ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

「脱東京」などと言うけれど

2021年01月05日 12時35分20秒 | 社会・経済

 2020年10月24日0時0分0秒付で「コロナ渦でも地方移住は進まない?」という記事を掲載しました。コロナ渦がなくとも地方移住は難しいと言われていましたし、実際に失敗例の記事をいくつも見つけることができます。

 これは、別に首都圏から他地方への移住に限られない話であろうと思います。場所にもよりますが、閉鎖的な地域に移住して掟に従わなければならず、神経をすり減らし、ついには病気になったり家庭崩壊に至ったりするということもあるようです。川崎市の某地区ですら講中があるくらいですから、他地区から移住した者には意味がわからない慣習に戸惑うのも当たり前です。

 さて、今回は前掲記事の続きのようなものです。今日(2021年1月5日)の朝日新聞朝刊25面14版に「(ニュースQ3)東京の転出超過続くけど…地方には?」という記事が掲載されていますので、これを題材として記していきます。

 コロナ渦のためか、東京都からの人口流出が続いており、2020年12月1日における東京都の人口は37000人ほどの減少となっています。転出超過ということで、5か月連続であるそうです。かつて、2012年にも転出超過があったのですが、それ以来ということになります。

 しかし、転出先を見ると、神奈川県が最も多くて22.5%、次いで埼玉県が18.4%、千葉県が13.5%です。この3県だけで50%を超えます。あとは大阪府が4.8%、愛知県が3.4%、北海道が2.9%、福岡県が2.8%、茨城県が2.7%、静岡県が2.4%、その他の府県が26.2%となっています。少ないとはいえ茨城県および静岡県は東京に近いと言えます。JR東日本の東京近郊区間を見ると、茨城県は水郡線の常陸大子〜下野宮を除く全県内区間が入っていますし、常磐線やつくばエクスプレスのおかげで同県南部は東京への通勤圏内となっています(1駅だけある東北本線も忘れてはいけません)。静岡県も東海道本線の熱海駅と伊東線が入っています。一方、神奈川県内も走る御殿場線は入っていませんが、これは同線がJR東海の路線であるからです。熱海市や伊東市も東京への通勤圏内と言えるでしょう(時間はかかりますが)。三島、沼津、御殿場となると厳しいかもしれませんが、東京から遠く離れているとも言えないような場所です。

 上記記事には江東区から鎌倉市に移住した人の例が載っています。テレワークの普及(と言えるかどうかは微妙なところでしょうが)により、引っ越したということでしょう。たしかに、家賃は安くなりますし、部屋の広さも東京よりは広いでしょう。それでも、首都圏を離れる気はないということです。

 「そうだろうな」と思えるところもあります。公共交通、医療機関などを考えれば、首都圏を離れるつもりがないという気持ちはわかるのです。

 まずは仕事や学校の関係です。転居すると言っても仕事を辞めたり変えたりしないほうが多いでしょう。勿論、テレワークと言っても全ての業種で導入できる訳がありません。

 また、首都圏、中京地区、京阪神地区といった大都市圏を除けば、鉄道網やバス路線網は貧弱で、自動車を運転できない人は生活できません。政令指定都市でも公共交通機関の利便性が低い所があります。運転できる人でも、いつまでもできるとは言えませんし、体調が悪い時などはどうしようもなくなるでしょう。

 さらに、地方によっては医療機関が極端に少ない場所もあります。COVID-19で医療が逼迫する危機的状況にありますが、東京でそうであれば、他所はなおさらということになりかねません。インターネットの記事を見ると、報じ方や取り上げ方にもよるのでしょうが、むしろ首都圏以外の地方のほうがクラスターが多く発生しているのではないかと思われるほどです。

 上記記事には「首都圏全体の人口はむしろ増えている。地方分散が始まったと言える状況にはない」という、明治大学名誉教授の市川宏雄氏のコメントが掲載されています。

 また、不動産関係者のコメントで、東京都からの転出が多くなった理由の何割かはその通りであろうというものがあります。SUUMOの編集長である池本洋一氏は、都心の家賃などが高すぎることを指摘しています。緊急事態宣言時などで学校が休校となっていた頃に騒音トラブルが例年の何倍にも増えたそうで、それならば都心から離れた地域に住めばよいということです。

 それでは、法人のほうはどうかと言えば、やはり首都圏以外の需要がないということのようで、首都圏内での拠点移転ということでしょう。渋谷などで空きテナントなどが増えているそうですが、敢えて他の地方に移す意味が薄いということです。考えてみれば当たり前のことで、商売の基盤、地盤がないような場所へいきなり移ってうまくいく訳がありません。家賃が高すぎる所から少しでも安い所へ移ればよいだけです。

 人口動態を見るには、まだ期間が短いとも言えるかもしれません。様子をじっくりと観察していくしかないでしょう。

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面白いフレーズ

2021年01月04日 00時30分10秒 | 本と雑誌

 先日、とある書店で購入したPEANUTS関係の本に、面白いフレーズが載っていました。

 I think the best way to solve problems is to avoid them.

