日々茫然

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島田荘司

2007-12-10 | 本と漫画の話
先日、ふくやま文学館で開催された『島田荘司展Ⅱ』を見に行ってきました。

島田荘司は、地元福山出身の推理小説家で、現代の「本格ミステリ」復興の祖と言われる人です。
そんな事はまだ知らない頃、“御手洗シリーズ”にはまって、御手洗が海外に拠点を移す前までの作品は、全て読みました。

展覧会で一番注目したのは、初期の傑作「斜め屋敷の犯罪」に登場した館の模型が展示されていたことでした。
でも、読んだのがずいぶん前なので、トリックがボンヤリとしか思い出せず、せっかくの模型を前に「こんなものがあると分かっていれば、あらかじめ読み返してから来たのにー」とガックリでした。

で、悔しくて?再読するため図書館へ。
図書館では、展覧会と連動して「島田荘司コーナー」が作ってあり、「斜め屋敷の犯罪」は貸出中でした。
でも、最近刊行された全集に入っていました。

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「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」「死者が飲む水」の長編3作を収録しているため、めちゃめちゃぶ厚く、「これを持って帰るのは難儀だな…」と躊躇しましたが、読むタイミングを逃すような気がして、思い切って借りて帰りました。

「斜め屋敷の犯罪」
 北海道の最北端、宗谷岬の高台に斜めに傾いて建つ西洋館。「流氷館」と名づけられたこの奇妙な館で、主人の浜本幸三郎がクリスマス・パーティを開いた夜、奇怪な密室殺人が起きる。招かれた人々の狂乱する中で、またもや次の惨劇が…。連続密室殺人の謎に挑戦する名探偵・御手洗潔。
 メイントリックは何となく思い出せたのですが、「メイントリックだけでは、他の密室の謎が解けない???」と頭を悩ませ。他にも殺人があったのとか、登場人物のキャラクターとか、サッパリ覚えてませんでした
 おかげで(?)再読にもかかわらず、なかなか楽しめました。(いいのかそれで)

「占星術殺人事件」
 これも既読でしたが、ついでに再読。著者のデビュー作です。
 ひとりの画家が密室で殺された。そこで見つかった遺書ともとれるノートには、画家の妄想としか思えない計画が記されていた。6人の処女から最高の星座を司る肉体各部を切り取り、つなぎ合わせて完璧な人体「アゾート」を創造する、と。そして1カ月後には、同居していた画家の娘と姪6人が姿を消し、体の一部を切断された遺体となって日本各地で発見される。一体誰の仕業なのか?「アゾート」は実際に作られたのか?奇想天外の構想、トリックで名探偵御手洗潔をデビューさせた、衝撃的傑作。
 実はこれについては、第一の殺人のトリック(※)も、メイントリックも、初読より前に見ていたドラマ「金田一少年の事件簿」で、ほとんどそのまんま使われていたものでした。
 当然読んだ時、トリックが分かってしまい、「もし知らずに読んでたら、種明かしの部分で物凄くビックリできたはずなのに~」と悔しい思いをしたので、かなり印象に残っていました。おかげで?内容もほぼ覚えていました。
 「金田一少年」の作者は、許可を取ってたのかなぁ?もし未許可なら、トリックだけまんまコピーするなんて盗作だよ
 と思っていたら、どうやらやっぱり未許可で使っていて、後に問題になったらしいです。現在は、漫画の方には最初に注釈が付いて、ドラマの方はその回(第1話だったらしい)だけカットになっているそうです。
 ※第一の殺人で扱われたトリックに関して(以降ちょっとネタバレ)は、さらに時代を遡って海外の古典作品に出てたアイデアだったと思います。「占星術殺人事件」では、世間が「その方法を使ったのだろう」、と納得している所を、探偵が「それでは無理がある」と覆し別の推理を披露します。「金田一少年」で使っていたのは、この最初の方のトリックです。また、メイントリックについては、完全に島田さんのオリジナルアイデアです。

「死者が飲む水」
 これは御手洗シリーズではないので、初読でした。
 札幌の実業家・赤渡雄造のバラバラ死体が、二つのトランクに詰められて、自宅に送り届けられた。鑑識の結果、死因は溺死。殺害場所は千葉県の銚子付近と特定。しかし、札幌署の牛越刑事が追いつめた容疑者には、鉄壁のアリバイがあった…。札幌、東京、銚子、水戸を結ぶ時刻表トリックが冴える長編力作!
 「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」に続く3作目として世に出た作品です。
 この作品が書かれた当時は、松本清張を始めとする“社会派ミステリー”全盛で、名探偵が登場して密室などの不可能トリックを暴く、といった今で言う“本格ミステリー”は、時代遅れだと馬鹿にされ批判の対象になっていました。前述の2作を出した後、編集者からも「名探偵ではなく、中年刑事の出る社会派を書いて欲しい」と希望され、ご本人は時刻表トリックも好きだったため、それならば、と書かれたのがこの作品。ところが編集者の思惑は外れ、前2作より売れなかったのだそうです
 個人的に“社会派ミステリー”は嫌いなので(特に時刻表トリックなんて、時刻表と睨めっこして「そうか!ここでこっちに乗り換えてここでこうすれば、犯行時刻に間に合うぞっ!」とか言われても、ああそうですか、としか思えない)、この作品も、地味に感じてしまいました。(事件自体は派手だったのに)
 メイントリックも、今ではスタンダードになってしまっていて(それもスゴイけど)、すぐ分かってしまいました。(書かれた当時は画期的で意外な方法だったのだと思います。)

 今や、現代本格ミステリ界の巨匠、といった趣の島田荘司。ダイナミックで奇想天外なアイデア、それを無理なく作り出す舞台設定や、巧妙な伏線の張り方。
 最近になって、御手洗が海外に拠点を移してからのシリーズをいくつか読んだのですが、どの作品でも、それまでの世界がひっくり返るような仰天のアイデアが描かれています。いまだに発想が枯れないのが信じられない
 人によって作風に好みはあるでしょうけれども、アイデアのクオリティの高さといい、後続の作家への影響力といい、すごい作家であることは確かです
コメント (33)
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