英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2023倉敷藤花戦 挑戦者決定トーナメント 準決勝 その2

2023-09-15 20:35:05 | 将棋
「その1」の続きです。
各ブロックの状況を整理すると
【第1ブロック】RRAv…48.44 ○西山女流三冠(1位)-水町女流初段(35位) 西山三冠(1位)
【第2ブロック】RRAv…40.67 ○内山女流1級(11位)-中村(真)女流三段(14位)
【第3ブロック】RRAv…30.67 ○上田女流四段(5位)-山根女流二段(6位) 上田四段(5位)山根二段(6位)塚田初段(10位・5月に二段昇段
【第4ブロック】RRAv…40.44 ○木村女流1級(16位)-長沢女流四段(71位)
【第5ブロック】RRAv…32.22 ○今井女流1級(32位)-千葉女流四段(22位) 香川女流四段(9位)渡部女流三段(7位)鈴木女流三段(8位) 
【第6ブロック】RRAv…39.77 ○岩根女流三段(27位)-中井女流六段(15位)
【第7ブロック】RRAv…45.78 ○礒谷(真)女流初段(49位)-長谷川女流二段(45位)
【第8ブロック】RRAv…31.67 ○加藤(結)女流初段(20位)-野原女流初段(13位) 加藤(桃)女流三段(3位)伊藤女流三段(4位)

RRAv…レーティング順位の平均値(青字は平均値が上位、赤字は下位)
各ブロック右側の棋士名はランク10位以上の棋士 倉敷藤花タイトル保持者の里見五冠はランク2位

 第3ブロックの上田四段、山根二段、塚田現二段のAクラス(トップ10)3人の内、2棋士が姿を消すのは仕方がないとして(上田四段がベスト8進出)、第5ブロックの渡部三段、鈴木三段、香川四段は今井1級に後塵を拝してしまった(鈴木は渡辺に敗れ、香川、渡部は今井に敗れた)。さらに、第8ブロックの加藤(桃)三段、伊藤三段も3回戦で野原初段、加藤(結)初段に敗れ、ベスト16にも進出できなかった。
 結局、Aクラス9名の内、ベスト8に残れたのは西山女流三冠と上田女流四段だけとなった。
 それにしても、ブロックによる濃淡さがあり過ぎ。抽選にいたずらで、《そういうのもあり》だと思うが、女流棋戦では生じ過ぎのような気がする。

【準々決勝の組み合わせ】
西山女流三冠(1位)-内山女流1級(11位)
上田女流四段(5位)-木村女流1級(16位)
今井女流1級(32位)-岩根女流三段(27位)
礒谷(真)女流初段(49位)-加藤(結)女流初段(20位)

 上二つの対戦は、西山、上田は順当、内山、木村はブロックの顔ぶれ("薄い”ブロック)からすると"あり得る”。
 下二つの対戦は、相当意外。今井1級は実力者だが、渡部三段、鈴木三段、香川四段の内二人を倒さなければベスト16に進出できず、勝ち上がったとしても、小高初段(24位)か千葉四段(22位)が勝ち上がってくることが予想され、ベスト8進出の難易度は高かった。
 岩根三段のブロックは、清水七段、中井六段がおり、初戦の矢内五段も"強い時は強い”ので、勝ち上がるのはそこそこ難しい。それでも、今井、岩根両棋士は実力者なので、やはり"あり得る”と。
 しかし、礒谷初段(49位)-加藤(結)初段(20位)は全くの想定外だった。想定外だったが、礒谷のブロックは、相当希薄なメンバーで、大島初段(18位)が敗れたら、誰が勝ち上がっても不思議ではない(予測困難)。頼みの?大島初段が3回戦で長谷川二段に敗れてしまったので、“誰が勝ち上がっても不思議ではない”状態になった。
 加藤(結)初段のブロックは、《加藤(桃)三段と伊藤三段がベスト8を懸けて戦わねばならないのか?》と愁いたが、両名とも3回戦で姿を消したので、愁わなくてもよくなってしまった(笑)。加藤桃を破った野原(13位)も相当な実力者で、加藤(結)もここ二年実力をつけてきているので、個々の対戦では加藤桃、伊藤の敗局もあり得るとは思っていたが、揃って敗れるとは……

【準々決勝の結果】
○西山女流三冠(1位)-内山女流1級(11位)
○上田女流四段(5位)-木村女流1級(16位)
○今井女流1級(32位)-岩根女流三段(27位)
 礒谷(真)女流初段(49位)-加藤(結)女流初段(20位)○


 加藤(結)女流初段の勝利が予想外だったが、あとの3局は予想通り。

【準決勝の組み合わせ】
西山女流三冠(1位)-上田女流四段(5位)
今井女流1級(32位)-加藤(結)女流初段(20位)


 西山女流三冠-上田女流四段戦は、中盤以降局勢をリードした西山女流三冠が、多少のブレはあったものの押し切った。
 上田女流四段も剛腕と巧妙さを兼ね備えているが、西山女流三冠はそれ以上。それに、棋風が合うというか、上田女流の指し手は西山三冠の想定内。相性が良いと言うか……上田女流にとっては《相性が悪いなあ》と感じているのではないだろうか。

