竜王戦が始まりました。
模様の張り合いから、斬り合いになるかと思われたが、渡辺竜王に誤算があったのか、一旦振り上げた刀を下ろさざるを得なくなり、その一拍の遅れが、森内名人から圧力を掛けられ、急かされるように攻めかかったが、切っ先をすべて受けられてしまった。森内名人が先手番をキープ。
森内名人が強さを発揮したが、竜王が不調なのかも仕入れない。
昨年度後期に勝ちまくり、羽生三冠を抜きさって将棋大賞を受賞した渡辺竜王・棋王・王将、最強挑戦者・羽生王位・王座・棋聖(最強は渡辺竜王という説も否定できないが、A級順位戦の実績…ここ2年で17勝1敗…を重視)を圧倒した森内名人。
この両者の戦いを、高みの見物するつもりであったが、王座戦で大苦戦、高みの見物どころではなくなってしまった。
追い込まれた精神状態を整理する為、完敗と評されたことに納得がいっていない王座戦第3局を取り上げようと思いましたが、やはり納得のいかない第1局にも思考が向いてしまいました。
書きたい記事がいっぱいあるのに、自ら首を絞めているなあ。それに、「勝局より敗局」、「ドラマを褒めるより、いちゃもんを付けたい」と、つくづくマイナス思考(ひねくれている)なあと、再認識。
第1局を再考しようと思ったのは、『将棋世界』11月号の第1局観戦記「刻みつけた成長の証」(記・大川慎太郎氏)を読んだから。将棋の造りや指し手の解説、対局者の考えが丁寧に書かれていて分かりやすく、面白かった。
まず、序盤の駆け引き。
観戦記の受け売りだが、6手目(図の1手前)の△9四歩は、先手が▲9六歩と受ければ、△3四歩から一手損角換わりにすれば、9筋の歩の突き合いがない場合に比べて早繰り銀で8六で銀交換をした場合、▲9五角の王手飛車がない分だけ得しているという狙いだ。
実戦も羽生三冠は一手損角換わりを採用し、△9四歩の意を継ぐかと思われたが、腰掛け銀に。しかし、腰掛け銀は先手棒銀への有力な対策がないというのが現在の定説。けれども、中村六段も棒銀にせず、▲3七桂と跳ねて腰掛け銀を目指した。
深読みすれば、6手目△9四歩の一手損角換わり・早繰り銀対する対策を中村六段が見せてくれると期待した(羽生三冠はそれに対する対策も用意していた)、さらに「後手の一手損角換わり・腰掛け銀」対「先手の棒銀」の対策も用意していたのではないだろうか。
それを外され、がっかりした。はぐらかされて、将棋感覚のずれを感じ、読みが合わないという印象を持ったのではないだろうか。
第1図は、羽生三冠の△3一玉に▲3五歩と仕掛けたところ。中継サイトではこの2手前の局面(後手玉が4二にいて、先手の左銀が8八にいる状態)で、▲3五歩△同歩▲4五桂△2二銀の順を検討していた。「さすがに無理っぽいがあるかもしれない」という感触であったが、第1図は先手の壁銀が解消され、後手玉が3一に引いたため、5三の地点が薄くなり、先手の▲4五桂~▲7一角の仕掛けがより効果的になっている。
なので、仕掛けられて≪大丈夫なのか?≫という控室。
羽生三冠の局後の感想は「(△3一玉は)軽率だった」とある。△3一玉に2分の考慮、その前の△4二玉にも1分未満の考慮なので、この仕掛けはノーマークだったのだろう。
中村六段にしてみれば、羽生三冠の指し手のペースを考えると、≪誘いのスキ?≫と疑心暗鬼になってしまう。61分の考慮で▲3五歩。
羽生三冠もこの考慮中に仕掛けを察知したのだろう。▲3五歩に3分で△同歩。面白いのは、控室では「△3五同歩とせず、△4四歩▲3四歩△同銀▲2四歩△同歩▲同飛△4三金右で、先手攻めあぐねている」というのが控室の検討で、羽生三冠の△3五同歩を見て、「あれ、取りました。我々は何を検討していたんだ」(佐藤九段)と。
