漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 704

2025-03-20 04:09:50 | 貫之集

肥後守藤原時佐といふぬしの下るにやれる

ひとひだに みねばこひしき こころあるに とほみちさして きみがゆくかな

一日だに 見ねば恋しき 心あるに 遠道さして 君が行くかな

 

肥後守藤原時佐という主が任地に下るのにあたって贈った歌

一日でも逢わずにいると恋しい気持ちになるのに、あなたは遠い旅に発ってしまうのですね。

 

 藤原時佐(ふじわら の ときすけ)という人物はネット検索してもヒットせず、どのような人物かはわかりませんでした。「恋しき心」とありますから、時佐に思いをよせる女性の気持ちに準えて詠んだものでしょうか。

 


貫之集 703

2025-03-19 05:46:22 | 貫之集

音羽の山のほとりにて人に別るとて

おとはやま こたかくなきて ほととぎす きみがわかれを をしむべらなり

音羽山 木高く鳴きて 時鳥 君が別れを 惜しむべらなり

 

音羽の山のほとりにて人に別れる際に詠んだ歌

音羽山の木の高いところで時鳥が鳴いて、私と同じくあなたとの別れを惜しんでいるようだ。

 

 この歌は、古今和歌集(巻第八「離別歌」 第384番)に入集しています。


貫之集 702

2025-03-18 04:33:57 | 貫之集

人に別れけるによめる

わかれてふ ことはいろにも あらなくに こころにしみて わびしかるらむ

別れてふ ことは色にも あらなくに 心にしみて わびしかるらむ

 

人と別れるに際して詠んだ歌

別れというものは、色がついているわけではないのに、どうしてこうも心に染みてわびしい思いがするのでしょうか。

 

 この歌は、古今和歌集(巻第八「離別歌」 第381番)に入集しています。


貫之集 701

2025-03-17 05:38:03 | 貫之集

陸奥へ下る人によめる

しらくもの やへかさなれる をちにても おもはむひとに こころへだつな

白雲の 八重かさなれる 遠にても 思はむ人に 心へだつな

 

陸奥へ旅立つ人に詠んた歌

白雲が幾重にも重なるその向こうへと旅立たれても、あなたを思っている私には、どうか距離をおかないでください。

 

 シンプルでストレートに心情を詠んだ、貫之らしい一首と言えましょうか。
 この歌は、古今和歌集(巻第八「離別歌」 第380番)に入集しており、そちらでは第二句が「やへにかさなる」とされています。

 

 


貫之集 700

2025-03-16 04:43:36 | 貫之集

人のむまのはなむけによめる

をしむから こひしきものを しらくもの たちわかれなば なにここちせむ

惜しむから 恋しきものを 白雲の 立ち別れなば なにここちせむ

 

旅立つ人への選別として詠ん歌

別れを惜しんでいるときからもうあなたを恋しくなっているのに、実際にあなたが出立してしまったら、どんな気持ちがするのでしょう。

 

 「白雲の」は「立ち」に掛かる枕詞ですね。
 この歌は、古今和歌集(巻第八「離別歌」 第371番)に入集しており、そちらでは第四句が「たちなむのちは」とされています。

 

 今日から、貫之集巻第七「別」に入ります。貫之集のご紹介も残り190首ほどとなりました。