ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

9月24日付朝日新聞朝刊の「経済気象台」

2020年09月26日 07時00分00秒 | 国際・政治

 2020年8月11日13時16分00秒付で「看板だけはたくさん掲げても」という記事を掲載しました。今回は或る意味でその続きです。

 「経済気象台」というコーナーが、朝日新聞朝刊の経済面にあります。今回は、24日付朝刊12面13版に掲載された「キャッチフレーズの行方」を紹介しておきます。

 これを書かれた「穹」氏は、三本の矢、新三本の矢をあげ、これらと並行するものとして地方創生、一億総活躍といったような政策、女性活躍、生産性革命、働き方改革などというようなキャッチコピーをあげて、全体をイメージ戦略と捉え、「SNS時代の潮流に合致し、大いに当たった。国民に清新な印象を与え、度重なる選挙の勝利に貢献した」としつつも、「国民受けを狙うあまり、実現を裏づける根拠に乏しい目標も多かった。名目GDPや出生率の実績は目標に遠く及ばない。アベノミクスの中核と目された日本銀行の金融政策も、物価目標2%を実現できないまま、7年半が過ぎた」と評価しました。

 表現は違いますが、看板をたくさん掲げ、掛け替えてきたということです。そして、結局、根本のところで目標は未達成のままであったということです。今年8月に地方自治総合研究所から刊行された「地方自治関連立法動向第7集」に掲載された「地方税法等の一部を改正する法律(平成31年3月29日法律第2号)<月刊自治総研2019年12月号より>」において、私は「2012年12月に第二次安倍内閣が発足してから現在に至るまで、内閣および与党は『デフレ脱却と経済再生』を『最重要課題』と位置づけている。このこと自体、『デフレ脱却と経済再生』があまり進んでいないことを物語っている」と記しました(8月6日10時17分10秒付の「景気動向 2018年10月で景気拡大は終わり 与党税制改正大綱が暗示していた?」もお読みください)。また、私は別の論文で「具体像が十分に示されないままに「改革」、「革命」などの語が多用される点に違和感を禁じえず、『働き方改革』と『給与所得控除・公的年金等控除の制度の見直し』との具体的な関係について、十分と言える程に明確にされているとは言い難い」とも記しています。

 そう、「改革」、「革命」はイメージなのです。閉塞感に囚われている国民に変化を期待させるための言葉です。過激であることは否定できませんが、そのくらいでなければインパクトがないのでしょう。具体性は必要ないのです。

 イメージ戦略は、成功すればよいのですが、少しの失敗が大きく響きます。その例として「穹」氏があげたのが、星野源さんの歌に乗せた形での「首相が自宅でくつろぎ、外出自粛を呼びかける投稿動画」です。私もその動画を見ましたが、すぐに「これはないだろう」と思いました。星野さんの歌と自宅でくつろぐ姿が全く合っていません。テンポも何をも無視したものにしかなっていなかったのです。マラカスを振る、カスタネットを叩く、というようなことをすれば合うし、受けたことでしょう。他国の首相や大統領は、本を朗読する、じっくりと熱を込めてメッセージを送る、というようなことをしていました。センスの問題だろうとすぐにわかります。まさに、「穹」氏がお書きのように「身近で切実な問題では人は標語や印象に惑わされない」のです。

 「穹」氏は「『根拠と結果』重視の政策に戻れるか。新政権の真価が問われる」という文を最後に記しています。その通りであると思います。これを前提として、真に必要であるのは検証でしょう。或る意味でイメージ戦略と逆の方向にあるものです。その意味で、もりかけさくらのうちのさくらについて再調査はしないと表明されたことは、検証の重要な機会が失われたことであり、残念なこととしか言い様がありません。


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