漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 1091

2022-10-25 04:53:37 | 古今和歌集

みさぶらひ みかさとまうせ みやぎのの このしたつゆは あめにまされり

みさぶらひ 御笠と申せ 宮城野の 木の下露は 雨にまされり

 

よみ人知らず

 

 お供の方よ、ご主人に「お笠をどうぞ」とお勧めなさい。宮城野の木の下露は、雨よりも濡れますから。

 「みさぶらひ」は「み(尊敬の意の接頭語)」+「さぶらひ(従者)」。「木の下露」は、気の枝葉から滴り落ちる露の意で、宮城野は萩と露が著名な歌枕です。第Ⅰ句~三句冒頭の「み」の反復が心地よいリズムを生んでいますね。


古今和歌集 1090

2022-10-24 04:57:12 | 古今和歌集

をぐろさき みつのこじまの ひとならば みやこのつとに いざといはましを

小黒崎 みつの小島の 人ならば 都の苞に いざと言はましを

 

よみ人知らず

 

 小黒崎みつの小島が人であったならば、都への土産として、さあ一緒に行こうと言うところなのだが。

 「小黒崎」も「みつの小島」も所在も詳細も不明ですが、「都への土産に一緒に連れて行きたい」というのですから、それは素晴らしい絶景の地なのでしょう。

 古今集本文は残り十首になりました。カウントダウンですね ^^


古今和歌集 1089

2022-10-23 05:56:25 | 古今和歌集

わがせこを みやこにやりて しほがまの まがきのしまの まつぞこひしき

わが背子を 都にやりて 塩竈の 籬の島の まつぞ恋ひしき

 

よみ人知らず

 

  夫を都に送り出した後は、塩竈の籬の島の「松」という名のように、じっと「待つ」身には、恋しさがつのります。

 第五句の「まつ」は「松」と「待つ」の掛詞。これはわかりやすいですね。^^


古今和歌集 1088

2022-10-22 06:16:49 | 古今和歌集

みちのくは いづくはあれど しほがまの うらこぐふねの つなでかなしも

陸奥は いづくはあれど 塩竈の 浦漕ぐ舟の 綱手かなしも

 

よみ人知らず

 

 陸奥は、どこもそうであるが、塩竈の浦を漕ぐ舟が綱で引かれて行く光景が心にしみる。

 「塩竈」は現在の宮城県松浦湾。第二句の「いづくはあれど」は諸説あり、上記は「いづくはあれど」の意と捉えた解釈。他には、「他の場所はともかくとして」と解釈する向きもあるようです。


古今和歌集 1087

2022-10-21 06:21:37 | 古今和歌集

あぶくまに きりたちくもり あけぬとも きみをばやらじ まてばすべなし

阿武隈に 霧立ち曇り 明けぬとも 君をばやらじ 待てばすべなし

 

よみ人知らず

 

 阿武隈川に霧が立ち込め、そのまま夜が明けてしまっても、あなたをお帰しはしません。帰ってしまったあなたを待っていると、つらい気持ちになってしまうので。

 「君」は想いを寄せる異性、「やる」は人を行かせる意。
 ここから、古今集本体最後の 1100 までは「東歌(あづまうた)」。東国の歌ということですね。そのうち 1093 までは「陸奥歌(みちのくうた)」です。古今和歌集のご紹介も、いよいよ読み切りまで秒読みになってきました。