「その1」、「その2」の続きです。
少し間が空いてしまったので、復習です。
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≪超急戦辞さず≫と▲2六飛と寄った羽生竜王に対し、
≪じゃあ、行きますよ≫と佐藤天名人誘いに応じ、角交換から△4四角と打った第2図。
「▲2一飛成は△8八角成▲同金△同飛成で先手が悪い」と見られていたが、△8八角成に▲9五角が際どい返し技で、以下△8九馬▲8四角△7八馬(第4図)と進み、一応一段落(▲2一飛成では▲2四飛と婉曲的に指すのも有力)。
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激しい振り替わりだったが、▲飛歩対△金銀と駒の損得は微妙。一般的には「“大駒1枚”と“金駒2枚”は金駒2枚の方が方が価値が高い」とされているが、既に終盤で敵陣への飛車の打ち込む筋が見えるので、一概に後手の駒得とは言えない。
手番は先手だが、玉の危険度は先手が高いので、0.5手分の先攻権があるかどうか……総じて、優劣不明の局面と言って良い…だろう……たぶん。≪復習、終わり≫
第4図では▲2四桂が考えられる。図の2手前の中継解説では「▲8四角△7八馬まで変化の余地がない。先手が手番を生かしてどう迫るか。▲2四桂で金が取れるものの、△4一金が粘り強いので難しい」とあった。
さらに、局後の感想として「▲2四桂は、△4一金▲6六角△4二金寄▲1一角成△3三歩▲1二馬が並べられた。「これも考えたほうがよかった」と羽生」と紹介されている。
また、『将棋世界6月号』の観戦記(小暮克洋氏)には、▲2四桂に対して
「①△6八金は▲4八玉△6九馬▲3二桂成△3五桂▲3八銀△5八銀▲3一成桂△4九銀成▲同玉△5八馬▲3九玉△4八金▲2八玉△3八金▲1八玉△2七歩に▲3九銀が好手で先手に分がありそう
②△2二金打▲1一龍△5五桂や③△4一金▲6六角△2七桂といった進行が一例で、先後どちらが有利なのか難しい」
とある。
実戦では▲8二歩△8三歩と進む。
この2手に関する両対局者の思惑が観戦記には記されていて、その内容が実に興味深い。
≪ ▲8二歩は△同銀なら、▲7四桂△7二玉▲8二桂成△同玉▲8三歩△同玉▲7五角で玉の安全度の違いを主張する腹積もり。
そもそも羽生は事前準備の段階で、△8四飛に▲2六飛以下の順(本譜の激しい展開)はこの▲8二歩がなかなかの手でやれると踏んでいたそうだ。だから▲2一飛成に代えて▲2四飛も、手としてはあり得ると認識していたものの食指が動く対象ではなかったということなのである。
ちなみに▲2四桂との善悪については「後手玉が5二玉型ならこの桂打ちが有効だと思いますが、6二玉型なので▲8二歩が自然だと思います」……。1マス遠い玉に対しては、▲2四桂は本筋ではないとの見解だった≫
さらに
≪ ▲8二歩に対する△8三歩は自玉を狭めてやや違和感がある手ではあっても、背に腹は代えられない。
「十分な精査は出来ていなかったものの、一連の手順は▲2六飛からの読み筋だった」と佐藤は明かす。
羽生も佐藤も、△8三歩の局面が激流の先の共通のテーマとして意識されていたことになる≫
両者とも第4図は想定内で、▲8三歩以下の進行も≪指せる≫または≪指せないことはない≫であったようだ。
△8三歩に▲7五角と引く手も有力だったが、羽生竜王は▲8一歩成と踏み込み、激しい流れは留まらない。
少し間が空いてしまったので、復習です。
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≪超急戦辞さず≫と▲2六飛と寄った羽生竜王に対し、
≪じゃあ、行きますよ≫と佐藤天名人誘いに応じ、角交換から△4四角と打った第2図。
「▲2一飛成は△8八角成▲同金△同飛成で先手が悪い」と見られていたが、△8八角成に▲9五角が際どい返し技で、以下△8九馬▲8四角△7八馬(第4図)と進み、一応一段落(▲2一飛成では▲2四飛と婉曲的に指すのも有力)。
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激しい振り替わりだったが、▲飛歩対△金銀と駒の損得は微妙。一般的には「“大駒1枚”と“金駒2枚”は金駒2枚の方が方が価値が高い」とされているが、既に終盤で敵陣への飛車の打ち込む筋が見えるので、一概に後手の駒得とは言えない。
手番は先手だが、玉の危険度は先手が高いので、0.5手分の先攻権があるかどうか……総じて、優劣不明の局面と言って良い…だろう……たぶん。≪復習、終わり≫
第4図では▲2四桂が考えられる。図の2手前の中継解説では「▲8四角△7八馬まで変化の余地がない。先手が手番を生かしてどう迫るか。▲2四桂で金が取れるものの、△4一金が粘り強いので難しい」とあった。
さらに、局後の感想として「▲2四桂は、△4一金▲6六角△4二金寄▲1一角成△3三歩▲1二馬が並べられた。「これも考えたほうがよかった」と羽生」と紹介されている。
また、『将棋世界6月号』の観戦記(小暮克洋氏)には、▲2四桂に対して
「①△6八金は▲4八玉△6九馬▲3二桂成△3五桂▲3八銀△5八銀▲3一成桂△4九銀成▲同玉△5八馬▲3九玉△4八金▲2八玉△3八金▲1八玉△2七歩に▲3九銀が好手で先手に分がありそう
②△2二金打▲1一龍△5五桂や③△4一金▲6六角△2七桂といった進行が一例で、先後どちらが有利なのか難しい」
とある。
実戦では▲8二歩△8三歩と進む。
この2手に関する両対局者の思惑が観戦記には記されていて、その内容が実に興味深い。
≪ ▲8二歩は△同銀なら、▲7四桂△7二玉▲8二桂成△同玉▲8三歩△同玉▲7五角で玉の安全度の違いを主張する腹積もり。
そもそも羽生は事前準備の段階で、△8四飛に▲2六飛以下の順(本譜の激しい展開)はこの▲8二歩がなかなかの手でやれると踏んでいたそうだ。だから▲2一飛成に代えて▲2四飛も、手としてはあり得ると認識していたものの食指が動く対象ではなかったということなのである。
ちなみに▲2四桂との善悪については「後手玉が5二玉型ならこの桂打ちが有効だと思いますが、6二玉型なので▲8二歩が自然だと思います」……。1マス遠い玉に対しては、▲2四桂は本筋ではないとの見解だった≫
さらに
≪ ▲8二歩に対する△8三歩は自玉を狭めてやや違和感がある手ではあっても、背に腹は代えられない。
「十分な精査は出来ていなかったものの、一連の手順は▲2六飛からの読み筋だった」と佐藤は明かす。
羽生も佐藤も、△8三歩の局面が激流の先の共通のテーマとして意識されていたことになる≫
両者とも第4図は想定内で、▲8三歩以下の進行も≪指せる≫または≪指せないことはない≫であったようだ。
△8三歩に▲7五角と引く手も有力だったが、羽生竜王は▲8一歩成と踏み込み、激しい流れは留まらない。