 今井女流1級-加藤(結)女流初段戦は、振り飛車の今井女流1級の指し手がちぐはぐで、“振り飛車の負けパターン”(左辺・左翼を破られそうで、捌けもしない)に陥った。
 加藤(結)初段は落ち着いた指し手で、有利を拡大していき、勝利に近づいていったが、終盤、誤り、混戦に。

 先手・今井陣は一見、美濃囲いだが、金と銀ではなく桂と香! 何とも“安普請”。今井女流の苦戦ぶりが伺える。
 図ではチャンスが訪れていた!(図の△5八銀成は空成りで、相当緩い手に見える)

「その3」に続く
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2023倉敷藤花戦 挑戦者決定トーナメント 準決勝 その1

2023-09-14 18:02:49 | 将棋
2023倉敷藤花戦 挑戦者決定トーナメントの準決勝は
 西山朋佳女流三段ー上田初美女流四段  今井絢女流1級ー加藤結季愛女流初段 の組み合わせとなった。
 西山-上田戦は順当と言えるが、今井-加藤(結)戦はかなり意外。

 そこで、トーナメントの組み合わせを視る。
 トーナメントを8つのブロックに分けて精査。


【第1ブロック】……西山女流三冠(1位)井道女流二段(62位)、和田はな女流1級(55位)、船戸女流三段(76位)、相川女流初段(74位)石本女流二段(12位)、村田女流二段(64位)、山口(稀)女流1級(57位)、水町女流初段(35位)
(括弧内の数字は、『shogidata.info』女流棋士レーティングランキング2023年9月13日現在)
(棋士名の色は、青太字…ランク1~10位、青…11~25位、赤…55~66位、赤太字…67~78位)

 9棋士のランクの平均は48.44
 弩級の西山三冠の他は石本二段ぐらい。あとは水町初段。他のメンバーは……阿藤快さん曰く「なんだかあ…」。(続く言葉は"今一つ”とかの言いにくい評価)
 ベスト16戦は西山-水町戦。西山女流三冠がベスト8へ。

【第2ブロック】……中村(真)女流三段(14位)、加藤(圭)女流二段(23位)、山口(恵)女流二段(19位)、高浜女流1級(63位)、脇田女流初段(53位)、中倉女流二段(69位)、宮宗女流二段(58位)、鎌田女流2級(56位)、内山女流1級(11位)
 9棋士のランクの平均は40.67
 このブロックは上のゾーンに第2グループ(青字)の中村(真)三段、加藤(圭)二段、山口(恵)二段が集中、下のゾーンには第2グループトップ11位の内山1級がいる。他のメンバーは4名が"なんだかなあ”。脇田初段も昨年度、里見女流五冠を破った後、甲斐、中井、清水、野原を破るなど覚醒したかに思えたが、直近は1勝10敗と振るわず、レーティングも53位と再降下。
 激戦ゾーンは中村三段が勝ち上がったものの、ベスト16戦、中村ー内山戦で敗れ(内山の勝利)、内山女流1級がベスト8へ。
 内山女流1級は、名人リーグで里見女流五冠を破り、香川、石本、中村(真)、塚田、鈴木などを破っており、今後も楽しみ。

【第3ブロック】……山根女流二段(6位)、中村(桃)女流二段(59位)、大城千花アマ(※65位)、塚田女流初段(10位・5月に二段に昇段)、渡辺(弥)女流初段(34位)、和田あき女流初段(37位)、堀女流1級(39位)、上田女流四段(5位)、室谷女流三段(21位)
 ※大城アマはこれまでの実績…○田中2級(当時)、○野原初段、●千葉四段、●中村二段、●鎌田2級を考慮し、暫定レーティング65位とした
 9棋士のランクの平均は30.67
 Aクラス相当が、上田四段、山根二段、塚田初段の3棋士。室谷三段も最近は不振だが地力は十分にある。さらに、ランク30位台も3名と、かなり厳しいブロックである。
 ベスト16戦は山根-上田戦。上田女流四段がベスト8へ。

【第4ブロック】……山田女流四段(52位)、田中女流1級(54位)、長沢女流四段(71位)、頼本女流初段(26位)、北村女流二段(17位)、藤井女流初段(60位)、木村女流1級(16位)、佐々木女流1級(40位)、中澤女流二段(28位)
 9棋士のランクの平均は40.44
 Cクラスは少ないものの、準Aクラスの木村(16位)、北村(17位)がいるもののやや寂しいブロック。このふたりが3回戦で当たり、木村が勝利。
 ベスト16戦は長沢-木村戦。木村女流1級がベスト8へ。
 長沢四段が2勝を上げる健闘。

