英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『おはよう日本』での“物価研究の第一人者”・渡辺努東京大学経済学部大学院教授の疑問の多い解説

2023-01-26 18:04:25 | 時事
2023年1月25日『おはよう日本』の特別コーナーで「イチからわかる物価高・日本の課題を徹底解説」と銘打って、東京大学経済学部大学院教授の渡辺努教授が解説していた。
まず、氏名・肩書(教授)の前に、“物価研究の第一人者”という触書で字幕で紹介されていた。
凄い持ち上げ方だな。東京大学大学院教授でもあるので、相応な解説が為されるのだろう……

 段階的に3つのテーマで語られていた。
1.現在の物価高の本当の原因
 《ウクライナ侵攻》が物価高の原因と言われているが、真の原因は《コロナ禍によって供給に問題が起きていること》だと言う
 まず、その根拠のデータとして、米国やユーロ圏のインフレ率のグラフを提示。「確かに、ウクライナ侵攻後にインフレが加速しているが、その前からもインフレ率はじわじわインフレ率が上がってきている」と。
 (ついでに言わせていただくと、教授は侵攻ではなく“戦争”と少なくとも2度言っていたが、“侵攻”が正しいと思う)

 いや、でも、侵攻前のインフレはコロナ禍によるものと考えられるが、そのインフレを加速した原因は侵攻であろう。侵攻による小麦など食料品や天然ガスなどのエネルギーコストが上昇がインフレ(物価高)の要因。侵攻以外にもう一つ要因があるが、“第一人者”はひと言も触れなかった。(後述します)
 コロナ禍が物価高の要因の説明として、“有り得ない同期”を上げていた。
 有り得ない同期とは……レストランを例に挙げて、通所ならキャンセルがあっても他の客の予約が入る。しかし、コロナ禍に於いては《ステイホームしよう》とか《レストランに行くのは控えよう》といった皆の思いが揃った。そういう“有り得ない同期”が起こってしまったと。しかし、感染拡大防止のため、行動制限や営業自粛などの“半強制同期”もあったし、中国や東南アジアがコロナ禍で工場が稼働できず、部品などが欠如してしまったという状況も起きた
 ……渡辺教授は、このコーナーの初めに「真の原因は《コロナ禍によって供給に問題が起きていること》」と語っていた……教授の言う“有り得ない同期”は供給ではなく需要に影響したのでは?(中国や東南アジアがコロナ禍で工場の稼働不能は供給不足を起こしたが)
 営業自粛は供給に関連するが、この教授は自説の“有り得ない同期”を語りたかったのかもしれない。

 ここで、キャスターが
「日本はどうなのか?」と振って、第2のテーマに移行した。
 え、先ほどのインフレ上昇率は欧米についてのデータだったので、日本の上昇率を示すのかと思ったんだけど……

 で、先述した物価上昇のもう一つの要因だが、それは《円安の影響》
 大幅な円安によって、原材料や食品や飼料などの輸入価格が大幅にアップした。侵攻によってアップしたエネルギー費もアップした。
 要するに、物価の上昇やコスト高を円安がさらに拍車をかけたのである。



私の疑問や怒りを置き去りにして(当たり前か)、コーナーは進んでいく
2.日本が抱える2つの病
 日本はずっと“慢性デフレ”が続いていた……《賃金》《物価》が凍り付いていた(アップしない)
 ところが、この1年の物価上昇率が4%!(この数値は41年ぶり)……“急性インフレ”
 日本は、“慢性デフレ”と“急性インフレ”が同居している状態であると。

 教授は、この“急性インフレ”が“慢性デフレ”の要因の一つの《凍り付いていた物価》を融かすことになると主張
 さらに、《品目別価格変化率》に着目
 10~30%上昇しているのがエネルギー関連(灯油、プロパンガス、電気代、都市ガス)で、JR運賃、新聞代、インターネット接続料、理髪料などは価格が上がっていないと指摘。こういったサービス関連の価格のアップが鍵。

