ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

これではGDPの低調も当たり前である、と……

2021年04月09日 00時35分00秒 | 社会・経済

 朝日新聞2021年4月8日付夕刊9面4版に「米は学生に週2回PCR 日本は根本的対策なし 大学での検査 安心のために整備を」という記事が掲載されています。「取材考記」の一つで、宮地ゆうさんが書かれています。

 日本のCOVID-19対策は先進国で最低レヴェルということは、既に世界的にも知られていることであり、よく報じられています。ワクチン接種は遅れに遅れていますし、何よりも「科学立国」だの「技術立国」だのと漢字4文字のスローガンだけは勇ましいのに、ワクチンを自国で開発することができず、輸入に頼らざるをえなかったのです。PCR検査のスピードが世界的な競争になっているそうですが、日本は取り残されました。これで東京オリンピックを開催しようなどとよく言えたものですが、夕刊の短い記事を読むだけでも暗澹たる気分になります。

 「米国のいくつかの大学を取材すると共通点があった。無症状の感染者を見つけて隔離する重要性に早期に気付いたこと。そして、どれだけ検査をすれば『科学的に安全』と言えるのかを計算し、その態勢を目指したことだ。」

 宮地さんが取材されたのは、おそらくアメリカ合衆国でもレヴェルの高い大学でしょう。しかも「日米では大学の置かれた環境も財政規模も違い、容易に比較はできない」と明記されています。

 それでも、彼我の違いを強く感じさせられました。

 2020年度、私自身もあまり大学には行かなかったのですが(うちでオンライン講義などをしていました)、宮地さんに「日本では『若者が感染を広げている』と、大学生らに厳しい目が向けられる一方で、若者の間の感染を抑える根本的な対策はほとんどない」と書かれてしまう通りでした。勿論、一部の大学生による無軌道な行動が目立つのか、大きく報道されてしまうこともあります。しかし、身近に、近所を歩いたりしてみてください。若い人たちのほうが、よほどマスクをしっかりと着けるなどして行動しています。「いい年こいた」連中が、やれ送別会だのカラオケだの何だのと集まったりしては感染しているではありませんか。

 そして、この記事に同感するのは次の部分です。

 「文部科学省は大学での対面授業を促しているが、多くの大学は教室の人数制限や換気といった対策がメインだ。ある私大の教授は『検査などの基本的な態勢がないのに対面授業を拡充しろと言われ、しわ寄せは現場の教員にくる』と訴える。研究室にPCR検査機を持つある国立大の教授は『学内の検査だけでも感染抑止には意味がある。設備も人材もあるのに、大学はなかなか動かない』と嘆いた。」

 大学によって違うようですが、入口に消毒液もなければ検温器もない所があるようです。あるいは、あるとしてもわかりにくい場所に置かれているという具合です。教室に入ると、教卓の前面にアクリル板が設置されているものの、その程度であったりします。教室に収容する人数を制限するなどの対策は行われているのですが、それが限界なのでしょう。実際、1月、2月の入試で、会場となる教室は例年と変わらないようなレイアウトで、多くの受験生と試験監督者(その多くは教員)がその教室に入ったのです。恐怖感を覚えた人は受験生、試験監督者の双方に少なからず存在したことでしょう。

 今年度は対面授業、オンライン授業ライブ型、オンライン授業録画放映型のいずれも経験することとなる私ですが、今月に入ってから、「第3波」が収束していないのに新規感染者数が増大し、地域によっても医療体制の逼迫も迫っている状況の中で、教室で講義することには不安があります。インターネットでは現在の状況を第二次世界大戦時の日本に例える人がおられ、納得できるところです。装備も戦術も不十分で、単に不合理な精神論だけという状況に近いのです。早ければ今月中にも第3回緊急事態宣言が出されかねない状況ですし、日本だけが感染を抑えることができないという結果になるかもしれません。勿論、マイナス成長でしょう。

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