カンボジア経済

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シアヌークビル港湾公社株 上組がJICAと巨額相対取引

2019年05月29日 | 経済
 5月24日、港湾運送業大手の上組は、シアヌークビル港湾公社((Port Authority of Sihanoukville)の議決権付き発行済み株式を、相対取引で国際協力機構(JICA)から5月21日に取得したと発表しました。上組では、2017年5月の新規株式公開の際に株式総数の約2%を取得していましたが、シアヌークビル港湾公社への資本強化を図るため発行株式の約11%(9,434,916 株)をJICAから取得し、取得合計株式総数は約13%になったとのことです。
 2017年のシアヌークビル港湾公社の新規株式公開(IPO)では、戦略的投資家を目指して、中国企業が動いているという情報がありました。シアヌークビル港は、これまで日本政府からの円借款等による支援を活用して開発が進められてきている、カンボジアでも最も重要な港湾です。中国海軍から見ると、ASEAN諸国には、安心して寄港できる港がないことも事実であり、親中派となりつつあるカンボジアのシアヌークビル港は、願ってもない重要港湾となります。また、いわゆる債務の罠で、スリランカのハンバントタ港が中国のものとなった事例は、一帯一路の美名の陰で中国の野心を示すものとして広く知れられるところとなっています。
 こうした中で、JICAは、2017年のIPOで戦略的投資家として売却対象株式の54%を取得し、カンボジア経済財政省(出資比率:75.0%)に次ぐ第2位株主(出資比率:13.5%)となりました。更に、この際、上組は約2%を取得していました。その後、JICAは、2018年12月、阪神国際港湾株式会社に対し、保有株13.5%のうち2.5%を相対取引で売却していました。今回は、残りの11%を上組に売却したものです。なお、シアヌークビル港湾公社の株価は昨年来急騰しており、2017年のIPO時の公募価格5040リエルに対し、2019年5月21日現在で、1万2500リエルと2.5倍近くとなっており、単純計算でJICAは今回の取引で19億円程度の売却益を得たものと見られます。
 シアヌークビルの街が中国資本に占拠されつつある中で、カンボジア経済にとって欠くことのできない重要港湾であるシアヌークビル港までが、中国の野心によってその運営が歪められるような事態となれば、カンボジア経済だけでなく、カンボジアに進出している日系企業にとっても重大な懸念を引き起こすこととなりかねません。シアヌークビル港では、現在、円借款により新コンテナターミナルの建設も進んでおり、引き続きその動向を注視していく必要があるものと見られます。

上組の新聞発表
https://www.kamigumi.co.jp/news/2019/000189.html

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