【第5ブロック】……香川女流四段(9位)、久保女流2級(48位)、今井女流1級(32位)、鈴木女流三段(8位)、渡部女流三段(7位)、小高女流初段(24位)、竹部女流四段(68位)、上川女流二段(72位)、千葉女流四段(22位)
 9棋士のランクの平均は32.22
 Aクラス3人は、第3ブロックと同じだが、この3棋士が上の山にかたまるという鬼ゾーン。しかも、初戦で鈴木三段と渡部三段が激突。この鬼ゾーン、更にもう一人乱入?しており……(後述)
 このAクラス3名の他にも、小高初段、千葉四段もおり、大激戦ブロック!
 ベスト16戦は今井-千葉戦。久保、香川、渡部、千葉をなぎ倒して、今井女流1級がベスト8へ。
 今井女流1級は元奨励会1級で、2023年2月1日に女流1級で女流プロ入りしている。デビュー後7連勝(香川女流四段、岩根女流三段、渡部女流三段、千葉女流四段に対する勝ち星も含まれている)。8戦目は西山女流三冠(女流王座戦 本戦)。この将棋、大激戦となり、西山危うしの局面もあったが、敗れる。

【第6ブロック】……清水女流七段(25位)、藤田女流二段(65位)、岩根女流三段(27位)、矢内女流五段(38位)、本田女流三段(33位)、武富女流初段(30位)、斎田女流五段(78位)、梅津女流2級(47位)、中井女流六段(15位)
 9棋士のランクの平均は39.77
 合計段位32段!ネームバリューは相当高い。 やや実力は下降したとは言え、経験や地力は相当高いが、緩めのブロックと言える。
 ベスト16戦は岩根-中井戦。岩根女流三段がベスト8へ。

【第7ブロック】……貞升女流二段(61位)、榊女流2級(67位)、礒谷(真)女流初段(49位)、島井女流二段(75位)、大島女流初段(18位)、山口(仁)女流2級(66位)、室田女流二段(31位)、長谷川女流二段(45位)
 9棋士のランクの平均は45.78
 ランクの平均値は第1ブロックより良いが、準Aランクの大島初段がいるだけ。一番レベルの低いブロックと言って良いだろう。いや、赤字レベル("何だかなあレベル”)は第1ブロックの方が上で、"乙乙”付け難い……
 ベスト16戦は礒谷-長谷川戦。礒谷女流初段がベスト8へ。

【第8ブロック】……伊奈川女流二段(36位)、加藤(桃)女流三段(3位)、飯野女流初段(73位)、野原女流初段(13位)、石高女流二段(77位)、加藤(結)女流初段(20位)、松下女流1級(29位)、※礒谷祐アマ(※30位)、伊藤女流三段(4位)
 ※礒谷祐アマは2023年9月1日付けで女流2級となっているが、トーナメント中はアマチュア。アマチュア時代の昨年度からの対女流棋士成績は9勝6敗で、対戦相手の顔ぶれを検討して暫定30位とした。
 9棋士のランクの平均は31.67
 加藤三段、伊藤三段が同ブロックに入り、野原女流初段も参入する激戦ブロック。トーナメント中はアマチュアであったが礒谷祐維も面白い存在。ランクの平均も高い。
 加藤、伊藤の両三段が上下に分かれたので、加藤-伊藤がベスト8を掛けた決戦になるかと思ったが、加藤三段は3回戦で野原初段に敗れ、伊藤三段も3回戦で加藤(結)初段に敗れてしまう。(礒谷アマは伊藤三段に敗れた)
 ベスト16戦は野原-加藤(結)戦。加藤(結)女流初段がベスト8へ。

「その2」に続く
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淡白な負け方 2023竜王戦挑戦者決定トーナメント準決勝

2023-07-21 20:55:02 | 将棋
 問題と見ていた、夕食休憩前後の指し方(考慮の仕方)。
 羽生九段に少し分がある局面。残り時間は2:21、永瀬王座は1:18。
 羽生九段の悪いパターンとしては、《夕食休憩付近で長考に沈み、時間と脳力を消耗した上に、疑問手を指して苦しくなる》というものだったが、本局では、24分と短めの考慮。
 それは良かったが、指し手自体は次善手で、形勢は互角になってしまった。
 
 それでも、まだ残り時間では優位であるし、形勢が互角なら、まだまだ羽生九段に分がありそうだ。
 しかし、この後、疑問手を重ね、敗勢に。形勢が開いてから永瀬王座は、終局までの13手(永瀬王座の指し手としては7手)の間、残り50分→43分と、7分しか消費していない。
 羽生九段は攻めたが見切られていた……そんな感じ。「攻めた」と言うより「攻めてみた」だけ。考慮時間も1:03を残していた。
 かなり淡白な指し口だった。体調でも崩したのだろうか?
コメント (2)
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将棋雑記 2023年7月19日

