英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

竜王戦第七局⑤

2009-01-06 22:23:34 | 将棋

 第13図では、▲2二銀△同銀▲同歩成△同玉▲2三銀からの寄せがあったらしい。また、図より▲4八飛も有力で、以下△5七銀には▲5五角とかわす手が詰めろとなる。
 しかし、羽生名人は第13図以下▲6一飛と打ち△4一香▲5四銀成ともたれる手順を選ぶ。だが、これは明らかに変調で、△3五角(第14図)とぶつけられ、角交換が必須となってしまった。後手の遊んでいた角が先手の要の角と交換になるに至り、ついに逆転。

 羽生名人もBSの『囲碁将棋ジャーナル』で、▲6一飛以下の手順はおかしかったと認めている。ただ、▲2二銀や▲4八飛の方がよかったと言いつつも、まだまだ難しいと述べている。例えば、▲4八飛の場合、以下△5七銀▲5五角と進んだ時に△4四角と詰めろを防がれると、先手も忙しそうだ。

 羽生名人が誤った原因は2つあると私は考える。

 一つ目は、△4二金の受けの勝負手に▲6二金と飛車を取りにいっってからのやり取りが、先手の効率が悪すぎて流石の羽生名人の大局観に狂いが生じたのではないだろうか?
 実際は、最善手(▲6二金では▲6四角だった)を逃したものの、「後手の飛車を取ってしまえばよくなる」という方向性は間違っておらず、また、途中の▲6六金のしぶとい好手もあって、まだ先手に分のある形勢だったようだ。

 二つ目は、渡辺竜王の新手△3三銀以降、羽生名人がずっと将棋を作ってきていた。ジャングルやサバンナや砂漠などの未開の地を、羽生名人が切り開いていき、渡辺竜王は追従して割と自然に対応してきただけの感がある。
 全開で飛ばしてきて、リードを奪ったものの、その差は思いのほか開かず、ガソリンは減り足回りも傷み始めた。焦りと疲れ、それが羽生名人の大局観を狂わせたのだ。

 ここまで書いて、私は愕然とした。そう、いつもと反対なのだ。対佐藤棋王や久保八段戦などでは、佐藤棋王が新構想で挑んだり、久保八段が軽快に捌いたりするのに対して、羽生名人は素直に追従したり、相手の言い分を聞いたりしている。それでも、互角付近で踏みとどまり、最後は終盤の伸びで相手を差し切って勝つ。
 それが、本局では逆の立場ではないか。その理由として、渡辺竜王の新手△3三銀、そして、渡辺竜王の終盤の強さを肌で感じていたことが考えられる。

 第14図以下、▲6五飛成△4六角▲同歩△8七角(第15図)と進む。

△8七角では△6九銀と捨てて玉を下段に落としたほうが、より確実だったらしいが、本譜の王手龍取りでも後手の勝ちには変わりはなさそうだ。この辺り、私は相当哀れな顔をしていたはずだ。
コメント
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