英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『すべてがFになる』 第3話&第4話「封印再度」

2014-11-14 23:12:06 | ドラマ・映画
易融合金を利用した凶器隠滅トリック……
……原作でこれを読んだ時に非常に感動した記憶が蘇った。
 ≪えっ、感動したの?≫という声が聞こえてきそうだが、まちがいなく感動した……たぶん。

トリックの概要(番組サイトより引用)
 50年前、林水の父親・風采は匣(はこ)と壺の謎を解き、蔵で自殺を図った。林水もついにその謎に行き着き、同じ道を選んだのだろう。そして、凶器は匣のなかにあった、と犀川は推測。レントゲンで撮影しても空っぽの匣のどこに凶器が隠されているのか。
 実は、壺のなかにある鍵は、60℃で融解する易融合金(いゆうごうきん)で作られていた。そのためお湯を注ぐと液体となる。それを匣の上部にあるネジを外して内部へ注ぐと、底にかたどられたナイフの形に変化し固まりはじめる。お湯を捨てフタを開ければ、それが凶器となる。自分を刺した後、逆の手順を取れば、鍵として壺のなかに戻すことができる。



 鍵が凶器になり、凶器が鍵に戻る。
 鍵がその形をなくして(液体になって)壺から脱出し、匣(はこ)に侵入(本来、鍵の形を成して匣を開けるはずなのに、鍵の形を崩して匣を開ける)。

 「表裏一体」「逆転の発想」……科学とパズルの理論的トリック!鍵穴のフェイクも面白かった。

 おそらく、原作を読んだときは、相当考え、悩んだはず。何度もページを戻って考えた、そう、詰将棋の難問に挑んでる時のように。
 結局、分からず、敗北感を噛みしめながらページを捲った。
 “易融合金”…まったく考えが及ばなかった。そして、上述のトリックの構造に感動した。悩み苦しんだ後、まさに、難問詰将棋の妙手を閃いた時のような感動。
 まあ、今なら、≪何ぃ!、易融合金?…そんなの分かるはずねえじゃん!≫と腹を立てるだろう。……昔は純粋だったなあ。


 と言っても、今考えると、このトリックには大きな問題点がある。
 凶器を鍵に戻さないと、このトリックは完遂できないのである。
 つまり、自らに致命傷を与えた後、凶器を抜き、壺に入れ熱湯を入れ、鍵の形になるのを待って、お湯を捨てなければならない。致命傷でなければ意味がないし、即死だと完遂できない。痛いし、苦しいし……




 さらに、ドラマの作りとしては、相当残念
 トリックの見せ方というか、考えさせ方が不親切。……トリック解明のヒントが、屏風に書かれた「水易火難」の漢文のみ。
 「おじいちゃん、いないよ(動かなくなった。死んだ)」という子供の特殊な言い回しの錯覚のヒントはくどいほど見せたり、密室トリックは意味がなかったし(自殺なら密室は可能、林水の事件の密室は偶然だった)。
 そもそも、この空気の冷却による収縮による空気圧で扉が開けられなかったのに、どうやって開けたのだろう。夜が更けるほど、蔵の中の空気は冷えていくのだから。子どもの言葉にしても、身内(祖父、叔母)が倒れていたのだから、動揺するだろう。
 疫病神(林水の転落自殺を止められず、偶発的だが兄を井戸に突き落とす)のまりも、時々、無表情で不気味になる多可志・綾緒夫婦、その他も曰くありげな林水の妻・ふみと使用人・吉村、林水の孫の祐介の座敷童みたいな登場、このあたりの描写に時間をかけて、"おどろおどろ感”を醸し出そうとしていたが、肝心要の「天地の瓢」と「無我の匣」のトリックの謎に迫らない(犀川だけは重要視していたが)。最後の最後に種明かしをされただけでは、感動は全くない