2023-07-19 11:32:26 | 将棋
棋聖戦、藤井防衛 4連覇
 藤井聡太棋聖(竜王、名人、王位、叡王、棋王、王将)が佐々木大地七段に勝利。3勝1敗で棋聖位を防衛した。4連覇を達成。これで、タイトル戦の番勝負は、16期全勝(獲得または防衛)。
 強い!
 第1局からの手数は、113手○、111手●、107手○、84手○…藤井から見た勝敗。ちなみに王位戦は、97手○、98手○。
 1局110手だとすると、互いの指す手は55手。藤井七冠はこの55手で1.5回ぐらいしか間違えない。渡辺九段、豊島九段、羽生九段、そしては3回ぐらい間違える。もちろん、大体の平均的印象で、藤井七冠とて3回間違えて敗北することはある。
 でも、大概は1回か2回しか間違えない。なので、対戦相手が有利に進めていたり、互角の戦いをしていても、結局、藤井七冠が勝ってしまう……そんなパターンだ。後者(互角→勝利)は、いわゆる“藤井曲線”の勝利パターンだ。
 佐々木七段なら、“もしかすると”という観測もあったが……。
 王位戦は0勝2敗と苦しい星勘定だが、まだ、わからない。次局を勝って、藤井将棋に対して、小さな穴を開けることができれば、勝機も見えてくるかもしれない。

竜王戦決勝トーナメント、ベスト4決まる
 準決勝の組み合わせは、稲葉陽八段(1組優勝)vs伊藤匠六段(5組優勝)、羽生善治九段(1組2位)vs永瀬拓矢王座(1組3位)。
 稲葉八段は、1組優勝による大シードで、ベスト4からの参戦。
 伊藤六段は、出口六段(6組優勝)、大石七段(4組優勝)、広瀬八段(1組5位)を連破しての準決勝進出。
 羽生九段は、三浦九段(3組優勝)を破っての進出。
 永瀬王座は、豊島九段(2組優勝)を破っての進出。
 伊藤六段はこのまま決勝三番勝負に駆けあがりそう。もう一方の準決勝は、14勝6敗と永瀬王座が圧倒しているが、直近は2勝2敗。羽生九段が調子が良ければ、五分以上の勝機があると見る。

 この決勝トーナメントだが、低い山で4~6組の優勝者がつぶし合うので、4~6組参加者で一人しか3回戦(ベスト9)に進出できないシステム。4~6組まとめての予選となっている。
 以前も疑問を唱えたが、後日、改良案を提示する予定。

無敗対決!西山女流三冠ー今井女流1級
 この対局を前にして、西山女流三冠は14連勝(対男性棋士を含めると16連勝)、今井女流1級は女流棋士へ転向後7連勝。まさに、無敗対決。
 西山女流三冠の連勝中には、里見女流五冠との対局はない。如何にこの二者が抜きんでているか分かる。二人を追う加藤女流四段、伊藤女流四段も相当強いが…
 今井女流1級は元奨励会1級で、2023年2月1日に女流1級で女流プロ入りしている。7連勝には、香川女流四段、岩根女流三段、渡部女流三段、千葉女流四段に対する勝ち星も含まれている。
 この将棋、大激戦となり、西山危うしの局面もあった。

 西山女流三冠は、この後、清麗戦第一局で里見清麗に敗れ連勝はストップしている。


“余計なお世話的” 羽生九段へのアドバイス
 やはり、夕食休憩付近で将棋が変調になり、形勢を損なうことが多い。
 1時間を超える長考で、形勢を損ね、残り時間も脳エネルギーも少なくなる……という悪循環。
 どうせ1時間消費するなら、20~30分は”ぼ~”として頭を休め、その後、リフレッシュした脳と新たな視点で局面に臨んではどうだろうか?
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白玲戦 D級順位戦 ~最終局を前にしての状況~

2023-07-10 17:34:58 | 将棋
今回の記事は、矢内女流五段ファンである筆者のボヤキですので、スルーしてください。
しかも、長々と昇級の可能性について言及したのですが、当事者の川又咲紀女流初段の休場(2023年2月26日~2024年4月9日)によって、昇級者がほぼ確定していました。
未確定の一人は、中村女流二段ー堀女流1級戦の勝者。
記事のほとんどを書いた後、川又女流の休場に気づきました(“2024年4月9日”を2023年と思っていました)
でも、せっかくなので、記事をアップします。


【最終局を前にした状況】
10位 内山あや女流初段 6勝1敗  長沢女流四段(1勝6敗)
12位 大島綾華女流初段 6勝1敗  水町女流初段(4勝3敗)
5位 中村桃子女流二段 5勝2敗  堀 女流1級(5勝2敗)
7位 渡辺弥生女流二段 5勝2敗  川又女流初段(3勝4敗)
17位 堀 彩乃女流1級 5勝2敗  中村女流二段(5勝2敗)
26位 佐々木海法女流1級5勝2敗  岩佐女流2級(4勝3敗)
29位 鎌田美礼女流2級 5勝2敗  和田は女流1級(3勝4敗)
30位 木村朱里女流1級 5勝2敗  榊 女流2級(4勝3敗)
31位 梅津美琴女流2級 5勝2敗  斎田女流五段(2勝5敗)
32位 松下舞琳女流1級 5勝2敗  飯野女流初段(3勝4敗)
1位 矢内理絵子女流五段4勝3敗  中倉女流二段(3勝4敗)
4位 村田智穂女流二段 4勝3敗  相川女流初段(1勝6敗)
6位 高浜愛子女流1級 4勝3敗  山口仁女流2級(2勝5敗)
9位 水町みゆ女流初段 4勝3敗  大島女流初段(6勝1敗)
11位 山口稀良莉女流1級4勝3敗  上川女流二段(2勝5敗)

