昨日(2025年1月12日)の夕方に、京阪神地区の交通事情に関する記事で気になる記事2本が朝日新聞社のサイトに掲載されていました。いずれも「ニュータウンのいま」という連載の中の記事です。今回はそのうちの1本、2025年1月12日16時0分付の「路線バス廃止は大阪の郊外でも 『お金では解決できない』その事情」(https://digital.asahi.com/articles/ASSDW23GNSDWOXIE01ZM.html)を取り上げます。このブログで金剛バスを何度も取り上げた者としては、気になる事柄です。また、首都圏でも同様のことは起こりうるのです。
上記記事で取り上げられているのは、まず大阪府の交野市です。京阪交野線とJR片町線(一般には学研都市線と言われていますが、正式には現在でも片町線です)が通っています。記事には「京阪電鉄やJRが走り、大阪市中心部まで20~30分」と書かれていますが、これは片町線のことでしょう。同線の終点は大阪環状線との乗換駅である京橋駅ですし、その京橋駅からJR東西線に直通し、北新地駅で降りれば大阪駅や梅田駅との連絡扱いで他社線と乗り換えられるからです。交野線であれば、枚方市駅での京阪本線との乗り換えが必要になります。
それはともあれ、交野市には京阪バスが運行されており、京阪の交野市駅やJRの河内磐船駅を起終点にする路線があります。しかし、京阪バスは、同市内の路線のうち、4つを2025年3月に廃止することとしています。京阪バスのサイトには、東急バスと異なって営業所毎の路線図がないので(京阪バスの場合は分割されたりしています)よくわからないのですが、交野南部線(JR片町線の星田駅や京阪の交野市駅から妙見口のほうに向かう路線)が廃止の対象になっていることは確実のようです。
京阪バスの路線図と交野市の地図とを見比べると、交野市の南部に妙見東、南星台など、いかにもニュータウンという場所があるのがわかります。その辺りの路線バスがなくなってしまうのは、住民にとってはたまったものではないでしょう。寝屋川市に向かう路線や急行バスは残るそうですが、路線の数が減るということは本数も減るということですから、不便になるのは変わりがありません。
同市のニュータウンは1970年頃に開発されたそうですから、こうした所の分譲地を購入して居住した人が20代であったとすると今は70代、30代であったとすれば今は80代となります。地形のためか、自家用車の利用率は高かったようです。これは首都圏の多摩ニュータウンなどでも同じでしょう。しかし、住民が高齢になれば、自家用車の運転を控える、あるいは控えざるをえなくなります。路線バスが当たり前のように走っていた時には自家用車を利用する住民が多かったが、高齢化していよいよ路線バスが必要になった時には路線バスが廃止されるというのは皮肉でもありますが、実は因果応報的な話です。失礼な表現と思われることは承知していますが、記事に書かれている民生委員経験者の女性のコメントを読めば誰でもそう考えることでしょう。親孝行と路線バスは似たようなものである、とも言えるかもしれません。
京阪バスが4つの路線を廃止するのは、御多分に漏れず、運転士不足です。実は過去に、採算が合わないために廃止するという話があったのですが、交野市は支援などをしていました。つまり、不採算であるだけなら沿線自治体による補助金などの支援が得られる可能性も高いし、実際に沿線自治体が支援をして路線バスを維持させてきたのですが、運転士不足ではどうしようもないということなのです。2024年8月に京阪バスが交野市に対して路線の廃止を通告した際に、交野市都市まちづくり部の次長氏は、記事の表現を借りるならば「『交渉で何とか存続できる次元ではない』と悟った」、「お金を出せば解決する話ではなくなってしまった」と語っています。そう、金さえあれば何でもできるということにはならないのです。
京阪バスの運転士不足は慢性的なもので、別に京阪バスに限らず、日本全国のバス会社の多くに共通しています。京阪の場合は、2016年度末において運転士が990人でしたが、2024年度末には829人に減ります。新規採用も難しい状況で、京阪バスの「運転手の平均年齢はこの8年間で47.7歳から52.3歳に上昇するという」のです。ここまできたら、交野市だけで解決できるような問題ではなくなります。まして、働き方改革による残業時間規制が重なっているのです。
なお、京阪バスが2025年3月に廃止するのは、交野市だけでなく、枚方市、守口市、門真市、八幡市(京都府)の路線の一部も含まれています。京阪本線の各駅から枝分かれするようにバス路線を伸ばすという、従来であれば当たり前であった交通体系は完全に過去のものになりつつある、と言わざるをえません。また、ついでなのか何なのかよくわかりませんが、記事には「阪急バスも24年9月で大阪府に接する京都府大山崎町で路線の大部分を廃止した」と書かれています。
さらに、記事には寝屋川市の事情も書かれています。ここからは自家用有償旅客輸送の話になるので、このブログでは取り上げません。ただ、自動車運転免許を所持する者、とくに公務員であれば、誰でも自家用有償旅客輸送の担い手となりうることは記しておきましょう。今後、市町村の公務員になるためには普通自動車運転免許の所持が必須となる時代も来るかもしれません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます