漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古い過去問題集

2016-02-16 20:45:45 | 雑記


 これまで私が手元に持っていた過去問題集は、平成16年度版(平成15年度実施分)以降だったのですが、15・14・13年度版がネットで相応に安く出ていましたので、購入しました。(もちろん、中古品です。)

 1級の問題が現在の形式になったのは 14-3 からで、私が持っているのは 15-1 以降でしたから、形式が変わる前の実際の検定問題を初めて見たことになります。ご存知の方も多いのだと思いますが、以前の本試験は次のような構成でした。


(一) 読み
 全30問で1問1点なのは現在と同じですが、音読み・訓読みがそれぞれ15問ずつでした。

(二) 書き取り
 1問2点×10問。同音異義語は(六)として独立した大問になっているため、(二)では出題されていません。

(三) 国字の書き取り
 ここが10問なのが、得点戦略の上では現在との大きな違いですね。合格者は皆、ここで稼いでいたことでしょう。

(四) 旧字体
 二字熟語のどちらかの字を旧字体に改めよ、との問題が5問。今出されたら厳しいですね。でも考えて見れば、旧字体は明治期の文献などを読むことを考えると読める必要はありますが、書ける必要はないですね。出題されなくなった理由は、そのあたりにあるのかもしれません。

(五) 熟字訓・当て字
 10問なのは今と同じですが、8~10の3問は国名・地名でした。明治期などの文献に出てくることはしばしばあるのですから、(四)に書いた理屈で言えば、国名・地名問題は復活しても良いような気もします。正式な審査基準には今でも「地名・国名などの漢字表記(当て字の一種)を知っていること」とあることでもありますし。

(六) 同音異義語
 5組10問出題されていますから、今より多いですね。

(七) 故事・諺
 今と変わらず10問です。

(八) 四字熟語
 書き取りが10問なのは今と同じですが、その10問すべてについて意味も問われていました。意味は1問1点ですね。そして今とのもう一つの違いは、準1級配当熟語が相応に出題されていたことでしょうか。

(九) 文章題
 読みは10問ですが、書き取りは15問出題されています。


 というわけで、結構違いますね。個々の問題は相当数が「完全征服」などに収録されていることと思いますから、自分にとっての「新しい問題」というのはおそらくさほどたくさんはないのだろうと思いますが、問題ページを開いた瞬間のぱっと見の雰囲気も新鮮です。この週末以降、模擬試験的に少しずつ解いてみようと思います。結構楽しみです。 ^^


「現代仮名遣い」 と 「送り仮名の付け方」

2016-02-14 09:16:37 | 雑記
 今年度の漢検も終了し、少し気が抜けている凜太郎です(苦笑)。ただ、毎年書いている気がしますが、年度の第3回から翌年度の第1回までは本試験と本試験の間の間隔がもっとも長く、じっくりと落ち着いた勉強ができる期間です。

 そんな時期だから、もし未読でしたら目を通されてはいかがか、ということで、今日は文部科学省から出されている 「現代仮名遣い」 と 「送り仮名の付け方」 をご紹介します。内容はそれぞれその名の通りで、現代における日本語の仮名遣いと送り仮名のルールを体系化したものです。漢検1級を目指そうという方々やリピーターの皆さんからすれば「何を今更」という感じかもしれませんが、読み返す度に日本語という言語の柔軟さや、それが故のおもしろさ、難しさを改めて感じます。本試験(特に1級)の得点アップにすごく役立つというようなものではありませんが、「漢字」そのものというより、広く「ことば」「日本語」に強い興味のある私にとっては、非常に面白い読み物です。(ただし、決して読みやすい資料ではありません。全体を丹念に精読するのには、結構精神力がいります。(笑) )

 ちなみに、ですが、漢検の正式な採点基準でも、「仮名遣いは、内閣告示『現代仮名遣い』による。」「送り仮名は、内閣告示『送り仮名の付け方』による。」とされています。そのためでしょう、「漢検要覧」の前身である「漢字必携」には、両方の資料が巻末にそのまま掲載されていました。「要覧」になって、なぜか削除されていますが・・・



現代仮名遣い
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19860701001/k19860701001.html

 今回改めて読んでみて、拗音(きゃ、きゅ、きょ、など)や促音(がっこう、せっけん、など)に用いる「や」「ゆ」「よ」「つ」は、「なるべく小書きにする」とされているのに気づきました。「なるべく」であって「必ず」じゃないんですね。

 その他、個人的には、

<「オ列」の長音>
 「オ列」の音を長く伸ばす語の表記について、「おとうさん」「とうだい」などは「う」と書くのに、「おおかみ」「おおやけ」などでは「お」と書くのはなぜか。
   → 歴史的仮名遣いで「ほ」「を」と表記した語は、オ列の長音を「お」と書く。