 さらに問題なのは、仏画師の香山家に伝わる呪われた因襲が全く理解不能。
 『家宝の「天地の瓢」と「無我の匣」の謎を解き明かしたら、それを使って自殺トリックを演じなければならない』とは、どういう必然性があるというのだろうか?いったい、仏画とトリックに何の関係があるのだろうか?仏画師とは仮の姿で、本当は引田天功だったのだろうか?
 当主のフミの自殺ほう助(殺人)を仄めかして、まんまと家宝の瓢と匣をせしめていたが、あの呪われた因襲から解き放つには、あの凶器隠滅のトリックを解き明かすべきである。もったいぶって真相を語らず、もやもや感だけ香山家に残すなんて、また事件が起こっても知らないぞ。


 あり得ないトリックであったが、1回完結でそれを主眼で描くべきところを、理解不能な因襲や、意味のない人間描写、密室に終始し2回に引き伸ばした非常に残念なドラマであった。
 それと、気になったのは、画面にやや青みがかっていること。何か意味があるのだろうか?
 

【ストーリー】脚本・小山正太
『前編』
 萌絵(武井咲)は犀川(綾野剛)を誘い、香山という一家が暮らす日本家屋にやってくる。名目は「歴史的建造物の調査」だが、萌絵の興味は香山家に伝わる壺と匣(はこ)にあった。鍵のかかった匣には対となる壺があり、中に鍵らしきものが入っているがそれを取り出すことはできない。50年前、当主で仏画師の香山風采の死亡事件が起ったとき、壺に風采の血痕が付着していた。それを見た警察が匣を開けようとしたが、息子で同じく仏画師の林水がそれを拒んだという。
 曰わく付きの壺と匣を見たい萌絵は、犀川とともにそれが置かれている蔵まで来るが使用人に制される。それでも粘る萌絵を、現在の当主・香山林水(横内正)の妻であるフミ(真野響子)が厳しく制した。

 別の日、萌絵、犀川、萌絵の叔父・捷輔(吉田鋼太郎)がレストランにいると、林水の長女で漫画家のマリモ(原田夏希)がやってくる。捷輔の妻が風采の画が好きだったことから、捷輔はマリモと知り合ったという。
 マリモの取り計らいで再び香山家を訪ねた萌絵と犀川は通された客間でマリモを待つが、約束の時間を過ぎてもマリモは帰宅しない。やがて萌絵が部屋を出ようと襖を開けると、蔵の方から叫び声がした。萌絵と犀川が駆けつけると、フミら一族が集まっていた。蔵の中に大量の血痕があったが、そこにいるはずの林水の姿はなかった。しかし、側にはあの壺と匣があり、白い壺の表面にはべったりと血痕が付いていた。

≪第三話 事件のおさらい≫
 萌絵(武井咲)と犀川(綾野剛)が訪ねた香山という一家が暮らす日本家屋では、50年前に当主で仏画師の香山風采が、刃物で胸部を刺されて死亡する事件が起こっていた。それは蔵という密室で起きた凶器も発見されていない事件で、自殺か他殺か現在も未解決となっていた。唯一の手がかりは、遺体のそばに置かれた家宝の壺と匣(はこ)で、白い壺にはべったりと血痕が付いていたという。
 それから50年後、同じ蔵のなかで不可解な事件が起こった。そこで作業をしていたはずの風采の息子・林水(横内正)が行方不明となり、蔵が血の海となっていたのだ。そこには50年前と同様に壺と匣があり、壺には血痕が付着していた。
 目撃者はいないが、午後6時に林水の孫の祐介が蔵から出てきて「おじいちゃん、もういないよ」と言った。さらに、午後7時から8時までなかから鍵がかけられていることが確認されている。ところが、午後9時に義理の娘の綾緒が様子を見に行くと、蔵から林水の姿は消え、血痕が残っていた。
 その後、林水の長女で離れて暮らすマリモ(原田夏希)が自宅付近の橋の上でケガをして救助され、橋の下の川原では林水が遺体となって発見された。林水は、父親の風采同様、胸を刺されて死亡していた。刑事の鵜飼(戸次重幸)は、死亡推定時刻は午後6時から9時の間だと報告した。
 そんな折、屋敷の裏門付近でマリモのタバコの吸い殻が見つかった。実家に向かう途中で事故に遭ったはずのマリモの吸い殻がなぜ屋敷内に落ちていたのか。萌絵は、事前に屋敷にやってきたマリモが蔵で林水を刺し、遺体を川に捨てたのでは、と推理。するとそこへ、入院中のマリモが失踪したと連絡が入る。

