日々茫然

猫・本・アート・日常生活などを、つれづれと思いつくままに記録

『銃とチョコレート』 乙一

2006-10-14 | 本と漫画の話


講談社から、『ミステリ-ランド』というシリーズが出ています。

―かつて子どもだったあなたと少年少女のための―

と銘打って、第一線で活躍しているミステリー作家による、子供も大人も楽しめるミステリーを刊行しています。

造本も凝っていて、今時箱入り、しかも箱の一部に窓が付いていて、表紙の一部が見える仕組み。(↑のリンク先で確認できます。本にマウスを合わせると、中身の画像が見られます。)
挿絵もそれぞれ個性的で、いいトコ突いてます。
くやしいけど、やるじゃん、講談社。

最初は、好きな作家の新刊が出た、という感じで読んでみたのですが、とても読みやすくて、まだ読んだことがない作家の試し読み(?)としても良さそうだぞ、と思い、全シリーズ読んで見ることにしました。

今までに、『虹果て村の秘密』 『くらのかみ』 『透明人間の納屋』 『ぼくと未来屋の夏』 『探偵伯爵と僕』 『怪盗グリフィン、絶体絶命』 『びっくり館の殺人』を読みました。

元々読んだことがある作家も、子供向けに雰囲気を変えているものもあり
内容が軽すぎて物足りなかったものもあり
ワクワクドキドキの冒険ものあり
子供に分かるのかな?というぐらいよくできたものや複雑なものもあり
それぞれの作家が、「子供の頃読みたかったもの」を目指して書いた、個性的なラインナップです。


さて、『銃とチョコレート』ですが、乙一の最新刊でもあるせいか、予約待ちが長く、やっと読むことができました。

富豪の家から名のある宝石や金貨が盗まれる事件が続く。犯人は必ず現場に「GODIVA」と書いたカードを残していたため、「怪盗ゴディバ」と呼ばれていた。その捜査を担当する名探偵ロイズは、子どもたちのヒーロー。
貧しい移民の少年リンツは、ある日父に買ってもらった聖書の中から古びた手書きの地図を見つける。色んな情報から、地図がゴディバの盗んだ宝の隠し場所だと思ったリンツは、手がかりを求めているロイズに手紙を出したが……。

最初は、名探偵ロイズと少年リンツの「少年探偵団」みたいな冒険譚になるのかと思っていましたが、乙一のつくる話は、そんな王道ではありませんでした。
子供の癖に凶暴で頭の切れるドゥバイヨルという少年が出てきて、リンツを振り回しますが、この人物造形なんかは、子供向けだよね…?と心配になりました。
でも斬新かなぁ…
ドゥバイヨルの心理的背景とか、リンツの内面とか、逃亡の緊迫感とか、もうちょっと丁寧に描写してくれたら、もっと感情移入できたのに、残念。描写が冷めた感じがしました。

ただし、話としては好きです。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、なかなかスリリングで面白かったです。

ミステリーランド、まだ刊行中で、今後は京極夏彦も登場予定。
私が江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズを読んでミステリーに嵌ったように、これを読んで、ミステリーの面白さに嵌る子もいるのかもしれません。
大人のミステリー入門としても、オススメです。
ミステリーを読みなれた人でも、「子供向けにしてはなかなかやるな」とうならせる作品も
分厚いようにみえても、字が大きくて読みやすいので、お試しあれ
コメント (8)
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