<「じ」「ず」と「ぢ」「づ」の使い分け>
 「鼻血(はなぢ)」は「血(ち)」と書いて濁って発音する(「連濁」といいます)から「ぢ」と書くのに、「布地(ぬのじ)」は「じ」と書くのはなぜか。
   → 「地面」という語でわかるように、「地」にはもともと「じ」という音があり、「布地(ぬのじ)」の「じ」は連濁ではないから。

といったあたりは、非常に勉強になった箇所です。



送り仮名の付け方   
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19730618001/k19730618001.html

 数年前に漢検初挑戦で2級を受検した際、送り仮名問題には苦慮した覚えがあります。普段、特段の意識もなくすっと書けている語でも、改めて「送り仮名も含めて正しく書け」と言われると迷ってしまうことがしばしばでした。その時、個々の語ではなくルールを覚えてしまえば良いと思い、初めてこの告示を読みましたが、原則的なルールによらない例外が余りにも多くて難儀しました。しかしこれはルールの出来が悪いということではなく、生きた言葉としての日本語の表記がそれだけ多様で柔軟だということだと思います。長くなりますので、内容をひとつだけご紹介します。

<「答え」か「答」か>
 このブログを書いている時も、「こたえ」という言葉を使いたい時に「答え」と書くか「答」と書くか、いつも迷います。「送り仮名の付け方」ではどうなっているかと言いますと、本則では「答え」で、「答」と書くことも許容するとされています。少しルールを追いかけてみますと、まず、

 「活用のある語は活用語尾を送る」

というのが本則で、従って「こたえる」は「答える」と表記します。次に、

 「活用のある語から転じた名詞・・・(中略)・・・は、もとの語の送り仮名の付け方によって送る。」

とありますから、「こたえる」から転じた名詞である「こたえ」は、もとの語の表記である「答える」に従って、「答え」と書くのが正しいということになります。ですが、このルールには「許容」が認められていて、

 「読み間違えるおそれのない場合は、送り仮名を省くことができる」

とされ、その例として「答え」は「答」と表記してもよいと明示されてます。ということで、結論としては「答え」と「答」はどちらで表記してもよいのですが、考え方が整理できて、個人的には「なるほどなぁ」と思った箇所でした。



 早朝から雨でしたが、少し空が明るくなってきました。
 きょう一日、何をしようかな。


27-3 振り返り その2

2016-02-13 06:45:52 | 本試験
 続いて裏面です。


(六) 熟字訓・当て字  10/10 点

 今回も無事にフルマークでした。
 新出の 「鉄刀木(たがやさん)」「側金盞花(ふくじゅそう)」が印象的。一方で「樹懶(なまけもの)」「秧鶏(くいな)」は、平成15年度以降で実に5回目の出題でした。四文字熟語は 27-1 の「没分暁漢(わからずや)」に続いての出題。今後もちらほらと出されそうですね。



(七) 熟語の読み・一字訓読み  10/10 点

 ここも満点。
 「賻儀/賻る(ふぎ/おく・る)」は 19-2 の過去問。「霾(つちふ)る」は(一)の訓読み問題で平成15年以降4度出題の頻出語です。「霾翳(ばいえい)」の「霾(ばい)」が少し読みにくかったでしょうか。



(八) 対義語・類義語   16/20 点

6.  廃頽 ≒ 式微
9.  郷関 ≒ 桑梓
 両方ともまったくわからず。どちらも「辞典」の見出し語ですから、「易しかった」とおっしゃるリピーターの方が多いのも頷けますが、逆に言うと、「辞典」見出し語は本試験では新出であっても「易しい」と言われてしまうという、恐ろしい状況になったと言うべきでしょうか。(汗)  私にとっては十分に「難しい」問題でした。



(九) 故事・諺  18/20 点

2. ブンゼイ 膚を咬み虎狼肉を食らう   蚊蚋(正字は、「蚋」の旁に草かんむりがつきます)
 「蚊蚋」は 25-2 で音読み問題として出題。その時も読めず、今回も書けず・・・
 実は一度も書いたことがなかったのですが、試験本番中は、「目が字体を覚えていて書けた!」と思っていました。ところが「蚋」の正字の旁の部分、私は「廿」と書いてしまったところ、正しくは草かんむりでした。なんでそんな覚え間違いをしたかと言うと、明朝体の活字だと、ぱっと見ではその部分が「廿」に見えるからなのでした。ちゃんと覚えていなかったというだけのことですが、惜しかった~~

