漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

「現代仮名遣い」 と 「送り仮名の付け方」

2016-02-14 09:16:37 | 雑記
 今年度の漢検も終了し、少し気が抜けている凜太郎です(苦笑)。ただ、毎年書いている気がしますが、年度の第3回から翌年度の第1回までは本試験と本試験の間の間隔がもっとも長く、じっくりと落ち着いた勉強ができる期間です。

 そんな時期だから、もし未読でしたら目を通されてはいかがか、ということで、今日は文部科学省から出されている 「現代仮名遣い」 と 「送り仮名の付け方」 をご紹介します。内容はそれぞれその名の通りで、現代における日本語の仮名遣いと送り仮名のルールを体系化したものです。漢検1級を目指そうという方々やリピーターの皆さんからすれば「何を今更」という感じかもしれませんが、読み返す度に日本語という言語の柔軟さや、それが故のおもしろさ、難しさを改めて感じます。本試験(特に1級)の得点アップにすごく役立つというようなものではありませんが、「漢字」そのものというより、広く「ことば」「日本語」に強い興味のある私にとっては、非常に面白い読み物です。(ただし、決して読みやすい資料ではありません。全体を丹念に精読するのには、結構精神力がいります。(笑) )

 ちなみに、ですが、漢検の正式な採点基準でも、「仮名遣いは、内閣告示『現代仮名遣い』による。」「送り仮名は、内閣告示『送り仮名の付け方』による。」とされています。そのためでしょう、「漢検要覧」の前身である「漢字必携」には、両方の資料が巻末にそのまま掲載されていました。「要覧」になって、なぜか削除されていますが・・・



現代仮名遣い
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19860701001/k19860701001.html

 今回改めて読んでみて、拗音(きゃ、きゅ、きょ、など)や促音(がっこう、せっけん、など)に用いる「や」「ゆ」「よ」「つ」は、「なるべく小書きにする」とされているのに気づきました。「なるべく」であって「必ず」じゃないんですね。

 その他、個人的には、

<「オ列」の長音>
 「オ列」の音を長く伸ばす語の表記について、「おとうさん」「とうだい」などは「う」と書くのに、「おおかみ」「おおやけ」などでは「お」と書くのはなぜか。
   → 歴史的仮名遣いで「ほ」「を」と表記した語は、オ列の長音を「お」と書く。

<「じ」「ず」と「ぢ」「づ」の使い分け>
 「鼻血(はなぢ)」は「血(ち)」と書いて濁って発音する(「連濁」といいます)から「ぢ」と書くのに、「布地(ぬのじ)」は「じ」と書くのはなぜか。
   → 「地面」という語でわかるように、「地」にはもともと「じ」という音があり、「布地(ぬのじ)」の「じ」は連濁ではないから。

といったあたりは、非常に勉強になった箇所です。



送り仮名の付け方   
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19730618001/k19730618001.html

 数年前に漢検初挑戦で2級を受検した際、送り仮名問題には苦慮した覚えがあります。普段、特段の意識もなくすっと書けている語でも、改めて「送り仮名も含めて正しく書け」と言われると迷ってしまうことがしばしばでした。その時、個々の語ではなくルールを覚えてしまえば良いと思い、初めてこの告示を読みましたが、原則的なルールによらない例外が余りにも多くて難儀しました。しかしこれはルールの出来が悪いということではなく、生きた言葉としての日本語の表記がそれだけ多様で柔軟だということだと思います。長くなりますので、内容をひとつだけご紹介します。

<「答え」か「答」か>
 このブログを書いている時も、「こたえ」という言葉を使いたい時に「答え」と書くか「答」と書くか、いつも迷います。「送り仮名の付け方」ではどうなっているかと言いますと、本則では「答え」で、「答」と書くことも許容するとされています。少しルールを追いかけてみますと、まず、

 「活用のある語は活用語尾を送る」

というのが本則で、従って「こたえる」は「答える」と表記します。次に、

 「活用のある語から転じた名詞・・・(中略)・・・は、もとの語の送り仮名の付け方によって送る。」

とありますから、「こたえる」から転じた名詞である「こたえ」は、もとの語の表記である「答える」に従って、「答え」と書くのが正しいということになります。ですが、このルールには「許容」が認められていて、

 「読み間違えるおそれのない場合は、送り仮名を省くことができる」

とされ、その例として「答え」は「答」と表記してもよいと明示されてます。ということで、結論としては「答え」と「答」はどちらで表記してもよいのですが、考え方が整理できて、個人的には「なるほどなぁ」と思った箇所でした。



 早朝から雨でしたが、少し空が明るくなってきました。
 きょう一日、何をしようかな。