ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

2010年6月8日、六本木交差点

2020年05月30日 01時15分00秒 | まち歩き

 久しぶりに六本木のサテンドールに行って、ジャズのライヴでも楽しみたいと思っています。そこで、今回は、「待合室」の第376回「六本木交差点」(2010年8月3日〜20日掲載)の再掲載です。撮影は2010年6月4日です。なお、文章を一部修正しましたが、内容に変更はありません。従って、現在の六本木の街とは違う所も多いことに御注意ください。

 

 六本木と聞いて、思い浮かべるものは何か。

 「くだらない」と言われるかもしれませんが、このような問いを立てるとすると、今ならテレビ朝日、六本木ヒルズ、国立新西洋美術館などというところでしょうか(ミッドタウンは赤坂九丁目にあります)。

 私にとって、一つは六本木六丁目にあったWAVEです。1983年に開店したレコード店で、1999年12月25日の閉店まで、音楽家を初めとして多くの文化人に支持されました。今でも閉店が惜しまれるところです。私は、2010年7月号を最後に休刊となったスイングジャーナルの広告を、高校1年生の時に初めて見て興味を持ち、1984年8月31日に初めて訪れました。それ以降、1990年秋から1991年秋までのほぼ1年間を除き、私が大分大学に就職するまで、少なくとも毎月1回は六本木WAVEに行き、LPやCDを探していました。大分大学に就職してからも、帰省する度に行きました。私が大分市内のCDショップに行くようになったのは、六本木WAVEが閉店してしばらく経ってからのことです。

 今でも、六本木WAVEほど、私にジャズ、クラシック、ロックなど、音楽鑑賞の面白さ、LPやCDを探すことの面白さを最上の形で教えてくれた店はないと思っています。それだけに、閉店にはショックを受けました。六本木WAVEが閉店してから、タワーレコード、HMVなどに行くのですが、やはり何かが違います。六本木WAVEに初めて行った日、私は、購入するかしないかに関係なく、4階の南側にあったジャズのコーナーにあるLPやCDの棚を全て見回しました。3時間以上、店内にいたはずです。配置などに強いメッセージのようなものを感じました。あれこれと頭の中に浮かびすぎて上手く表現できませんが、10代の後半であった私にとって、六本木WAVEは、建物の外装、内装、流れている音楽、店の構造など、色彩や服装、音楽など、趣味の要素で強い影響を受けました。

 そして、街の雰囲気にも影響を受けました。1980年代後半の六本木は、現在と違い、口頭でも文章でも表現しにくいけれど東京でも他に例を見ないほど独特の雰囲気に包まれており、あたかも六本木が異国の街であるかのような空気を持っていました。六本木WAVEは、そのような六本木を感じさせてくれる最後のものであったとも言えます。そのためなのかどうか、私は、10年以上、六本木の街を歩いたことがなかったのです。今年の4月に結婚し、5月に妻と六本木ヒルズに初めて行き、10年ぶりに街を歩いた時も、六本木の街がつまらなくなっていることを強く感じました。妻も同様のことを思ったらしく、何度も私に「都町とあんまり変わらない」と言っていました。

 六本木という地名で私が思い浮かべるもののもう一つが、ジャズです。私が本格的にジャズを聴き始めたのは中学校1年生の時で、渡辺香津美さんの「トチカ」と「トーク・ユー・オール・タイト」を聴いたのがきっかけでした。そして、1981年の晩秋に「ドガタナ」を聴いて、それまで好きだったイエロー・マジック・オーケストラなどのテクノポップから離れたのでした。ほどなく、六本木ピットインの名前を知ります(この辺りは曖昧で、イエロー・マジック・オーケストラを聴き始めたのが1979年、小学校5年生の時なので、その年に六本木ピットインを知ったのかもしれません)。1982年、中学校2年生の時、新宿の厚生年金会館でのコンサートに行きました。私がエルヴィン・ジョーンズのライヴを六本木ピットインで聞いたのは高校2年生の時で、1985年7月31日であったと記憶しています。その後、大学生になってから、ピットイン、サテンドールなどに何度か行きました。しかし、大学院生になってジャズから離れ、ライヴに行くことはなくなりました。

 上の写真は六本木交差点です。首都高速3号渋谷線が通っており、その橋に「ROPPONGI」と書かれています。手前から奥へ伸びるのが外苑東通りで、六本木ピットインは奥のほう、飯倉交差点の近くにありました。また、左右に伸びるのが六本木通りで、右のほうへ進むと 六本木ヒルズ(その入口の所に六本木WAVEがありました)、西麻布、渋谷駅、左のほうへ進むと溜池、霞が関です。六本木通りを溜池方面に進むとすぐ、坂を下る前に俳優座劇場があります。その裏にサテンドールがあって、私は大学生時代に何度か行きました。現在は移転しています。