羽生三冠は「へー、△4四歩。そういう手がありましたか」と。この辺り、広く手の可能性を考える羽生三冠にしては、珍しい局面の捉え方だ。
第1図の▲3五歩に△同歩(3分)▲4五桂に銀を逃げては悪いので△4五同銀(1分)と銀桂交換に甘んじ、▲4五同歩△3六歩▲2六飛(16分)△5五角(23分)、第2図へと進む。
羽生三冠は先手の仕掛けを軽視していたことを悔やんでいたが、中村六段もこの局面を迎えて、「形勢が思わしくないことに気づいた」という。第2図を想定して仕掛けを敢行したが、いざ局面を前にすると有効手がなかったという。(観戦記より) 銀桂交換の駒得と言っても、後手の銀は守備銀ではなく、香も取られ馬も作られる流れは先手にとっては思ったほど面白くないようだ。玉が6八にいるのも不安だ。
しかし、『羽生三冠も「仕掛けられて面白くない」と悲観的で、仕掛け事態を軽視していたことが精神的に影響していたのではないか』と観戦記で述べられている。私も同感で、中村六段が仕掛けを決行するのに要した61分の間、羽生三冠はずっと≪しまった≫と後悔していて、それがその後にも影響を与えていたように思える。
先手が▲2四歩と後手陣にアヤをつけたところ。実戦は△4五馬と引き付け、▲2三歩成に△同金と応じたが、馬引きでは△2四同歩と応じる方が良かったらしい。以下▲2三歩が嫌味だが△2三同金と応じれば、先手が歩切れとなるのが大きい。
しかし、羽生ウオッチャーとしては、△2四同歩とは応じないと予想していた。羽生三冠はこういう玉頭の付き捨てに手抜きすることが多いのだ。本局に関しては、本人も取らなかったことを悔やんでいたが。
中央で駒の振り変わりの後、後手の飛車を巡る駆け引きがあったが(私にはここら辺りの折衝が良く理解できないが)、先手が▲9八歩と謝るに至った。先手の8三に打った角は8三→6一→8三→7二→8一と動いている。7一に打った銀と合わせて費やした手数などを考えると、桂香を取っても目標だった飛車を世に出すのは割が合わない。
≪この将棋はいただき≫と思ったが……
第5図は4六にいた角が6四に出た手に対して△3七歩と打ったところ。1手と1歩を費やす指し手には抵抗を感じる。ただ、4六に居た角が6四に出たのを呼び戻す形になるので、手数に関しては理に適っているのかもしれない。しかし、▲3七同角△同龍△同銀と金銀の連携を絶って△1九龍と進入したものの、与えた1歩で▲3九歩と龍の利きを遮断されたのが痛かった。
△3七歩では△5六香▲同銀△同竜▲6八桂△6五竜引▲5三角成△5六歩(参考図1)と指すべきだったとのこと。
図で▲5八歩なら△5一香が厳しい。
羽生三冠がこの順を見送ったのは、『8一の馬が利いてくるからで、この日、羽生は第3図での△4五馬もそうだが、彼我の馬の力を過大評価していたように思う』と観戦記の大川氏の記述。
また、第4図の直後の△1五龍では、
「ここでしたね。△2五竜でした」(羽生)
羽生は▲9一成銀△2九竜▲3九香△3八歩▲4七角でまずいと判断していたが、そこで△1九竜と角の利きを避けておけば後手相当だった。
「こちらが面白い局面があったとすれば、ここでしたね」(羽生)【中継サイトより】
結局、歩と桂で防波堤を作られ、8一の馬を6三→5三→4二と活用を間に合わされて、勝ち目の薄い将棋になってしまった。
途中図は、▲4五桂に金を逃げることが出来ず△2二歩と辛抱した局面。先手玉を寄せるには、まだ何手もかかるのに対し、後手玉は風前の灯。
しかし、ここからがまだまだ大変で、この将棋を観戦した者は≪羽生三冠に勝つのは本当に大変なんだなあ≫と思い知らされることとなった。
図の1手前の△4四角も勝負手だったが、▲1五金が好手で、さすがに中村六段の勝利が近づいたかと思われた局面。