(順位は今期D級のランキング、成績の右の棋士名は最終局の相手、今季の成績)

 6勝1敗の内山女流初段と大島女流初段は昇級が確定している。
 5勝2敗で現在3番手の中村桃女流二段(ランク5位)と堀女流初段(ランク17位)戦が最終局に組まれており、この勝者が昇級。
 残り1枠は、5勝2敗の渡辺女流二段(ランク7位)が勝てば決定。
渡辺女流二段が敗れた場合は、残りの5勝2敗の女流棋士にも昇級の可能性が生じる(もちろん、勝つのが必須条件)。言わばキャンセル待ち状態となるが、その優先順位は、佐々木女流1級(26位)、鎌田女流2級(29位)、木村女流1級(30位)、梅津女流2級(31位)、松下女流1級(32位)の順。
 例えば、松下女流1級の場合、彼女が勝ったうえで、渡辺女流二段、佐々木女流1級、鎌田女流2級、木村女流1級、梅津女流2級がすべて敗れれば昇級となる。

 現在4勝3敗の女流棋士も昇級の可能性がないわけではない。ランキング1位の矢内女流五段は最終局に勝ったうえで、渡辺女流二段、佐々木女流1級、鎌田女流2級、木村女流1級、梅津女流2級、松下女流1級がすべて敗れるのが条件。さらに、村田女流二段、高浜女流1級、水町女流初段、山口女流1級までが昇級の可能性がある。名前の順に昇級条件が厳しくなる(高浜女流、水町女流、山口女流は、中村女流二段ー堀女流1級戦で中村女流が敗れるのが必須となる)。
 中村女流二段、渡辺女流二段、堀女流1級も敗れても、昇級の可能性がなくなるわけではない。
 キャンセル待ちの順番は、佐々木女流1級、鎌田女流2級、木村女流1級、梅津女流2級、松下女流1級、矢内女流五段、村田女流二段、中村女流二段(最終局に敗れた場合)、高浜女流1級、渡辺女流二段(最終局に敗れた場合)、水町女流初段、山口女流1級、堀女流1級となる。

 ……なぜ、こんな説明を長々と書いているのかというと、私の応援している矢内女流五段が前局で敗れたからだ。(勝っていれば、簡単な説明で済んだはず)
 今期、出だし2連敗。そこから、4連勝して自力昇級の状況にこぎつけた。残る2局は、石高澄恵女流二段と中倉宏美女流二段。勝利する可能性が高く、C級復帰(本当はB級くらいには在籍してほしい)は濃厚と思っていた。
 ところが、なぜ?
 石高女流二段は今年度(矢内戦前)1勝2敗、2022年度…6勝15敗(.286)、2021年度…7勝15敗(.318)、2020年度…3勝12敗(.200)という低空飛行。対戦成績も矢内女流の4戦全勝。
 負ける要素が見当たらないというのに……

 おかげで、上記のような絶望的状況。コインを投げるような確率5割と計算すれば、矢内昇級の確率は、矢内女流五段が最終局に勝利したとしても、渡辺女流二段、佐々木女流1級、鎌田女流2級、木村女流1級、梅津女流2級、松下女流1級がすべて敗れる確率……1/2の6乗……約1.6%
 しかも、渡辺女流二段、佐々木女流1級、鎌田女流2級、木村女流1級、梅津女流2級、松下女流1級の対戦相手が川又女流初段、岩佐女流2級、和田は女流1級、榊女流2級、斎田女流五段、飯野女流初段なので、可能性はもっと低い。可能性は限りなくゼロだ。

 《なぜ、可能性が低くなるのか》というと……2022年度までの直近の成績が
岩佐女流2級  直近2年間  9勝10敗 .474 
川又女流初段 直近5年間 45勝55敗 .450 
飯野女流初段 直近5年間 29勝58敗 .333 
和田女流1級  直近3年間 18勝37敗 .327 
斎田女流五段  直近5年間 22勝56敗 .282 
(相川女流初段 直近5年間 25勝67敗 .272 ※)
(久保女流2級  直近1年間  1勝 3敗  .250 ※)
榊 女流2級 直近1年間  2勝10敗  .167 
 (相川女流初段と久保女流2級は矢内昇級に関しては関わっていないが、参考記録として)
 詳しくは、女流棋士考「その12」「その13」をご参照ください。

 計算してみると、0.1%であった……

 長々と書いてしまったが、中村女流二段ー堀女流1級戦は堀女流の勝利、渡辺女流二段-川又女流初段戦は渡辺女流と見て、C級への昇級者は内山あや女流初段、大島綾華女流初段、渡辺弥生女流二段、堀彩乃女流1級と見る
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会場が静寂に包まれた………

2023-07-01 17:08:54 | 将棋
大必勝の局面。
羽生九段が山崎玉をどう詰ますか……幾通りも詰みがあって、《こんなもんで詰むだろう》とか、相当雑に詰ましに行っても詰んでしまうような、楽勝の局面だった。


ところが、△4七香。必至を掛ける。
まあ、これでも勝ちなのだろう。羽生九段も勝利を確信したような手つきだった。

………▲2二銀………解説の森内九段は無言。
………ん?△2四玉と上がる一手に…… ▲2五飛と切られると………(飛車切りで手にした)桂を1七に打たれると…詰んでいる


 羽生九段も気がついたのだろう。天を仰ぐ。
 羽生九段のあんな悲痛な顔は初めて見た。

 
 山崎陣に迫りつつ、玉の逃げ道を作る勝利を確定させた△2五桂を取られて詰む……何という皮肉!