 《品目別価格変化率》については良いとして、《“急性インフレ”が“慢性デフレ”の要因の一つの“凍り付いていた物価”を融かす》……つまり、“急性インフレ”(物価高騰の現状)は良いことだと主張しているのだ。しかし、全く同意できない。
 あの黒田総裁でさえ、現状の物価高は“悪い物価上昇”と言及していたというのに!
 黒田総裁の考えは、《好景気で(需要が高まって)物価が上昇するのではなく、エネルギー費の上昇や円安などに強いられての物価上昇は好ましくない。賃金アップによる好景気に因っての物価上昇が望ましい》というもの。黒田総裁の超金融緩和には反対だが、この考えは部分的には賛成。(賃金アップ至上主義には反対)
【追記】黒田日銀総裁の“悪い物価上昇”と言う表現はフラグで、実は、物価高の要因は何でもよく、物価が高騰すれば“賃上げ”の動機になるという考えかもしれない。
 

3.今こそデフレの氷を解かせ!
 強制的に物価が高騰したが、教授はこの“急性インフレ”でデフレ要因の氷の一つはとけたが、もう一つの氷の《賃金》については……
 岸田内閣主導により大企業はかなりのベースアップ(賃上げ)が見込めそう。(総理は要請するだけだが)
 問題なのは、賃上げできない中小企業

 ここで番組は、取材映像を流す
【都内の町工場(従業員は10人程度、機械部品加工)】……コロナ禍で月500万円の売り上げ減少。そんな中で、原材料・コストが30%アップという苦境
  《大手が賃上げに前向き》と聞き、《そんなに儲かっているのなら、下請けに還元しても良いのでは?》と思う

 取引相手の担当者に「取引価格を上げてほしい」とそれとなく言っても「大変ですね」「そうなんですよね」「頑張ってください」で終わってしまう。もし、コストアップ転嫁した価格を自社だけが提示したら、他者に注文が言ってしまうだけだという。(そうだろうなあ。私も何度も経験…)

 さらに、データとして
【コスト上昇…何割を価格転嫁?】
 0割(価格転嫁できない)……20%
 1~6割転嫁……………………50%


 このVTRを見た後、渡辺教授は……
《中小企業はまずは賃上げ》と解説図!
「中小企業は価格出来るはず。
 海外では賃上げをして、それに伴う人件費増加を価格に転嫁することを普通にやっているので、日本だってできないことはないと強く思っている


 ……昭和の運動部の根性鬼コーチか?それとも、頭が悪いのか?
 直前に、下請け企業の苦しさ(売り上げ減少、コストアップ、価格転嫁困難)のVTRを観ているのに、脳がレンコンなのか?(穴だらけ)
 自説を主張するなら、価格転嫁を普通にやっている例を100ぐらい挙げてほしいものだ。

 価格転嫁の手助けとして、政府の監視を述べ、《下請けの価格転嫁を認めない企業に対して企業名を公表する》などの施策をしているというが、それが本当に機能するとは思えない。企業が価格アップを容易に許容するとは思えないし、その事実を政府が感知するのも困難であろう。そもそも、本気で監視する気があるのだろうか?
 企業が賃上げに踏み切ると、当然、人件費のコストアップで利益が減る。その上、下請けとの取引価格のアップを容易に許容するとは思えない。《下請けの価格アップは大企業の賃上げの障害》となる。
 政府にとっては、《賃上げ》が最優先だろう。その障害となる下請け価格転嫁に関する監視は、二の次になるのではないだろうか?


 《中小企業はまずは賃上げ》に、血が上って暴言を吐いてしまったが、物価上昇の要因である円安には全く触れないし、論理も破綻しているところが見受けられる。(コーナーの時間の短さのせいかもしれない)
 最後に、担当キャスターが「“物価研究の第一人者”・渡辺努東京大学経済学部大学院教授」(“大学院”を強調していたように聞こえた)と紹介してコーナーを終了していた。
コメント
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