日本にある大学、とくに法学部で、財政法という名称の講義を開いているところはどれだけあるのでしょうか。
このように記している私の本務校である大東文化大学法学部には、現在、財政法という講義が存在しません。2011年度から2016年度まで(2013年度を除く)「法学特殊講義2A(財政法A)」および「法学特殊講義2B(財政法B)」を担当していましたが、いくつかの事情により内容を変えてしまいました。また、非常勤講師(兼任講師、客員教授)として講義などを担当している大学にも、財政法という講義はありません。
担当していない講義のノートを作成して公開するというのもおかしな話ではありますが、私が2000年6月3日から現在まで続けているホームページ(「大分発行政・行財政研究」→「高島平発法制・行財政研究」→「川崎高津公法研究室」)においては「財政法講義ノート」を公開していますし、財政法が私自身の専攻分野の一つでもありますので、第5版まで掲載してきたのです。
そもそものきっかけは、私がまだ大分大学教育福祉学部の助教授であった2003年の8月7日〜10日に、熊本県立大学総合管理学部において財政法の講義を担当したことです。初の財政法の講義であるとともに(その時にはまだ租税法の講義を担当していません)、初の集中講義でもありました。もとより、当時受講してくださった学生の皆さん、聴講してくださった大学院生のT君、そして何よりも機会を与えてくださったI先生には申し訳なく、拙いものでしたが、講義ノートを作成しただけでは勿体ないとも思っていたので、それを基にして第1版の公開を始めました。
2007年になって、M先生からお話をいただき、同年8月、4年ぶりに福岡大学法学部の財政法の集中講義を担当しました。それを機会に「財政法講義ノート」の第2版を開始し、2009年8月の担当により第3版を開始しました。
ここまでお読みいただいた方にはおわかりのように、「財政法講義ノート」の第1版から第3版まで、本務校で担当しない講義、しかも集中講義のノートを公開するという、或る意味で異質なコーナーとなっていました。これに対し、第4版は、先に記したように大東文化大学法学部で「法学特殊講義2A(財政法A)」および「法学特殊講義2B(財政法B)」を担当するとともに、福岡大学での集中講義を担当したために開始しました。
第5版は2014年度に開始しました。それから5年が経過しています。マイクロソフト社による簡易なホームページ作成用ソフトであるFrontpageおよびExpression Web 4の開発が終了していることなどから、第6版の掲載はとりあえずブログで行うこととしました。
版を改めたと記しますが、内容の面では第5版までとあまり変わりがないようなものとなるかもしれません。また、財政法の範囲は膨大ですので、完成していないというのが本当のところです。しかし、たとえ見切り発車的であっても、敢えて公開することに何らかの意味はあると考えています。もとより、今後、研究の進展状況に応じて補訂や修正などを重ね、充実したものに仕上げたいと思っています。
この講義ノートを利用される際の注意事項を記しておきましょう。
1.必ず、六法を手元に置いて読んで下さい。財政法に関しては、基本的な部分であれば小型の六法(有斐閣の『コンパクト六法』、三省堂の『デイリー六法』など)でも対応できます(勿論、憲法、財政法および地方自治法が掲載されていることが条件です)。しかし、これらの六法に掲載されていない法律もありますから、有斐閣の『判例六法Professional』、三省堂の『模範六法』、第一法規の『新司法試験用六法』などの中型またはそれより収録法令数の多いものが望ましいでしょう。また、大蔵財務協会の『財政会計六法』、学陽書房の『財政小六法』という専門的な六法も出版されています。地方財政関係であればぎょうせいの『自治六法』もおすすめです。
2.財政法についても、判例、実例などの検討を欠くことはできません。とくにこの分野の場合は実例や先例が重要です。もっとも、財政法についてまとまった判例集などはありませんので、憲法、行政法の判例解説などを参照することとなります。
3.財政法の体系書は非常に少なく、また、絶版または品切れとなっているものばかりです。この講義ノートにおいては、引用または参照という形により、注(本文より小さい字で示しています)において文献を紹介しています。図書館などで探してみてください。なお、この講義ノートの第一部については憲法学の体系書、第三部については行政法学、とくに地方自治法の体系書を参考とすることをおすすめします。
ちなみに、私が担当する前記講義のいずれも、教科書は使用しておりません。参考文献は、この講義ノートで紹介します。
4.財政法は応用的法学の一つです。そこで、基礎的な六法(憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法)、そして行政法の学習を済ませておくのが望ましいのです。最低限、憲法、民法、行政法の学習を十分に行って下さい。もっとも、法学部以外の学部の学生、さらには法律学に全く触れてこなかったという方もおられるでしょう。そこで、憲法、民法、行政法などの基本的な部分にも触れておきたいと考えています。
〔これまでの経過〕
2003年8月16日、第1版として開始。順次掲載、修正。
2007年8月5日、第2版として順次改訂。
2009年7月7日、第3版として順次改訂。
2011年3月4日、第4版として順次改訂。
2014年3月3日、第5版として順次改訂。
2019年5月25日、第6版として順次改訂。
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