 この交差点を渡ると俳優座劇場がありますが、首都高速道路の向こう側に古本屋の誠志堂があります。ジャズ評論家の草分け的存在で、最近になってまた作品集が出されている故植草甚一氏もよく通われた古本屋でした。また、私たちが立っている場所の後に、現在はノジマの支店があるのですが、そこがかつては新刊書を売っているほうの誠志堂の本店でした。現在も誠志堂のビルなのですが、書店のほうは既に閉店しています。私は、この本店よりも東日ビルの地下にあった支店のほうによく行きましたが、そちらも既になくなっているようです。

 大分大学に勤めてしばらくしてから、再びジャズを聴き始めるようになりました。そして、21世紀になってから、また渡辺香津美さんのアルバムを集めるようになりました。ギター・ルネッサンスのシリーズを聴いていると、50代に入ってからの香津美さんの凄さを実感します。17歳で「インフィニット」というアルバムでデビューしてから、日本でトップのギタリストとしての地位を築き上げていますが、ヒルトップスタジオを立ち上げ、イーストワークスから発売されているアルバムを聴いて、1981年までの日本コロムビア時代、その後に僅か数年しかなかったトリオレコード時代(「MOBO」という2枚組大傑作が発売されました)以来、今が円熟期であり、しかも発展を続けているということなのです。これからも、どのような音楽活動が展開されるのか、楽しみです。

 或る日、たまたま自宅でインターネットをやり、6月4日、六本木のサテンドールに渡辺香津美さんが出演することを知りました。私は、すぐに予約を入れました。妻は香津美さんの演奏を聴くのが初めてでしたが、私は、今はない東急文化会館地下の映画館、パンテオンで、中学生時代に生演奏を聴いていますので、それ以来、実に20何年ぶりということになったのでした。渋谷で仕事をしたので、妻と渋谷で待ち合わせ、バスに乗って六本木へやってきました。

 後のほうに東京ミッドタウンが見えます。六本木駅から近い場所にありますが、実は赤坂九丁目にあります。私が六本木によく行っていた頃には防衛庁がありました。目指すサテンドールはこのミッドタウンより手前の場所にあります。

 それにしても、六本木にはカラオケ屋や普通の飲み屋や飲食店が増えました。1980年代後半と1990年代の六本木と比べても、まるで違う街のようになっています。私は、今、自分が六本木、渋谷、新橋、新宿、池袋のいずれの街を歩いているのか、わからなくなりかけていました。

 サテンドールに入り、19時30分から23時頃まで、セカンドステージまで通しで渡辺香津美さんの生演奏を堪能しました。ベースの井野信義さんとのデュオが基本で、最初の曲は1981年、私が中学生の時に発売されたアルバム「ドガタナ」に収録されている「プリーズ・ドント・バンドル・ミー」でした。香津美さんの声が、1980年代、FM東京のラジオ番組の時とほとんど変わっていなかったことにも驚かされました。ステージには、この10年くらいはトレードマークのようにもなっているエイブ・リヴェラなど3本のギターが置かれていました。最初から、ジャズ、ロックなどが消化されたスピード感のある演奏が繰り広げられました。

 途中、ゲストという形で、香津美さんの師匠、中牟礼貞則さんも入ったトリオとなりました(井野さんが抜けた曲もあります)。中牟礼さんの演奏を初めて聴いたのですが、切れ味鋭い、昔ながらのジャズ・ギターという感じでした。ギブソンのフルアコというのも大きいかもしれません。しかし、実際のお歳よりも若々しいという印象も強く受けました。1933年生まれということなので、今年は喜寿、77歳ですが、私には10歳くらいは若く見えました。

 ソニー・ロリンズの名曲「オレオ」、コルトレーンの名曲「インプレッションズ」なども演奏され、最後は香津美さんがよく取り上げている「星影のステラ」で、香津美さん、井野さん、中牟礼さんのトリオで演奏されました。このメンバーでの「星影のステラ」がCDにならないかと思ったくらいです。

 サテンドールを出たら、雨が降っていました。その中を、妻とともに千代田線の乃木坂駅まで歩きました。上の写真は、ミッドタウン付近の交差点から六本木ヒルズを撮影してみたものです。

 〔以上は、あくまでも2010年における記述内容であることを、重ねて記しておきます。〕


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