英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

羽生王座失冠に思う その6

2017-10-27 23:05:33 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」 の続きです。


 第6図は、一見、“やられ形”で、羽生王座も悲観していたようだ。局後の感想では「△4五銀(第4図)と桂を取られて困ってますね。▲4五同銀だと飛車を回られて(△8六飛~△7六飛~△4六飛)しまうし」と羽生。△4五銀に▲同銀△8六飛▲8七歩△7六飛▲7七歩△4六飛▲2三銀△3一金▲3二銀△同金▲同銀成△同玉で「余されてちゃうかな。でも△3二同玉に▲5五角と打つ順をやるんだったか」と述べている。

 第4図で困っており、さらに、4図では▲4五同銀と指すべきだったとさえ言っている。

 しかし、第6図は▲8四角でほぼ互角だった (「その3」 参照)。
 羽生王座は、何故、悲観したのだろうか?
 それは第6図が中村六段の研究の網の中であると感じていたからである。
 中村六段の着手の仕方や面持ちからも研究範囲であると伝わってきたと思われるが、何より短時間で指し進めてきていることが、中村六段の思惑通りの局面に進んでいることを物語っている。(25日のNHKの『シブ五時』にゲスト出演した中村新王座も「第4局は研究にハマった」と語っていた)

 こういう展開は本局だけではない。

 参考図は今期の竜王戦挑戦者決定トーナメント準々決勝の対村山七段戦。
 横歩取り戦で先手の羽生三冠が“佐々木勇気流”を採用。これに対し後手の村山七段が飛車交換を挑んだ。
 参考図1は飛車交換に応じた直後、▲3八銀と後手の飛車打ちに備えたのにも関わらず2八に飛車を打ち込んだところ。以下▲2七歩△2六歩▲3九金△2七歩成▲2八金△同と△4九銀△3九と▲5八銀△3八と▲4五桂△8八角成▲同銀△4八と(参考図2)と進んだ。

 「▲3八銀とかやってる将棋じゃなかったのかもしれませんね」
 「そうか、これ飛車打たれて悪いんですかね? なんか全然、途中から一本道になっちゃって」「いきなり打たれるとは夢にも思ってなくて」
 と局後の羽生三冠の感想。
 村山七段は研究会で経験済みで参考図2まで通算の考慮時間は23分(羽生三冠は1時間23分)。

 上記のように、参考図2の局面を悲観していたが、実際はほぼ互角の形勢だった。実戦はこの後、羽生三冠はほぼ最善手を刺し続け、形勢不明を維持したが、参考図2から27手後に羽生三冠が誤り、敗勢に陥った(この後、村山7段が誤り、羽生三冠の勝ち)。
 中村戦でも村山戦でも相手の研究の網の中に入り込んでも互角を維持するのは流石の羽生三冠であるが、数年前の羽生三冠なら形勢判断を誤ることはなかったのではないだろうか?
 確かに第6図、参考図2は互角でも、羽生三冠の指し手が難しく、形勢が悲観的なものになりやすいということはあるが、原因はそれだけではない。

 その理由、原因を語るには、時間を遡らなければならない。
コメント (4)
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