いい話はいいのだから」という人もいます。
「書いた時は、純粋だった。差別を受け続けて、される側からする側に変わったのかもしれない」という人もいました。
噂が事実かどうかは、情報が乏しく、判断がつけられません。
それこそ、心無いデマなのかもしれません。
デマならデマ、事実なら事実とハッキリさせることができない、グレーゾーンのままなのが気持ち悪い。
悔しいですが、現状では読む人の判断に任されるしかないのだと思います。
作者ではなく、作品そのものを読んで評価したいと思います。
知らずに読んでたらもっと純粋に読めたのに、というのもありますが、一方、そうだとしたら表面的な読み方しかできず、こんなに色々考えさせられることもありませんでした。本との出会いも色々です。
こんな噂のことは書かない方が、他の方は純粋に読めるでしょうから、余計なことを書かずに感想だけ書けばよかったのですが…
自分がこのことについて色々考えたことも、書いておきたかったのです。
まだ考えがうまく纏まったとは言い難いのですが。
少なくとも、私は良書だと思いました。
これからもたくさんの人が読んでいい本だと思います。
リトル・トリーは最後に旅立ちます。その後が、いい人生でありますよう。