漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 1086

2022-10-20 05:55:04 | 古今和歌集

あふみのや かがみのやまを たてたれば かねてぞみゆる きみがちとせは

近江のや 鏡の山を たてたれば かねてぞ見ゆる 君が千歳は

 

大友黒主

 

 近江国には鏡山という名の山が立っているので、わが君の長寿が今からもう見えています。

 左注には「これは今上の御嘗の近江の歌」とあります。「今上」が指すのは第60代醍醐天皇。その大嘗祭が執り行われたのは 897年のことです。近江の鏡山を詠んだ歌は 0899 にもありました。よみ人知らずの歌ですが、そこに「この歌は、ある人のいはく、大伴黒主がなり」とあるのは、あるいはこの 1086 が黒主歌であるためかもしれません。

 

 

 


古今和歌集 1085

2022-10-19 05:37:42 | 古今和歌集

きみがよは かぎりもあらじ ながはまの まさごのかずは よみつくすとも

君が代は 限りもあらじ 長浜の 真砂の数は よみ尽くすとも

 

よみ人知らず

 

 わが君の代は、限りなく長く続くことでしょう。たとえ長浜の砂の数は数え尽くすことがあったとしても。

 左注には「これは仁和の御嘗の伊勢国の歌」とあります。ですので、「長浜」は伊勢の地名と思われますが具体的な場所は不明。「仁和」は第58代光孝天皇、その大嘗祭(御嘗)は 884年に執り行われています。国家「君が代」のもととなった 0343 の第一句は「わが君は」ですが、こちらは「君が代は」ですね。時の帝の代の永続を願うこうした和歌は、それこそ「限りもあらじ」で、たくさん謳われてきたのでしょう。


古今和歌集 1084

2022-10-18 06:04:09 | 古今和歌集

みののくに せきのふじかは たえずして きみにつかへむ よろづよまでに

美濃の国 関の藤川 絶えずして 君に仕へむ 万代までに

 

よみ人知らず

 

 美濃の国の関所に流れる藤川は、流れが絶えることがない。私も同じように、絶えることなく帝にお仕えしよう。

 左注には「これは元慶の御嘗の美濃の歌」とあります。「元慶」は第57代陽成天皇を指し、その大嘗祭が執り行われたのは 877年のことです。「藤川」は現在は「藤古川」と呼ばれる川で、岐阜県不破郡を流れる川。第二句の「関」は不破の関のことのようです。


古今和歌集 1083

2022-10-17 06:07:13 | 古今和歌集

みまさかや くめのさらやま さらさらに わがなはたてじ よろづよまでに

美作や 久米の佐良山 さらさらに わが名は立てじ 万代までに

 

よみ人知らず

 

 私の噂はさらさら立てるまい、万年の後までも。

 左注には「これは水尾の御嘗の美作国の歌」とあります。「水尾」は第56代清和天皇、「御嘗」は大嘗祭ですね。清和天皇の大嘗祭が執り行われたのは 859年のことです。第一句、第二句が「佐良山」と同音で始まる「さらさらに」を導き、軽快なリズムを生み出していますね。

 


古今和歌集 1082

2022-10-16 06:24:25 | 古今和歌集

まかねふく きびのなかやま おびにせる ほそたにがはの おとのさやけさ

まかねふく 吉備の中山 帯にせる 細谷川の 音のさやけさ

 

よみ人知らず

 

 吉備の中山が帯のように巡らせている細谷川の流れの音のなんとすがすがしいことよ。

 左注には「この歌は、承和の御嘗の吉備国の歌」とあります。「承和」は第54代仁明天皇の御代。「御嘗」は大嘗祭のことですね。仁明天皇の大嘗祭が執り行われたのは 833年のことです。「まかねふく」は「吉備」にかかる枕詞。漢字で書けば「真金吹く」で、鉄を溶解して精錬する意。吉備が鉄の生産で栄えた地なので、その枕詞となったとのこと。「細谷川」は細い谷川の意で、固有名詞ではないようです。