 原作者のチャールズ・M・シュルツさんがライナスに言わせたフレーズですが、面白く、何故か納得できる部分もあります。

 ついでに記すと、ライナスはこう言ってチャーリー・ブラウンを呆れさせます。

 No problem is so big or so complicated that it can't be run away from!

 こういう台詞に溢れているのがPEANUTSであり、だから世界的に人気があるのでしょう。

 私は幼少時からあまり漫画を読みませんが、PEANUTSだけは別で、小学校2年生の時に知り、それから今に至るまで読んでいます。

 先程の2つのフレーズの出典を示しておきます。

 小池直己著・訳(チャールズ・M・シュルツ作)『スヌーピーで学ぶすぐに使える英語表現105』(2020年、祥伝社)164頁(「074 ライナスの哲学」)

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2021年もよろしくお願い申し上げます。 Prosit Neujahr!!

2021年01月01日 01時53分50秒 | 日記・エッセイ・コラム

 今年も、テレビ東京で生中継される東急ジルヴェスター・コンサートを見ながら迎えることができました。

 その前、2020年12月31日20時からNHK教育テレビのクラシック音楽番組を見ていて、(妻は「小難しい」といって嫌っていますが)バルトークのヴァイオリン・ソナタ第1番第3楽章を庄司紗矢香さんの演奏で聴くことができたのはうれしい限りでした。また、新倉瞳さんのチェロでサン・サーンスの「白鳥」、堀米ゆず子さんのヴァイオリンでベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番第2楽章も聴くことが出来ました。しかし、ベートーヴェンの交響曲第9番(2020年12月23日のNHKホール)の途中で切り替えました。第4楽章だったので本当は切り替えたくなかったのですが、23時30分からテレビ東京での生中継なので、仕方がありません。

 26回目となる東急ジルヴェスター・コンサート、今回は沼尻竜典さんの指揮でした。久しぶりの出演だったそうです。そして、私は小曽根真さん(ピアノ)、中村健吾さん(ベース)、高橋信之介さん(ドラム)のトリオも楽しみにしていました。中村さんの演奏は、2018年、青葉台のフィリアホールで行われた矢野沙織さんのコンサートに出演された際に聴いています。

 正直なところ、ピアソラのリベルタンゴだけは駄曲でこのコンサートに合わないと感じましたが(私がこの曲を嫌っているからでしょう)、それ以外は全て楽しめました。小曽根さんのNo Siestaのオーケストラ版は楽しめました。敢えて記すなら、中村さんと高橋さんをフィーチュアする場面をもっと作って欲しいと思いました(もっとも、それはジャズにも慣れ親しんでいる私が思うことでして、一般的なクラシックのファンには難しいでしょう)。しかし、実は私にとって特にうれしかったのは、バッハのBWV1043(2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調)の第1楽章です。ヴァイオリンを学ぶ人であれば、余程早くやめた人でなければ必ず弾くことになるでしょう(鈴木メソッドでは第4巻に第2ヴァイオリン、第5巻に第1ヴァイオリンであるはずです)。私自身も小学生時代に習った曲です(今も弾けるかな?)。そして、あのアイザック・スターン生誕60周年記念コンサートでは、第1ヴァイオリンがスターンさん、第2ヴァイオリンがイツァーク・パールマンさん、指揮がズービン・メータさんという顔ぶれでした(BWV1043では登場しませんが、ピンカス・ズーカーマンさんもヴァイオリンとヴィオラを演奏しています)。ちなみに、BWV1043の第2楽章は川崎信用金庫高津支店で営業中に何度も聴くことが出来ます。

 例年のジルヴェスター・コンサートであれば、1月1日0時0分になると花火のような音が鳴るのですが、今年は鳴りません(鳴らしてもよいようなものですが)。しかし、ベートーヴェンの交響曲第5番第4楽章が終わった瞬間に2021年1月1日となりました。ドンピシャです。やはり、予想どおり、カウントダウンに合っていました。

 2021年は、ストラヴィンスキーの没後50年にあたります。そのためか、あの「火の鳥」の「子守歌」および「終曲」も聴くことが出来ました。テレビ中継のフィナーレとしては珍しい選曲でしょう。マンネリズムの固まりである某ニュー・イヤー・コンサートにも見習って欲しいものです。

 妻とも話していましたし、懇願されました。渋谷で、生で聴きたい、と。私も、何年もの間、そのように思っています。

 クラシックもジャズも落語も能楽も、何でもでき、また何でも合うのが渋谷です。新宿や池袋では偏りが出ますし、出来ないもの、合わないものが出てくるでしょう。日本の大衆芸能史を少しばかり紐解いてみても、東京で最も柔軟性が高いのは渋谷と六本木ではないかと思われます。私も幼少時から親しんでいる渋谷には頑張って欲しいものです。

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