今日は、無理矢理の二題噺です(落語ではないけど)。
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まずは今月出されることになる第3回緊急事態宣言です。大阪府、東京都が国に要請し、京都府も要請するというのですが、実に中途半端で、これでは感染拡大を防ぐことなどできないだろうと思えます。Yahoo! Japan Newsのコメント欄にはロックダウンと勘違いしている人がいるようですが、全然違うことはおわかりでしょう。
中途半端と思える理由の第一は、対象となる地域の範囲です。東京都、京都府、大阪府および兵庫県のみなのです。私自身は神奈川県川崎市に住んでいますが、うちから国道246号か旧大山街道を15分から20分ほど歩いて行けば東京都世田谷区玉川、つまり二子玉川駅や玉川高島屋へ行けます。電車であれば高津駅(各駅停車しか停まりません)から2駅です。つまり、すぐに着いてしまう訳です。東京都の医療状況がよくわかりませんが、東京都には神奈川県、千葉県、埼玉県などからの通勤者や通学者が多く来る、少なくとも通過するのですから、他県に影響がないとは言えません。コロナ渦でなくとも、うちの近所には時折、東京消防庁の救急車が走ってきます(救急車を見ると、何処の消防署の車かを見るという癖が付いています)。周辺県の医療体制に影響が出ないとは言えないのです。
同様のことは、京阪神地区にも言えないでしょうか。奈良県、滋賀県、和歌山県から京阪神地区に通勤や通学をする者は多いでしょう。隣県ということでは福井県や滋賀県も入りますし、近鉄大阪線が通っているということでは三重県も入るでしょう(少なくとも名張市であれば大阪府や京都府への通勤者や通学者もいるでしょう)。
第二に、期間です。今月23日に発令し、5月9日までとするのです。小出しもよいところでしょう。第1回および第2回も、期間を小出しに設定し、延長を重ねました。第3回は、さらに期間が短くなっています。「とりあえずゴールデンウィークだけとすればよい、何とかなる」ということなのでしょうが、IOCなどの動きに合わせたことが見え見えです。こういうところに「見える化」という語呂の悪い(センスの悪い)言葉を当てはめてどうするのだろう、と考えてしまいます。ゴールデンウィークが終われば落ち着くとも思えません。
東京オリンピックを直ちに中止するということにすれば、我々国民もあれこれと振り回されたりすることがなくなるのに。私も、このブログで何度か中止すべきだと記してきました。古代ローマの「パンとサーカス」が現代のオリンピックやワールドカップなのでしょう(私はそのように考えています)。だから国民の生命や健康よりもイヴェントやお祭りが大事なのです。
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ここで中銀カプセルタワービルの話に移ります。私も、妻と浜離宮公園に行った2018年4月29日に見ました。最寄り駅は何処なのでしょうか。我々は新橋駅から浜離宮公園まで歩いたのですが、近いとは思えない場所でした。銀座駅からではかなり歩かされます。おそらく、最も近いのは都営大江戸線とゆりかもめの汐留駅でしょう。町工場の多い片田舎の川崎市高津区の出身者である私にとっては生活に不便である場所にしか見えませんが、それは庶民の感覚か僻み根性なのでしょう。中銀カプセルタワービルのネームヴァリューなのか、銀座のブランド力なのか、それとも黒川紀章が設計したメタボリズム建築の代表格であるからなのか、人気は高いようです。そうでなければ、朝日新聞社のサイトに記事が載るとは思えません(朝日新聞東京本社は築地にあるので、ご近所ということかもしれません)。2021年4月21日6時付で「銀座の『宇宙船』ビル、住人の退去進む 名建築が岐路に」という記事(https://digital.asahi.com/articles/ASP4N54K1P3WUTIL01X.html)が掲載されていたのです。
今となっては下手な落語や漫才よりも笑えるような話ですが(冷静に考えればそうなります。竣工当時にも笑った人はいるでしょう)、この中銀カプセルタワービルは、名称の通り各部屋がカプセルのような状態となっており、交換が可能であるという設計になっています。しかし、実際には、例えば3階にある部屋だけを取り替えることが困難であり、一度も交換されたことがないまま、竣工から49年を迎えました。少し考えれば当然であることはすぐにわかるでしょう。あるいは、1972年の竣工当時には、将来的に部屋の一部だけを交換する技術が発展していると考えられていたのでしょうか。
また、このカプセル状の部屋にはキッチンもなければ洗濯機の置き場もありません。ホテルのような感じで設計されたからでしょう。私は実際に見たり入ったりしたことがないのですが、ウェブの様々な記事を総合すると、ビジネスホテルのような感じの部屋であるようで、ベッドや冷蔵庫などは備え付けられていたようです。実際に、中銀カプセルタワービルの1階にはコンビニエンスストアがあったとのことです。しかし、我々夫婦が見た時には空きテナント状態でした。
ウィークリーマンションであれば洗濯機の置き場やキッチンはあるでしょうし、東急ステイのサイトを見ると洗濯機や電子レンジが備えられている上にミニキッチンが設けられている部屋もあるそうです。上記朝日新聞社記事には、中銀カプセルタワービルが「名建築」であり、「魅せられる」人も少なくなく、「時代がやっと追いついた」と書かれていますが、むしろ「とっくの昔に時代に追い越された」と表現するほうが相応しいでしょう。カプセル状の部屋の交換がSDGsの先取りであるという意見が記事に書かれていますが、一度も交換されたことがないという事実はSDGsの先取りでも何でもないことを証明しているようなものです。しかもアスベスト問題があります。
実は、この中銀カプセルタワービルについては建替などが検討されていたのですが、話が進まないまま現在に至っていました。保存を求める声も多いようです。いずれにせよ、このビルの敷地を所有する不動産会社が敷地の売却を決めており、交渉を進めていたようです。しかし、COVID-19の影響がここにも現れました。交渉が中断となった上で買い手も見つかっていないようです。2021年3月になって、「更なる老朽化を懸念する不動産会社や他のオーナー」が「先行して敷地を売却する決議をまとめ、住民は順に退去を始めている。新たな入居はもう受け付けていない」とのことです。
東京オリンピックが予定どおり2020年に開催されていれば、中銀カプセルタワービルの保存に向けての「動きが加速される可能性もあった」といいます。理由は「翌9月に建築の国際学術会議の世界大会が開かれ、このビルも紹介されて保存活動の動きが加速する可能性もあった」からというのです。たしかに、ホテルのような利用方法であれば意味はあるかもしれません。しかし、我々夫婦が建物を見ても相当に老朽化していることはすぐにわかりましたし、定住には向かない建物であるとも言えるでしょう。銀座という場所のために、問題がややこしくなっているのではないでしょうか。