英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

相棒 season20 元日SP 第11話「二人」 【追記】太田愛氏の脚本には存在しないシーンが放送された件

2022-01-06 17:15:16 | ドラマ・映画
まず、本記事のタイトルの状況の説明する為、太田愛氏のブログ『脚本家/小説家・太田愛のブログ』の記事を紹介(引用)させてください。

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「相棒20元日SPについて(視聴を終えた方々へ)」(2022-01-01 23:14:00)
右京さんと亘さん、そして豪華なゲストの皆様の顔合わせで、お正月らしい、華やかなSPとなりました。脚本が撮影現場でかわっていくことはよるあることで、今回も楽しいアドリブ満載でした。

ただ、それとは全く別に一点だけ脚本家の立場から申し上げておきたいことがございます。

右京さんと亘さんが、鉄道会社の子会社であるデイリーハピネス本社で、プラカードを掲げた人々に取り囲まれるというシーンは脚本では存在しませんでした。

あの場面は、デイリーハピネス本社の男性平社員二名が、駅売店の店員さんたちが裁判に訴えた経緯を、思いを込めて語るシーンでした。現実にもよくあることですが、デイリーハピネスは親会社の鉄道会社の天下り先で、幹部職員は役員として五十代で入社し、三、四年で再び退職金を得て辞めていく。その一方で、ワンオペで水分を取るのもひかえて働き、それでもいつも笑顔で「いってらっしゃい」と言ってくれる駅売店のおばさんたちは、非正規社員というだけで、正社員と同じ仕事をしても基本給は低いまま、退職金もゼロ。しかも店員の大半が非正規社員という状況の中、子会社の平社員達も、裁判に踏み切った店舗のおばさんたちに肩入れし、大いに応援しているという場面でした。

同一労働をする被雇用者の間に不合理なほどの待遇の格差があってはならないという法律が出来ても、会社に勤めながら声を上げるのは大変に勇気がいることです。また、一日中働いてくたくたな上に裁判となると、さらに大きな時間と労力を割かれます。ですが、自分たちと次の世代の非正規雇用者のために、なんとか、か細いながらも声をあげようとしている人々がおり、それを支えようとしている人々がいます。そのような現実を数々のルポルタージュを読み、当事者の方々のお話を伺いながら執筆しましたので、訴訟を起こした当事者である非正規の店舗のおばさんたちが、あのようにいきり立ったヒステリックな人々として描かれるとは思ってもいませんでした。同時に、今、苦しい立場で闘っておられる方々を傷つけたのではないかと思うと、とても申し訳なく思います。どのような場においても、社会の中で声を上げていく人々に冷笑や揶揄の目が向けられないようにと願います。
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 一部引用だと、太田氏の意図が曲解されてしまう可能性もあるので、全文引用させていただきました。

 脚本を忠実に再現する…その度合いは、ドラマや監督や演出家、はたまた、プロデューサーやスポンサーの意向にも左右されると思います。
 そう言えば、ドラマではなく舞台での話でしたが、『相棒』でもseason3第17話「書き直す女」で、劇作家の書いたセリフを勝手に変えてしまう舞台女優とその劇作家との間の確執による殺人事件がおこるというストーリーがありました。(脚本は林誠人氏)


 太田氏も、上記のブログ記事の中で『脚本が撮影現場でかわっていくことはよるあることで、今回も楽しいアドリブ満載でした』とあり、《多少の変容はよくあることで、楽しませてもらっている》ようで、許容の意思を示している。(別の視点では、『相棒』においては《脚本に現場で変更されることはよくある》らしい)
 ただし、元日SP「二人」での変更は許容範囲を超えるものであったらしい。
 ドラマでは、その冷遇さに怒った非正規社員が、ヒステリックに大声で喚き立てていた(特命の二人にもヒステリックに怒りを伝え、その後、大声を上げながら本社の方に向かっていった)
 このシーン、非正規社員の不当な労働環境(条件)とそれに対する憤りを表現していると受け取り、視聴していたが、苛烈過ぎな印象を受けた。それに、このシーンはやたら音声ボリュームが大きかったように感じた。
 太田氏が描きたかったのは、《弱い立場の非正規社員が勇気を振り絞って訴訟を起こした。過酷な労働環境に加え、訴訟による時間的精神的負担が圧し掛かる。そんな非正規社員を支える者もいる。脚本では、そういう非正規社員の状況を本社の平社員が語ることによって、非正規社員の訴訟の客観的正当性を示したかったのだろう。
 今回の脚本を書くに当たっての太田氏の取材に応じた人たち(労働環境改善に声を上げた人たち)の心を踏みにじり、太田氏の脚本の意図を台無しにした今回の変更であった。


 私は太田氏の書く『相棒』が好きです。2012年の元日SPの「ピエロ」をはじめ、どの脚本も好きです。
 そんな氏の2年ぶりの脚本だったというのに……

 今回の件で、太田氏が『相棒』から離れてしまわないことを願います。
コメント (4)
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