『後編』
 萌絵(武井咲)は、集まった香山家の人々に、病院から失踪したマリモ(原田夏希)が林水(横内正)の死に関連している可能性があると切り出した。一方、犀川(綾野剛)は一人、部屋の隅にいた。
 刑事の鵜飼(戸次重幸)は、屋敷の裏門付近にマリモのタバコの吸い殻が落ちていたことを明かした。さらに、林水の息子・多可志(橋洋)が屋敷を売却しようとして林水に反対されていたことを挙げ、疑いの目を向ける。多可志は、この家は呪われているから売却したほうがいいのだ、とつぶやく。
 その後、萌絵と犀川は、ヒーローのおもちゃで遊ぶ多可志の息子・祐介(橋來)に声をかける。ヒーローは強いのかと聞く萌絵に、祐介は「もういない」と答える。不思議に思った萌絵は外れていた電池をヒーローにはめてやる。動き出したヒーローを見た祐介は「いた」と答えた。そのやりとりを見ていた犀川は、何かに気づく。
 後日、萌絵が再び香山家にやって来ると、犀川が蔵を観察していた。犀川は萌絵に、蔵がウェザリングという技法で古く見えるように塗装されているが、内部にはシリコン素材が使われていて密閉空間になることを教えた。画を湿気から守るためとはいえ、かなりの手間がかかる改装をした理由を、芸術家だからだろう、と犀川は推測。そんな時、中庭から悲鳴が聞こえた。萌絵と犀川が駆け寄ると、井戸の側で多可志の妻・綾緒(赤間麻里子)が震えていた。井戸を覗き込んだ萌絵が目にしたのは…。


≪萌絵と犀川による事件の推論≫
林水の行方不明の謎は?
 午後6時に孫の祐介が蔵から出てきて、「おじいちゃん、もういないよ」と言ったことから、林水(横内正)は6時には蔵から姿を消していたと思われていた。しかし、祐介は「もういない」を「死んでいる」や「動かなくなった状態」の言葉として使っていた。つまり、6時に林水が瀕死の状態だったと推測できる。林水は何者かに刺され、瀕死だった。そこへ帰宅した娘のマリモ(原田夏希)が林水を見つけ、病院へ運ぼうと自分の車で屋敷を出た。しかし、林水は途中でマリモに車を停めさせると、車外へ出て橋から身を投げてしまう。止めるマリモを払いのけて、「最後のひとかけが必要なんだ」と言って、川へと落ちていった。

午後7時~8時に蔵に鍵がかかっていた理由は?
午後7時に林水の息子の多可志(橋洋)が蔵にやってくると、なかから鍵がかかっていた。そのため林水がいると思ったのだが、蔵は無人だった。負傷した林水が蔵を出ていくとき、よろめいてストーブを転倒させてしまった。安全装置が作動しストーブが消えたことで室内の温度が下がり、そのことで空気が収縮され扉が内側に引っ張られたのだ。これにより、外から開けることができなかったため、多可志は鍵がかかっていると思ったのだ。

そもそも林水を刺したのは誰なのか?
 50年前、林水の父親・風采は匣と壺の謎を解き、蔵で自殺を図った。林水もついにその謎に行き着き、同じ道を選んだのだろう。そして、凶器は匣のなかにあった、と犀川は推測。レントゲンで撮影しても空っぽの匣のどこに凶器が隠されているのか。実は、壺のなかにある鍵は、60℃で融解する易融合金(いゆうごうきん)で作られていた。そのためお湯を注ぐと液体となる。それを匣の上部にあるネジを外して内部へ注ぐと、底にかたどられたナイフの形に変化し固まりはじめる。お湯を捨てフタを開ければ、それが凶器となる。自分を刺した後、逆の手順を取れば、鍵として壺のなかに戻すことができる。

なぜ林水は自ら死を選んだのか?
 林水の妻・フミ(真野響子)の証言によると、同じ仏画師として父の風采の背中を追い続けた林水は、父と同様に匣と壺の謎を解き自殺することで、風采と同じ極みに達せられると考えた。死を持って自らの芸術を完成させようとしたのだ。
 

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