ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

消費税・地方消費税の税率引き上げ再延期などについて、法律案が提出される

2016年08月25日 08時39分00秒 | 国際・政治

 今年の6月1日、内閣総理大臣が消費税および地方消費税の税率引き上げを再延期するという方針を表明しました。

 勿論、これだけでは何も決まったことにはなりません。消費税法、地方税法、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」などを改正することが必要となります。

 そのための法律案が、9月に召集される予定の臨時国会に提出されることとなりました。これは、例えば今日の朝日新聞朝刊4面14版「消費税引き上げ、再延期閣議決定 臨時国会に法案提出へ」(http://digital.asahi.com/articles/DA3S12527022.html)で報じられています〔関連して、同じ面・版の「臨時国会召集、首相『早期に』 民進代表戦前を視野」(http://digital.asahi.com/articles/DA3S12527020.html)も参照〕。

 消費税および地方消費税の税率引き上げは、今年度の税制改正に盛り込まれた様々な改正のうち、来年、つまり2017(平成29)年に施行される予定であったものの前提となっていました。たとえば自動車取得税の廃止です。しかし、税率引き上げが延期されるのであれば、前提が失われてしまいます。そのため、消費税および地方消費税に話が留まらないのです。実際に、今年度の税制改正を御覧ください。私自身も多くの文献を購入したりしましたが、毎年、税制改正に関する多種の解説本が書店に並べられますので、時期さえ誤らなければ簡単に見つかります。手元にあるものに改めて目を通すと、消費課税はもとより、法人課税、資産課税など、多くのものが、消費税および地方消費税の税率引き上げに結びつけられています。引き上げを前提とするものが目につくのです。

 しかし、6月1日、再延期の方針が示されました。内閣総理大臣は、記者会見で消費税および地方消費税の税率引き上げが内需の腰を折ることになりかねない旨を述べています(朝日新聞2016年6月2日付朝刊9面14版「消費増税再延期 首相会見(要旨)」、日本経済新聞2016年6月2日付朝刊4面13版「首相記者会見の要旨」を参照)。

 そこで思ったのですが、この記者会見がはしなくも明示したのは、少なくとも、消費課税が国内の経済状況に悪影響を及ぼしうるということを、政府によっても認識されているという事実です(事実と記してよいでしょう。少なくとも、示唆は含まれています)。それならば、延期を繰り返すのは無意味である、または有害であるということになります。従って、税率引き上げを完全に止めることが最も筋に適います(さらに言うならば消費税および地方消費税の廃止、とまでは行かなくとも税率の引き下げが理に適うでしょう)。勿論、財政規律の問題を忘れてはなりませんが、そのためにも消費課税一辺倒がよいものとは言えないということでしょう。

 また、余談のようになりますが、リニア中央新幹線に財政投融資を向ける方針が固まりつつあるという報道が繰り返されており、私は懸念を持っています。どう考えても割に合いそうにないからです。このことについては機会を改めて記したいと考えていますが、単なる例としてあげておきました。

 消費税法第1条第2項は、消費税の税収を「地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」と規定します。しかし、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」附則第18条第2項は「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する」と定めています。つまり、双方の規定に矛盾または不一致があります。消費税および地方消費税の税率を引き上げても、その全てが社会保障給付などに回る訳ではないのです。


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