こしときと こひつつをれば ゆふぐれの おもかげにのみ みえわたるかな
来しときと 恋ひつつをれば 夕暮れの 面影にのみ 見えわたるかな
紀貫之
あの人が来てくれた時間だと恋しい気持ちでいると、夕暮れの中、ただあの人の面影だけが見え続けているよ。
詞書には「くれのおも」、左注には「忍草 利貞下」とあります。「くれのおも」を詠み込んだ物名歌、あった場所は「忍草」詠み込んだ紀利貞歌 0446 の次ということですね。「くれのおも」とは聞き慣れない語ですが、セリ科の多年草でウイキョウの別名とのことです。