藤の花
なごりをば まつにかけつつ ももとせの はるのみなとに さけるふぢなみ
名残をば 松にかけつつ 百年の 春のみなとに 咲ける藤波
藤の花
河口に立つ松にかかる藤の花は、永遠に変わることなく巡って来ては去って行く春の終わりに、その名残を惜しんで咲いているのであるよ。
「なごり」は「(春の)名残」と「(藤波という波の)余波」、「みなと」は「(春の)おわり」と「(藤がかかる松が立っている)河口」のそれぞれ両義になっていて、わずか三十一文字の中に巧みに二重の意味を詠み込んだ歌ですね。