日々茫然

猫・本・アート・日常生活などを、つれづれと思いつくままに記録

『マイナス・ゼロ』 広瀬 正

2006-09-25 | 本と漫画の話



不朽の名作SF(しかも猫SF?)と名高い『夏への扉』、とても面白かったです。
『夏への扉』を読もうかと検索している時に、かなりの確立で一緒に紹介されていたのが『マイナス・ゼロ』でした。
『夏への扉』と並ぶ日本のタイムトラベル物の最高傑作らしいです。
『夏への扉』を読み終わって、こんなに面白いSFと並び賞される『マイナス・ゼロ』も、読まずにはおれなくなりました。

図書館で検索すると、すでに閉架になっていました。
一部の人には絶賛されていても、一般的にはすっかり忘れられた作品ということでしょうか?
ともかく申し込んですぐ借りることができました。
ふ、古い…

紙の色がすっかり変わって、ボロボロで補修され、かなり年季が入っています。
確かにコレでは表の棚には出しておけません。
それだけ沢山の人が読んできた、ということだったんですね。
あまりに古いので、紹介用に思わず写真を撮ってしまいました。
今読むなら、文庫が出てますからそちらをどうぞ画像にリンクを張ってます。

さて内容は…
『夏への扉』は未来へのタイムトラベルがメインでしたが、この作品は過去の重点が高いです。

昭和20年、浜田俊夫は東京大空襲の最中に、逃げ遅れた隣家の「先生」から、あることを依頼される。それを遺言のようにして先生は亡くなり、先生と二人暮らしだった娘・啓子は空襲のさなか行方不明に。
昭和38年の同日同時刻、 俊夫は遺言どおり、先生の研究室があったドーム型の建物(今は住居ごと別人の所有)にやってきた。そこへ、啓子が18年前の姿のままで現れた。
どうやら先生がタイムマシンを使って18年後に娘を逃がしたのではないかと推測。 俊夫は好奇心から自らタイムマシンに乗り込み、先生がその場所へ越してきた直後の昭和9年へ向かう。ところがなぜか先生の家も建っていない空き地に到着。着いたのは昭和7年で、トラブルが起きてタイムマシンにも取り残されてしまう。
元の時代に帰れないまま、仕方なく昭和7年の世界で生活する羽目になる俊夫。
俊夫は元の時代に帰れるのか、啓子はどうなったのか…


なかなか話は複雑で、人物と時代が交錯しますが、大きな矛盾も無く最後は大団円。
読み終わって、よくできてるなぁ、と息をつきました。
『夏への扉』の方が登場人物が少なくて話がシンプルなぶん、ワクワクドキドキしながら読んだ気がしますが、なかなかどうして、後半話がラストにむけてスッキリと収束していく部分では、先へ先へともどかしいくらいでした。
ただ、最後の最後のある部分(子供に関すること)は、余計だった気がする…
ライターの例をはさんで説明をつけてあるので、矛盾はない、ということのようですが、理屈では有り得ても、どうも受け付けにくい、というか…
冷静に考えると、これが入ることで衝撃度は上がったし、この本が書かれたこの時代にこんなことまで織り込まれていたことを考えると、まいりましたって感じですが。
個人的には、これは無い方がスッキリめでたしめでたし、って思えたかな。
でも全体としては、細かい部分まで帳尻を合わせてあって、すごく面白いタイムトラベル物になってました。
文庫になっているんだから、図書館でも1冊購入して開架にすればいいのに…
私はそんなにSFは読んでないですが、これだけ面白かったんだから、きっとSFファンには必読の書でしょう。

コメント (2)
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