英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

公平じゃないなあ……2020朝日杯将棋オープン戦2次予選 羽生九段-野月八段

2020-12-11 16:15:54 | 将棋
(私の執筆エネルギーは悔しさだなあ)

《不公平な対局手合いのつけ方》
 この羽生九段-野月八段戦は二次予選の2回戦。ともに1回戦を勝ち、これに勝てば本戦トーナメント進出となる一局。
 しかし、この対局に臨む二人の状況は公平ではなかった。羽生九段は同日の午後2時から1回戦の対八代七段戦を指している。(野月八段は1回戦の対丸山九段戦は11月26日に行われている)
 持ち時間は40分なので、対局時間としては1時間41分だったが、持ち時間が短いのでより集中が必要となる。1分将棋になったので、消耗も大きかったはずだ。
 対する野月八段は1回戦と2回戦は中9日。当然、疲労は残らないし、対羽生戦の予想戦型を絞り、研究対策も立てられる。

 ……不公平だ。



 将棋は力戦形となった。(野月八段の想定した局面になったかは不明)

 互いに相手の攻めには最小限の応手しか指さず、敵陣に切りかかった。
 羽生九段は▲5五角(第2図)と打ち、△6四角に▲3三角成と角を切り、△同桂に▲2四飛と2筋突破を図ったが、これが芳しくなかったようだ。第3図の野月八段の△7七歩が厳しい反撃だった。

 以下、羽生九段は飛車を成り込んだものの、角金交換の駒損に見合う成果とは言えず、△7七歩の叩きに銀で応じても桂で応じても先手陣は弱体化してしまう。1歩で成果を上げられてしまうのも痛い。(▲5五角では▲2四銀と単純に攻めた方がよかったようだ)
 羽生九段は▲7七同桂と取り、△7六歩に▲6五桂と跳ね攻め味を見せたが、7七の地点が薄くなり、野月八段の猛攻を受けることとなった。


 図に至る手順や細かい変化は省略するが、羽生九段は一気に潰されそうな変化がちらつくギリギリの受けで持ちこたえる。
 第5図は、直前に後手飛車の成り込みを甘受しておき、▲7八金△8九龍▲7九金と飛車当たりで受け、龍の動向を聞いた手。
 野月八段は△8五龍と引き上げたが、△9九竜▲8八銀の変化を選んだほうが良かったようだ。

 若干の小康を得た羽生九段が攻めに転ずるかと思えたが、▲5九玉!(第6図)

 玉の早逃げだが、真の意味は△7六歩に▲6八銀と銀の引場所を作るというもの。善悪は不明だが、羽生九段らしい柔らかい手だ。
 野月八段は▲6八銀とされ、△7七歩成とやり直し(反省料として一歩損)。▲7七同銀に△7八歩と改めて攻め直すが、徐々に羽生九段が盛り返していった。


 第7図は後手の攻め駒を呼び込む手。狙いは7四の銀の利きを外しての▲7四桂の王手龍取りだが、△8九龍と王手で逃げられるので、後の展開に見通しが立たないとできない一着。
 以下、再び野月八段の猛攻を受けることになったが、その攻めを少し余している気配。



 第10図の△5五角は眠っていた6四の角を繰り出した一着だが、それでも野月八段の攻めは息切れ気味(追及の足が遠のいた)。
 対して▲6六桂とその角の利きを遮断しておけば優位を確立できたが、羽生九段の棋風からすると▲8七金と後手の桂を外すような気がした。△7七角成と切ってくる手も避けていて好便の一着に見えるが、代わりに▲9九角成と銀を取った手が詰めろになってしまった。
 と言っても、▲7四桂や▲8二飛と指せばまだ先手が有利だ。
 ABEMA画面では羽生九段が飛車を掴んだので▲8二飛を選択したのか……と思ったが、飛車が打たれた地点は8二ではなく8三だった……


…………………………………
……………………………………………頓死。



 この頓死で、また「羽生、弱っ!」とか「衰えた」とか言われそうだが、時間切迫の中、責め潰されずに持ちこたえたのは羽生九段ならではの強さである。
 痛恨の頓死は、苦しい守勢で消耗してしまったせいだろう。ただ、玉の危険を察知できなかったというのは、全盛期の羽生九段には考えられないことだ。
 負け惜しみを言わせていただくなら、これが2局目でなかったら勝ち切ったであろう。
コメント (2)
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