英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2017マイナビ女子オープン 本戦1回戦 清水女流六段-貞升女流初段

2017-10-09 22:09:16 | 将棋
(書きたい記事がたくさんあり、どれから書いていいのか分からない状態です。
とにかく、思いついたものから書いていきます。将棋に関連では、羽生二冠関連がたくさんあるのですが、書き始めると終わりそうにないので、1回で終了できそうなものから書いていきます。この将棋に関しては、図面だけ作ってあったというのが一番の選択理由です)


 この将棋が指されたのは、9月29日でこの日までの今年度の成績は7勝8敗(0.467)。彼女にとっては相当不本意な成績である。スランプかもしれないが、昨年度成績が12勝15敗(0.444)なので、“一時的なもの”とは言い切れない状況だ。要因として
 ①女流棋士の全体的なレベルアップ
 ②清水女流六段の棋力の衰え
 ③精神的な要素や、雑務・公務で将棋や研究に集中できない
等が考えられるが、③関連で連盟理事の務めによるものが多い気がする。(理事着任は今年の5月からではあるが、女流棋士会会長に2015年から就いている)


 対戦成績は清水4勝、貞升2勝。前期の1回戦でも顔が合い、この時は貞升女流初段が激戦を制している。
 両者ともに居飛車党。本局は▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△4二銀に先手の清水女流六段が▲4六歩と右四間飛車の構え。清水女流六段h右四間飛車の採用率は比較的高い。これに対して貞升女流初段は△3二金~△4三銀~△3三角と迎え撃つ。予期していたのか、考慮時間(通計)は7分。
 清水女流六段も予定の指し手なのだろう、△3三角に▲4八飛と右四間に飛車を構えた時点で通計5分。

 さて、4筋攻勢の構えを一応整えた▲4八飛に対し、貞升女流初段は△8四歩。

 この手は後手の飛車を攻めに使うのに必須の手であるが、もう一手△8五歩と指さないと先手陣には何の脅威もない。清水女流六段は仕掛けのチャンスと見たのだろう、3分の考慮で▲4五歩と仕掛ける。以下△4五同歩▲同銀で第2図。

 4筋に先手の飛角銀が集中し迫力十分だが、貞升女流初段も△8八角成▲同銀△3三桂と反発。


 思うに、貞升女流初段は第1図~第3図の仕掛け~反発を想定・研究していたのではないだろうか?△4五同歩~△3三桂の反発はプロならば当然の反発なので小考での着手は不自然ではない。しかし、仕掛けを誘発した△8四歩を1分で指しているのは、仕掛けを誘ったと思えてしまう。(貞升女流初段は序盤に無頓着なタイプではない)

 さて、第3図で▲5六銀と引き上げれば一局の将棋だったらしいが、清水女流六段は16分の考慮で▲4四歩を決断。これに対し△5四銀は▲同銀△同歩▲4三歩成で先手勝勢。また△5二銀も▲3四銀で先手大優勢なのだが、当然、△4五桂と反発(7分の考慮)。
 これに対し▲4三歩成△5七桂成▲3二とが後手にとって怖い順だが、この分かれは後手充分。清水女流六段も先の▲4四歩の際の16分の考慮で無理と読んでいたのか4分の考慮で▲4五同飛。
 振り上げた拳(▲4五歩~▲4五同銀)を引っ込めず、意地で振り下ろすことにした(▲4四歩)。▲4五同飛では妥協の手順で思わしくない局勢だが、何とかなるだろうとの見通しを立てたのだろう。
 清水女流六段はこういう手順が多い。昨年の一局も端攻めをしながら、強く応じられて銀を取らず、端を逆襲されていた。


 しかし、当たりになっていた銀を△5四銀と飛車当たりの逆先でかわされるのでは辛い。
 ▲4八飛と後手を引き、△2七角と打ち込まれてしまった。銀桂交換の駒損もあり、先手苦戦だ。


 清水女流六段は▲3六角と後手の馬作りを阻止しようとしたが、△3六同角成▲同歩に再度△2七角と打ち込まれ、△3六角成を受ける▲5八角に△4七歩の歩の叩きが痛かった。▲4七同飛には△3八銀が厳しいので▲4七同角と応じたが、△4六銀で後手の快調の攻めが続く。
 清水女流六段は▲5八金右と耐えるが、あまりにも辛い。


 貞升女流初段は△3五歩と追撃を緩めない。
 清水女流六段はここで▲6六桂と紛れを求める。


 銀が逃げれば▲6五角と逃げることができ、▲5四桂と銀を取れれば、その銀を5三や4三に打つ攻め味も生じ、銀を受けに使うこともできる。
 しかし、銀取りにかまわず、△3六歩が厳しい攻めで銀を取る余裕を与えない。
 仕方がない▲3八歩に△3七歩成▲同歩を決め、△4七銀成▲同金と角を取ってから△5五銀とかわす。利かすだけ利かし、取るものを取っておいて、▲6六桂を空振りにする△5五銀。しかも、好きな時に△6六銀と桂を補充できる。何という好手順!




 以下は、清水女流六段の辛い防戦も報われず、敗局に至る……
 局面図だけ掲示するが、清水女流六段の苦しさを感じることができるはず。




 清水女流六段にとって、辛いだけの将棋となってしまった。
 勢いだけで指してしまい、苦境に陥ってしまう将棋を散見するが、気のせいだろうか?


 ところで、気にかかる局面がある。それが第5図。


 実戦は▲3六角と打ったが、▲3八角はなかったのだろうか?

 これに対し△3八同角成▲同金は、先手陣の隙を失くさせるだけなので、△4五角成と指すしかないと思うが、これを▲4五同飛と切り、△同銀に▲2一角がけっこういやらしい。


 次の▲4三歩成を受けなければならないが、△4二歩や△5二金だと3二の金がタダになってしまう。
 なので、△5四銀(あるいは△5四銀打)と受けることになるが、▲3二角成△同飛▲4三金がイモ筋で一見切れ筋だが、以下△8二飛(△1二飛)に▲5三金が銀取りの先で▲4三歩成とと金が出来そう。
 ▲5三金が銀取りにならないように△5四銀では△5四銀打も考えられるが、銀を打つのは勿体ない気もするし、▲3二角成と角を切らずに▲8三桂と打つ手が嫌味。7一の銀を△6二銀などと逃げると、飛車の横利きが消えて3二の金が浮いてしまう。
 さらに▲9一桂成とする手も有効そう。

 先手にとって、本譜より面白いのではないだろうか?
コメント
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