 終局後、山崎八段の勝利を讃える拍手はあったものの、会場は水を打ったような静寂。
「いや、ひどかったです」という羽生九段の第一声。


 「好事 魔多し」……そんな言葉が浮かんだのではないだろうか?
 この将棋、羽生九段が冴えに冴えた。緩急、硬軟、巧剛織り交ぜ、山崎八段を翻弄した。
 それだけに、「好事 魔多し」……上手く行き過ぎての油断
 棋士なら、大逆転負けをくらう経験は多い。羽生九段とて、何度も経験している。一手詰を見逃しての大頓死。必勝の局面から疑問手を連発しての大逆転負けもある。
 しかし、おそらく、油断が引き起こした頓死というのはなかったはずだ。
 悔いと、そんな自分を恥じる……そんな感情が滲み出た表情だった。


 それにしても、司会進行の女性の透き通ったきれいな声で
「それでは対局を振り返っていただきましょう」
 大大逆転……あり得ないほどの酷い負け方だったとは、露ほども思っていないのだろう。
《滞りなく進行する》という務めを全力で果たす………結果的に、容赦ない仕打ちだった


 勝利した山崎八段も、なんと話したらよいか分からず、大困惑。

 それなら……△5九とと寄られた時、▲同玉の一手に、△7九龍と王手で角をポロリと取られてしまうのが見えているので、投げ時だったはず(これ以上指しても、ひどくなるだけ)。
 なんで、投げなかったんだよ!……(山崎八段に責任はないです)
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将棋世界7月号のインタビュー記事…からの “和田はな女流1級考” 「その4」

2023-06-23 21:26:52 | 将棋
“和田はな女流1級考” 「その1」「その2」「その3」の続きです。

 和田はな女流1級の将棋を7局並べてみての印象は……「将棋がこなれている」

「こなれる」の意味は、国語辞典(旺文社)によると
①砕けて粉になる。
②食物が消化する。
③まざって調和する。よく熟して味が出る。
④熟練して身につく。円熟する。


 将棋の場合、④の意味であるが、③でも良いような気もする。①も良いかもしれない(粉になった後、再生すれば)
 上から目線になって申し訳ないが、和田女流1級の場合、若いこともあり、熟練、円熟の域までは達していないと思うが、《こういう将棋はこう指すもの》という指し口が多々見られ、戦い方のコツを身につけているように感じた。
 センスもあり、よく研究し、稽古も積んでいるのだろう。精神的にも強く、指し手も柔軟で粘り強い…

   …………《勝ち星が上がらないのが不思議》だ。なぜか?


木村女流1級戦や他の6局でも感じたが、
《不退転の決意が感じられない》
《”読み切れず、妥協する》ことが多く、《踏み込めない》
  具体的には、「中盤では切り合いを避け、争点に歩を打って局地的に勢力を確保する」「ギリギリの一手勝ちを読み切らず、“王手○取り”で相手の攻め駒を抜く」という妥協策を採ることが多い。


【ここからは、更に私の憶測(妄想に近いかも)】
 将棋世界のインタビュー記事を読んでの印象は
・才能があり(←将棋だけではない)、適応力があり、ソツなくこなすことができる。
・(才能があるが故)将棋に身を削るほどの修練、慟哭の経験はない(『将棋世界』のインタビュー記事の踏み込みが弱かっただけで、大変な思いをしているのかもしれないが)
・(多才であるが)将棋一筋ではない
……“将棋一筋でなければならない”と主張しているわけではなく、いろいろなことを学び、チャレンジする豊かな人生も一局であろう。ただ、「では、何故、女流棋士になったのか?」という余計なお世話的疑問は感じる。

 更に、“余計なお世話的戯言(ざれごと)を言わせていただくと
①将棋のレベル(特に終盤)をもう少し上げれば、将棋が長くなっても“結局は勝つ”ことができる
②(①の道ではなく)中盤でもっと踏み込む


 もっと、勝てると思う。
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将棋世界7月号のインタビュー記事…からの “和田はな女流1級考” 「その3」

2023-06-15 19:26:00 | 将棋
“和田はな女流1級考” 「その1」「その2」の続きです。


 図より、和田女流1級は▲5三と寄。自然な一着だが、この局面に於いては速度が足りなかった。
 つまり、次に▲6二と寄としても、△8一玉と普通に逃げられて、すぐには攻めが届かない。
 直前に▲8二金(第6図)と打って清算した為、

