ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

ニュータウンを通る私鉄が不便になっていく……

2025年01月14日 00時00分00秒 | 社会・経済

 2025年1月12日の夕方に、京阪神地区の交通事情に関する記事で気になる記事2本が朝日新聞社のサイトに掲載されていたことは、昨日(2025年1月13日)に書きました。今回はもう1本の記事、「ニュータウン最寄りの私鉄でも異変 直通運転消えて『乗り換えが…』」(https://digital.asahi.com/articles/AST162JWVT16OXIE030M.html)を取り上げます。

 この記事の舞台は、大阪府最北端の駅、妙見口駅が所在する豊能町と、大阪府最南端の岬町です。

 まずは豊能町です。阪急宝塚線の川西能勢口駅(兵庫県川西市)を起点とする能勢電鉄の妙見線が通り、妙見口駅も同町にあります。2023年12月に、妙見口駅から少し離れた場所にあった黒川駅を起点とした妙見の森ケーブルが廃止されたことを御記憶の方もおられるでしょう。

 能勢電鉄を利用したことがないので、よくわからなかったのですが、2022年12月のダイヤ改正で能勢電鉄の運行系統が大きく変わりました。これが、豊能町のニュータウンの住民に少なからず衝撃を与えたようです。

 先程、妙見線は川西能勢口駅から妙見口駅までの路線である旨を記しました。現在も正式な路線区間に変わりはありません。また、能勢電鉄には、妙見線の山下駅から日生中央駅までの日生線という支線があります。このような路線図を見れば、少なからぬ人は、妙見線の全線通し運用が中心であろうと思うでしょう。

 しかし、2022年12月のダイヤ改正により、現在は妙見線が山下駅を境に分割されているような実態となっています。すなわち、川西能勢口駅発着の普通列車の大部分は川西能勢口駅から日生中央駅までの運行であり、一方で妙見口駅発着の普通列車の大部分は山下駅までの運行となっています。これでは、日生線が川西能勢口駅から日生中央駅まで、妙見線が山下駅から妙見口駅までであると勘違いされるかもしれません。

 能勢電鉄のサイトで確認してみたところ、妙見線の全線を通して運行される電車は、下りが平日に2本(川西能勢口駅5時18分発および23時54分)、土曜日・休日に1本(川西能勢口駅23時50分発)のみ、上りが平日に3本(妙見口駅5時10分発、5時28分発および5時47分発)、土曜日・休日に2本(妙見口駅5時10分発および5時32分発)のみとなっています。原則として、川西能勢口発日生中央行きの普通列車は山下駅で妙見口行きの普通列車に接続することになっていますが、時刻表をよく見ると接続のない列車もあります。妙見口発山下行きの普通列車も同様であり、原則として山下駅で日生中央発川西能勢口行きの普通列車に接続しますが、そうでない列車もあります。

 このような運行系統の変更のため、豊能町にある光風台、ときわ台の住民にとっては妙見線の利便性が失われることとなりました。川西能勢口駅で阪急宝塚線に乗り換える必要はあるものの、大阪梅田駅まで1時間もかからないからでしょう。

 しかし、能勢電鉄の乗降客は1990年代後半以降、減少が続いています。ニュータウンと言っても建設当時にnewであっただけで、しばらく経てば住民の高齢化が進みます。また、ニュータウンで育った若年層がそのニュータウン、さらに言えば郊外を出てしまうのでしょう。近畿地方にはニュータウンが限界集落に近づいてしまうという現象もあるようです。

 そうなると、鉄道会社としても従来の運行本数を維持できず、減便ダイヤということになります。能勢電鉄の場合は、日生線の利用客が多いということで、川西能勢口駅を起点または基準としてそちらへの直通運転が優先されたということでしょう。しかし、妙見線の光風台駅やときわ台駅の周辺に居住する人にとっては不便になったという訳です。また、山下駅での接続時間も、人によっては足りないという意見があります。

 能勢電鉄の沿線ではない場所にあるニュータウンも、大同小異というところでしょうか。

 上記朝日新聞社記事には岬町も登場するのですが、こちらはニュータウンの話ではありません。南海本線のみさき公園駅から多奈川駅までの多奈川線が取り上げられています。私はこの路線に乗ったこともないので、詳しいことは知りません。ただ、多奈川線の途中に深日港(ふけこう)駅があり、かつては淡路島への航路、徳島までの航路がありました。また、南海本線の起点である難波駅から多奈川駅まで直通急行が走っていたとのことです。しかし、大鳴門橋、明石海峡大橋のために航路はなくなりました。それが1999年のことで、多奈川線の利用客の減少が続くことになります。

 そのためでしょう、2023年10月に南海電気鉄道がダイヤ改正を行い、多奈川線についてはおよそ4割減というダイヤのスリム化を行いました。岬町議会は見直しを求めて南海電気鉄道に対して要望書を提出したのですが、ダイヤの決定権はあくまでも南海電気鉄道にあります。多奈川線の利用実績が向上しない限り、岬町が望む方向でのダイヤ改正は行われないでしょう。


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