ここで△5三角が不思議な手。4四の角は打ったばかりの角。なので、1手で打てる角を2手掛けたことになる。しかも、角は4四にいた方が先手陣にも後手陣にも利いている。ところが、△4四角と打つところで、すぐ△5三角と打つと先手はまだ金を持っている(▲1五金と打っていない)ので、▲3三龍△同歩(桂)▲2三金で詰んでしまう。
実戦でこんな訳の分からない手順を指されたら、たいていの者は平衡感覚が狂ってしまうのではないだろうか。
ところで、この△5三角では△9九角成としたいが、▲1六金△同竜▲7七角△同馬▲同桂で「(後手玉は)受かる形ではないです」(羽生三冠)と感想戦で述べている。
ところが、将棋ソフトのGPS将棋は上記手順の▲7七桂の後、△2三金打(参考図2)を推奨している。
以下▲2三同歩成△同玉と、金を犠牲に玉の脱出を図る勝負手だ。
「△2三同玉の後、▲5二龍△3七香成▲5四龍(参考図3)で悪そうです。しかし本譜よりはましかもしれません」というのが羽生三冠の見解。(『将棋世界』観戦記)
確かに、金1枚献上するのは、後手の攻め駒が増え後手玉が逃げ切るのは難しそう。でも、実戦で見たかった気持ちが大きい。
本当は△2三金打では△2三香と節約したいが、▲2二銀成△同玉▲3一角△1二玉に△3三龍(参考図4)で必至がかかってしまう。
以後も難解な局面が続いたが(「その1」参照)、結局、▲2五飛と決め手を放ち、中村六段が初戦を制することとなった。
この将棋、中村六段の指し手のリズムや感覚が独特で、また、将棋自体も異空間の感覚がずれるような将棋で、羽生三冠の将棋感覚がどこか歯車が狂った感があった。
難解な将棋に崩れず、勝ちきった中村六段、手強し!の強い印象を与えた一局であった。
模様の張り合いから、斬り合いになるかと思われたが、渡辺竜王に誤算があったのか、一旦振り上げた刀を下ろさざるを得なくなり、その一拍の遅れが、森内名人から圧力を掛けられ、急かされるように攻めかかったが、切っ先をすべて受けられてしまった。森内名人が先手番をキープ。
森内名人が強さを発揮したが、竜王が不調なのかも仕入れない。
昨年度後期に勝ちまくり、羽生三冠を抜きさって将棋大賞を受賞した渡辺竜王・棋王・王将、最強挑戦者・羽生王位・王座・棋聖(最強は渡辺竜王という説も否定できないが、A級順位戦の実績…ここ2年で17勝1敗…を重視)を圧倒した森内名人。
この両者の戦いを、高みの見物するつもりであったが、王座戦で大苦戦、高みの見物どころではなくなってしまった。
追い込まれた精神状態を整理する為、完敗と評されたことに納得がいっていない王座戦第3局を取り上げようと思いましたが、やはり納得のいかない第1局にも思考が向いてしまいました。
書きたい記事がいっぱいあるのに、自ら首を絞めているなあ。それに、「勝局より敗局」、「ドラマを褒めるより、いちゃもんを付けたい」と、つくづくマイナス思考(ひねくれている)なあと、再認識。
第1局を再考しようと思ったのは、『将棋世界』11月号の第1局観戦記「刻みつけた成長の証」(記・大川慎太郎氏)を読んだから。将棋の造りや指し手の解説、対局者の考えが丁寧に書かれていて分かりやすく、面白かった。
まず、序盤の駆け引き。
観戦記の受け売りだが、6手目(図の1手前)の△9四歩は、先手が▲9六歩と受ければ、△3四歩から一手損角換わりにすれば、9筋の歩の突き合いがない場合に比べて早繰り銀で8六で銀交換をした場合、▲9五角の王手飛車がない分だけ得しているという狙いだ。
実戦も羽生三冠は一手損角換わりを採用し、△9四歩の意を継ぐかと思われたが、腰掛け銀に。しかし、腰掛け銀は先手棒銀への有力な対策がないというのが現在の定説。けれども、中村六段も棒銀にせず、▲3七桂と跳ねて腰掛け銀を目指した。