飛角の壁形が解消してしまっている。後手の木村女流1級が▲8二金に△同角と応じたのも、第7図となれば、先手から速い追撃はないと判断したからだろう。

 しかし、第7図では▲6二とがあった。△同玉に▲5三角と打てば、角が7一まで利いていて、しかも、次に▲3五角行とすれば、角2枚の追撃隊は超速である。おまけに、6四の金取りにもなっている。
 同じような狙いで、第7図で▲5三角と打つ手もあるが、この手には△6三金打と頑張る手があるので、▲6二とより劣る。

 ところが、木村女流1級は△6一歩。《守る必要がないのに、守った》という意味で疑問手。
 しかも、▲6一とと取る手がある。

 第7.5図に比べると変化図2は、手番は同じ後手ではあるが、先手の持ち歩が1枚増え、さらにと金が後手玉に近づいている(▲6二と上がる△8一玉に▲7一とが生じている)
 なので、▲6一とに△6一同玉とするしかないだろう。これは大きな利かしである。
 ここで▲6三歩とすれば形勢はともかく、先手が勝ちやすそう。

 ▲6三歩では、▲7五角や▲4六角と角を活用する手の方が良いかもしれない。

 実戦は、▲6一とではなく▲3五角。ここでの▲3五角は攻め駒が重複しているように感じる。
 攻め合う手もありそうだが、木村は△7四銀上と、抜け穴を開ける。(受けが好きだなあ)
 和田女流1級は▲7五歩。銀を上ずらせ、6三に利かなくさせる手筋だが、木村女流1級はここで一転、△3八飛。角取りと同時に先手玉への足掛かりを作る。
 和田女流も、飛車が自陣から遠のくので、角を取られるのは構わないと、▲7四歩と銀を取る。
 木村女流も手抜きで△7六桂! 現在7三の桂取りになっているのも放置、只で取れる角にも目もくれない。一気に、スパークだ。
 △7六桂は詰めろ。▲7三歩成と王手で桂を取られても、集中放火されそうな6二から逸れるのが大きい。

 和田女流は一旦、▲6三銀と攻めるが……

……先手の攻め駒の重複感が半端ない。実際、△8一玉とかわされてみると、渋滞感がさらに強まった。

 以下は、順調に木村女流1級が勝ち切った。


 本局を含めて7局、和田女流1級の将棋を並べた。
 実は、今まで持っていたモノとは、違う印象を持った。
 それについては「その4」で。
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将棋世界7月号のインタビュー記事…からの “和田はな女流1級考” 「その2」

2023-06-14 16:23:33 | 将棋
“和田はな女流1級考” 「その1」の続きです。

 「その1」で勿体ぶった終わり方をしたが、和田女流1級の次の一手は

 ▲6一金!
 △同玉に▲2三飛成で飛車桂両取り!
 これで決まったかに見えたが、△7二飛で一応受かっている。

 以下(▲4六角△5五歩を決めるか微妙だが)、▲6二歩△同角▲6三歩△7一角(変化図)の順が有力だが、寄せ切れるかギリギリの攻防が続きそう。

 ここで、①▲3三歩成、②▲1一龍と攻めに厚みを加える手が有力だが、後手も△5二玉と上部に逃れようとする手があり、難解。また、③▲4一龍と上部脱出を許さない手もあるが、これには△4二金と頑張る手があり、もう、訳が分からない(笑)

 実戦で和田女流1級は△7二飛(ギリギリ図)に対し、▲5三歩と垂らす。
 この手は少し緩いので、△7六桂と攻めに転じたいところだが(これで後手が良いと言う訳ではなく、ほぼ互角か)、△2二歩▲4三龍△4二金(第4図)と強く守る実戦の順は、自然の流れかもしれない。


 第4図では、▲6二歩という巧手がある。
 △6二同角は▲5二龍と金が取られてしまう。また、△5一玉とかわすのは大きな利かされで、▲4四歩や▲3三歩成で先手の攻めを振りほどくのは大変そう。
 そこで、△6二同飛と応じることになりそうだが、▲5二歩成△同金▲7三龍で桂が取られてしまう(それでも、以下△7二銀▲3三龍に△7六桂と絡めば、先手の気分ほど簡単ではない。

 実戦の▲3三歩成もなかなかの手で、以下△4三金▲同歩成と進んだ第5図も、後手が勝つのは大変そうだ。

 △5一歩と受けても、▲3五角と援軍が来る。この角が働いてきては、後手が勝つ気はしない。(実際は、△6二金と根性の入った受けがあり、簡単ではない)
 後手・木村女流1級は△6二玉。上記の変化は勝つのが困難と考え、玉の脱出に勝機を見出すのは、プロの第一感であろう。
 ただし、△6二玉には、▲5二歩成△6三玉▲5三と寄△7四玉▲6二と寄と普通に指せば先手優勢だ。

 しかし、実戦は▲8二金!

