1月8日23時50分20秒付で掲載した「メモ:平成30年度税制改正における給与所得控除の扱いなど」の続きのようなものです。やはり「平成30年度税制改正の大綱」(以下、政府税制改正大綱)からです。
なお、お断りしておきますが、あくまでも大綱の段階であり、法律案にもなっていません。従って、少なくとも理論上は、以下の内容がそのまま法律として現実化するとは限りません。また、大綱の内容と実際の法律案の内容が食い違うこともあります(法人税の税率引き下げについて実際に生じました。自治総研2016年8月号に掲載されている私の論文「地方税法等の一部を改正する等の法律(平成28年3月31日法律第13号)〜法人課税および軽減税率の導入を中心に〜」をお読みください)。
基礎控除は、所得税(国税)、住民税(地方税)のいずれにもあります。納税義務者である限りは誰でも必ず適用を受けるはずのもので、事実現在はそうなのですが、所得税については平成32年分以後に、住民税については平成33年度分以後に、適用を受けられなくなる者が現れることとなります。
まず、所得税です。現在の基礎控除の額は一律38万円です。以前からこれは低額にすぎるという批判も少なくありません。というのも、よく、基礎控除は税制における憲法第25条第1項の趣旨の具体化などと説明されてきたからです。
それでは、平成32年分以後はどうなるのでしょうか。
第一に、基礎控除の額を38万円から43万円に引き上げます。
これだけなら一律10万円引き上げるということなのですが、話はここで終わりません。
第二に、個人の合計所得金額(合計収入金額でないことに注意!)が2400万円を超えると、基礎控除の額が逓減します。具体的には、次のようになります。
(1)合計所得金額が2400万円を超え2450万円以下であれば、基礎控除の額は29万円になります。
(2)合計所得金額が2450 万円を超え2500 万円以下であれば、基礎控除の額は15万円になります。
第三に、個人の合計所得金額が2500万円を超えると、基礎控除の適用を受けられなくなります。これでは基礎控除にならないのですが、富裕層への課税の強化、ということなのでしょう。たしかに、合計所得金額が2500万円を超えるような人であれば、生存権の保障は不要であるとも考えられます。ただ、仮にその通りであるとすれば不十分であるとも考えられます。
なお、上記に伴って、年末調整についても変更が行われるようです。政府税制改正大綱には「年末調整において基礎控除の適用を受ける場合に合計所得金額の見積額を申告する等の所要の措置を講ずる」と記されています。
続いて住民税です。住民税は、都道府県個人住民税、都道府県法人住民税、市町村個人住民税および市町村法人住民税の四種類に分けられますが、基礎控除ですから個人住民税のうちの所得割の話となります。
住民税については、現在の基礎控除の額が一律33万円です。国税と比較しても低額ですが、おそらく地方自治法第10条第2項に規定される負担分任原則の趣旨が根底にあるのでしょう。
平成33年度分以後はどうなるのでしょうか。
第一に、基礎控除の額を33万円から48万円に引き上げます。
これだけなら、所得税と同様に一律10万円引き上げるということなのですが、やはり、話はここで終わりません。
第二に、個人の合計所得金額(合計収入金額でないことに注意!)が2400万円を超えると、基礎控除の額が逓減します。具体的には、次のようになります。
(1)合計所得金額が2400万円を超え2450万円以下であれば、基礎控除の額は32万円になります。
(2)合計所得金額が2450万円を超え2500万円以下であれば、基礎控除の額は16万円になります。
第三に、個人の合計所得金額が2500万円を超えると、基礎控除の適用を受けられなくなります。政府税制大綱には、「前年の合計所得金額が2,500万円を超える所得割の納税義務者については、地方税法第37条及び第314条の6に規定する調整控除を適用しないこととする等の所要の措置を講ずる」と記されています。
なお、個人住民税の均等割については、改正を行わないようです。
以上の通りですが、相変わらず、基礎控除の額についての根拠が示されていません。何故に、所得税については38万円、住民税の所得割については33万円なのか。何故に、まずは10万円の引き上げを行うのか。などなど。
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