深読みすれば、6手目△9四歩の一手損角換わり・早繰り銀対する対策を中村六段が見せてくれると期待した(羽生三冠はそれに対する対策も用意していた)、さらに「後手の一手損角換わり・腰掛け銀」対「先手の棒銀」の対策も用意していたのではないだろうか。
それを外され、がっかりした。はぐらかされて、将棋感覚のずれを感じ、読みが合わないという印象を持ったのではないだろうか。
第1図は、羽生三冠の△3一玉に▲3五歩と仕掛けたところ。中継サイトではこの2手前の局面(後手玉が4二にいて、先手の左銀が8八にいる状態)で、▲3五歩△同歩▲4五桂△2二銀の順を検討していた。「さすがに無理っぽいがあるかもしれない」という感触であったが、第1図は先手の壁銀が解消され、後手玉が3一に引いたため、5三の地点が薄くなり、先手の▲4五桂~▲7一角の仕掛けがより効果的になっている。
なので、仕掛けられて≪大丈夫なのか?≫という控室。
羽生三冠の局後の感想は「(△3一玉は)軽率だった」とある。△3一玉に2分の考慮、その前の△4二玉にも1分未満の考慮なので、この仕掛けはノーマークだったのだろう。
中村六段にしてみれば、羽生三冠の指し手のペースを考えると、≪誘いのスキ?≫と疑心暗鬼になってしまう。61分の考慮で▲3五歩。
羽生三冠もこの考慮中に仕掛けを察知したのだろう。▲3五歩に3分で△同歩。面白いのは、控室では「△3五同歩とせず、△4四歩▲3四歩△同銀▲2四歩△同歩▲同飛△4三金右で、先手攻めあぐねている」というのが控室の検討で、羽生三冠の△3五同歩を見て、「あれ、取りました。我々は何を検討していたんだ」(佐藤九段)と。
羽生三冠は「へー、△4四歩。そういう手がありましたか」と。この辺り、広く手の可能性を考える羽生三冠にしては、珍しい局面の捉え方だ。
第1図の▲3五歩に△同歩(3分)▲4五桂に銀を逃げては悪いので△4五同銀(1分)と銀桂交換に甘んじ、▲4五同歩△3六歩▲2六飛(16分)△5五角(23分)、第2図へと進む。
羽生三冠は先手の仕掛けを軽視していたことを悔やんでいたが、中村六段もこの局面を迎えて、「形勢が思わしくないことに気づいた」という。第2図を想定して仕掛けを敢行したが、いざ局面を前にすると有効手がなかったという。(観戦記より) 銀桂交換の駒得と言っても、後手の銀は守備銀ではなく、香も取られ馬も作られる流れは先手にとっては思ったほど面白くないようだ。玉が6八にいるのも不安だ。
しかし、『羽生三冠も「仕掛けられて面白くない」と悲観的で、仕掛け事態を軽視していたことが精神的に影響していたのではないか』と観戦記で述べられている。私も同感で、中村六段が仕掛けを決行するのに要した61分の間、羽生三冠はずっと≪しまった≫と後悔していて、それがその後にも影響を与えていたように思える。
先手が▲2四歩と後手陣にアヤをつけたところ。実戦は△4五馬と引き付け、▲2三歩成に△同金と応じたが、馬引きでは△2四同歩と応じる方が良かったらしい。以下▲2三歩が嫌味だが△2三同金と応じれば、先手が歩切れとなるのが大きい。
しかし、羽生ウオッチャーとしては、△2四同歩とは応じないと予想していた。羽生三冠はこういう玉頭の付き捨てに手抜きすることが多いのだ。本局に関しては、本人も取らなかったことを悔やんでいたが。
中央で駒の振り変わりの後、後手の飛車を巡る駆け引きがあったが(私にはここら辺りの折衝が良く理解できないが)、先手が▲9八歩と謝るに至った。先手の8三に打った角は8三→6一→8三→7二→8一と動いている。7一に打った銀と合わせて費やした手数などを考えると、桂香を取っても目標だった飛車を世に出すのは割が合わない。