 後手の飛車も角も、いない方が良いような存在なので、金と1手を掛けてまで指す手ではない。
 おそらく、先手の狙いは飛角ではなく、8三の銀。▲8二金に△7六桂の攻め合いならば、▲8三金が次に▲5二歩成△6三玉▲5三と寄(引)△7四玉▲8四金までの詰めろになる。
 ただし、▲8二金には、△7六桂ではなく、詰めろに貢献する角に当たりを掛けつつ先手玉に迫る△5八飛で、難解な形勢。(▲8三金なら△5七飛成と角を抜いておく)

 実戦は、△8二同角。以下▲同桂成△同飛▲5二歩成△7二玉と進む。

 図では、先手の攻めが一段落しているように見える。
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将棋世界7月号のインタビュー記事…からの “和田はな女流1級考” 「その1」

2023-06-13 21:51:02 | 将棋

 先月、「最近の『将棋世界』は、面白さが減った」という記事を書いた。
 7月号も、「俊英棋士インタビュー vol.9 古賀悠聖五段」(12ページ)、「女流棋士たちのエモーション vol.8 和田はな女流1級」(11ページ)とインタビュー記事が並ぶ。

 男性棋士、女性棋士を交互にしてほしいと思う。それが駄目なら、誌の中盤以降に配置してほしい。(順番に読まないと気が済まないタチなので、なかなかページが進まない)
 それはともかく、今月号の人選には、疑問が少々……。新人や若手棋士は、これまで紹介されていないので、人選としては正しいと思う。
 しかし、和田はな女流1級はどうなのか?
 2020年9月に女流2級でプロ入り。21年に1級に昇級と順調のようだが、>2020年 5勝8敗 .385、21年 5勝14敗 .263、22年 8勝15敗 .347、23年 1勝4敗 .250
 女流棋士考 その12「女流棋士の濫造?⑧ 新人、若手~中堅棋士」で調べた時、プロ入り後2022年度終了までの勝率(18勝37敗 .327)は下から4番目だった(ベテラン棋士は除く)

 読みたくなければ、読まなければいいだけの話だが、約240ページで870円の11ページ…約4.6%の40円が惜しいし、性格的に全部読まないと気が済まない……


 埼玉県和光市出身で、姉のあきさんも女流棋士(女流初段)。中学2年生から約3年間はアメリカ・ヒューストンで住む。アマチュア時代の戦歴は、2013年 小学生女子名人戦、2014年 女流アマ名人戦、2018年 全米将棋選手権、2019年3月 全国高等学校将棋女子選抜大会で優勝。早稲田大学社会科学部に在籍(推薦入学)、法律、政治、経済などいろいろ学んでいるそうだ。
 将棋の勉強法、姉や同世代の女流棋士への意識、長年の巨人ファンとかその他の趣味、”白瀧あゆみ杯”優勝について……など、かなり充実した経歴や現在だと感じた。

 でも、《プロ入り後の成績を思うと、人生を謳歌していて良いの?》と余計な心配をしてしまう(順風ライフへのヤッカミもある)
 いや、そもそも、インタビュアー:内田晶氏、《こんな表面だけの通り一遍のインタビューで良いのか?》……《現在の成績に甘んじている和田女流1級の鬱積したモノを晒し出せ》とは言わないが、その一端を垣間見せてほしい。
 せめて、「これまで一番悔しかったこと(将棋や指し手)」ぐらいは訊いて欲しい。そういう重いモノ扱いたくないというのなら、「今まで一番、心が動いた一手」でも良い。

 今回、彼女の低勝率による先入観で、インタビュー記事を読んでしまったので、実際の和田女流一級の将棋を観てみようと思った。

観たのは
女流順位戦和田はな 女流1級 -木村朱里女流1級( ヒューリック杯第3期白玲戦 女流順位戦D級:2023年6月12日)。(他に6局で全7局)

 和田女流1級の将棋の特徴のひとつが、手数が長いこと。
 押したり引いたりが好きなのか、今一つ踏み込めないのか?
 それに関連して、勢力争いの地点に歩を打って《取りあえず制圧》……反面、《抗争地点に歩を打ち、自分の駒の進路を埋めてしまっているので、捌けない》………

 この将棋も、まだ中盤の第1図で既に107手。
 先手玉7七の歩も楔はあるものの、一応、穴熊。後手陣は攻略はされていないものの、金銀が上ずらされている。先手の1歩損だが、2歩を持っているし、大きなマイナス要素ではない。
 形勢は互角に近いかもしれないが、先手が勝ちやすそうだ。
 数手進み、第2図。

 叩きたくなる歩打ちだが、ここでは普通に▲3四歩、あるいは、捻って▲5三歩と打ちたい。
 私が後手なら、▲2三歩(第2図)には、”これ幸い”と△5二飛と飛車を転回する。まあ、直後に▲5三歩と叩かれる手があり、簡単ではないが、この2三の歩は、先手の飛車の進路を塞いでおり、飛車を回られると、“しまった!”と思うのではないだろうか。
 ところが、後手は△2三同飛。5二へ展開するのとは逆に、飛車の可動域が狭くなり、感覚的には受け入れにくい。
 “水匠”その他の人間離れした超人が視ると、私の大局観や感覚など、全く関係ない形勢判断をするかもしれないが、この2手のやり取りは、賛同できない。

 数手進み、第3図。

 ▲3四歩の叩きに、△3二飛と逃げたところである。
 ここで、和田女流1級にかっこいい手が出た。

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