≪この将棋はいただき≫と思ったが……
第5図は4六にいた角が6四に出た手に対して△3七歩と打ったところ。1手と1歩を費やす指し手には抵抗を感じる。ただ、4六に居た角が6四に出たのを呼び戻す形になるので、手数に関しては理に適っているのかもしれない。しかし、▲3七同角△同龍△同銀と金銀の連携を絶って△1九龍と進入したものの、与えた1歩で▲3九歩と龍の利きを遮断されたのが痛かった。
△3七歩では△5六香▲同銀△同竜▲6八桂△6五竜引▲5三角成△5六歩(参考図1)と指すべきだったとのこと。
図で▲5八歩なら△5一香が厳しい。
羽生三冠がこの順を見送ったのは、『8一の馬が利いてくるからで、この日、羽生は第3図での△4五馬もそうだが、彼我の馬の力を過大評価していたように思う』と観戦記の大川氏の記述。
また、第4図の直後の△1五龍では、
「ここでしたね。△2五竜でした」(羽生)
羽生は▲9一成銀△2九竜▲3九香△3八歩▲4七角でまずいと判断していたが、そこで△1九竜と角の利きを避けておけば後手相当だった。
「こちらが面白い局面があったとすれば、ここでしたね」(羽生)【中継サイトより】
結局、歩と桂で防波堤を作られ、8一の馬を6三→5三→4二と活用を間に合わされて、勝ち目の薄い将棋になってしまった。
途中図は、▲4五桂に金を逃げることが出来ず△2二歩と辛抱した局面。先手玉を寄せるには、まだ何手もかかるのに対し、後手玉は風前の灯。
しかし、ここからがまだまだ大変で、この将棋を観戦した者は≪羽生三冠に勝つのは本当に大変なんだなあ≫と思い知らされることとなった。
図の1手前の△4四角も勝負手だったが、▲1五金が好手で、さすがに中村六段の勝利が近づいたかと思われた局面。
ここで△5三角が不思議な手。4四の角は打ったばかりの角。なので、1手で打てる角を2手掛けたことになる。しかも、角は4四にいた方が先手陣にも後手陣にも利いている。ところが、△4四角と打つところで、すぐ△5三角と打つと先手はまだ金を持っている(▲1五金と打っていない)ので、▲3三龍△同歩(桂)▲2三金で詰んでしまう。
実戦でこんな訳の分からない手順を指されたら、たいていの者は平衡感覚が狂ってしまうのではないだろうか。
ところで、この△5三角では△9九角成としたいが、▲1六金△同竜▲7七角△同馬▲同桂で「(後手玉は)受かる形ではないです」(羽生三冠)と感想戦で述べている。
ところが、将棋ソフトのGPS将棋は上記手順の▲7七桂の後、△2三金打(参考図2)を推奨している。
以下▲2三同歩成△同玉と、金を犠牲に玉の脱出を図る勝負手だ。
「△2三同玉の後、▲5二龍△3七香成▲5四龍(参考図3)で悪そうです。しかし本譜よりはましかもしれません」というのが羽生三冠の見解。(『将棋世界』観戦記)
確かに、金1枚献上するのは、後手の攻め駒が増え後手玉が逃げ切るのは難しそう。でも、実戦で見たかった気持ちが大きい。
本当は△2三金打では△2三香と節約したいが、▲2二銀成△同玉▲3一角△1二玉に△3三龍(参考図4)で必至がかかってしまう。
以後も難解な局面が続いたが(「その1」参照)、結局、▲2五飛と決め手を放ち、中村六段が初戦を制することとなった。
この将棋、中村六段の指し手のリズムや感覚が独特で、また、将棋自体も異空間の感覚がずれるような将棋で、羽生三冠の将棋感覚がどこか歯車が狂った感があった。
難解な将棋に崩れず、勝ちきった中村六段、手強し!の強い印象を与えた一局であった。
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