3. 雲は無心にして シュウ をいず。   
4. ウソ の雄は晴れを呼び雌は雨を呼ぶ。  
 どちらも新出で、かつ、諺自体は知りませんでしたが、無事に正解。ここの設問((八)の対義語・類義語も)の新出問題は、漢字が書けないというより、書くべき漢字がどれなのかがわからないというのが多いですが、今回のこの2問は書くべき漢字は文意から分かりやすいので、そういう意味では新出問題としては易しかったかもしれません。
 ついでのコメントですが、リピーターを続けていて自分として学習済の漢字や熟語が増えていくと、本試験での誤答はこの「書くべき漢字がどれなのかがわからない」パターンの方が多くなっていきます。今回の(八)の「式微」などはその典型ですね。「式」も「微」ももちろん書けるのですが、「式微」という熟語を知らなかったのでできませんでした。漢字そのものではなく語彙の豊富さが試されている問題と言えるでしょうか。



(十) 文章題   27/30 点

6.  ハンサ   煩瑣
 「煩」が思い出せずに焦りましたが、あとから浮かんできて何とか正解。

8.  ホウスン   方寸
 「方寸」という熟語が自分の語彙になく、上に書いた「書くべき漢字がどれなのかがわからない」パターンでしたが、文脈から必死に推測して何と正解! ちょっとびっくりしました。でもこれも「辞典」の見出し語ですから、ネット上では「易しかった」と言われてしまうのかな?

9.  テイセイ   提撕
 読み問題で何度も出題され、25-2 では類義語としても出題されている本試験では定番の熟語ですが、「テイセイ」との音と文脈からこの熟語が浮かばず。文章自体が難しくて文意が良くわからなかったのが敗因でした。

ア.  循って   したが・って
 一生懸命文章を読んで、「めぐ・って」か「したが・って」かさんざん迷ったあげくに「めぐ・って」と書いて×。う~ん・・・




 今回、27-1、27-2 に比べると学習の時間が取れ、それなりの準備ができて臨んだ本試験でした。改めて基礎を固め、「自分にとっての既往問題を落とさない」ことを目標に取り組みましたが、結果的には「滲」や「褐寛博」を落とすなど、その目標が達成できなかったのは残念でした。ですが、得点そのものは自己最高(これまでは175点でした)の更新ができたようなので、まずまず満足しています。


 数日前にご報告しました通り、4月からは放送大学の大学院で、新しい取り組みを始めます。もちろん普通に仕事をしながらですので相応に忙しくなりそうですが、漢検一級への取り組みも可能な限り続けて行きます。引き続きよろしくお願いします。






27-3 振り返り その1

2016-02-13 06:43:44 | 本試験
 私のところには、標準解答は土曜日に届くことが多いのですが、今回は一日早く届いていました。改めて確認しましたが、自己採点としては自分で調べたものから乖離はなく、トータル 181点でした。リピーターになった当初に「いつかは届きたい」と思っていた水準ですので、正式結果で差異が出ないことを祈ります。

 とは言っても、ここに書くのが恥ずかしいような誤答もちらほらとあります。それも含めて、いつものように振り返ってみます。



(一) 読み  28/30 点

2.  簪珥   しんじ
 「かんざし」と「みみだま」ですが、広く宝飾類というような意味かもしれません。いずれにしても知らない言葉でしたが、それぞれの音読みはわかっていたので無事正解。

5.  昇汞   しょうこう
 少し古いですが、15-2 で出題の過去問です。

6.  麕至   くんし/きんし
 一つ前の記事で書きましたが、結局どちらでも正解扱いでした。

7.  榛莽   しんぼう/しんもう
 試験中、「しんぼう」か「しんもう」かさんざん迷い、「草莽」が「そうもう」なんだから「しんもう」だろうと結論づけましたが、どちらでも正解でした。

8.  灑涙雨   さいるいう
 言葉として知らず、さらに「灑」の音読みが「しゃ」の方しか頭に浮かばず、あえなく誤答。四字熟語の「灑掃応対(さいそうおうたい)」が思い浮かべば正答できていたと思うと、かなり悔しい間違いでした。

9.  糶糴   ちょうてき
 25-2 で出題。

10.  皺襞   しゅうへき
 19-2、21-3、24-2 に続いて出題の頻出語。

11.  鬩牆   げきしょう
 21-1 で出題。過去問三連発ですね。

12.  齔齠   しんちょう
 一度「ちょうしん」と書いてしまいましたが、すぐに気づいて修正。危なかった~

13.  隈澳   わいいく
16.  欠伸   けんしん
 どちらも 25-1 で出題の過去問。「欠伸」は前回は誤答し、「これは無理だわ」と思いましたが、一旦出題されて過去問となってしまってからこうして再出題されると「簡単!」と感じます。感覚としては当たり前のことですが、そう思うと検定問題を作るのもなかなか大変ですね。

20.  螫齧   せきげつ
 これは 26-1 で、(七)の「熟語の読み・一字訓読み」問題として出題されています。その時は読めなかったのですが、今回は無事に正解。「過去問は簡単!」のパターンですね。(笑)

23.  幾緡   いくさし
 これは難しかった。「緡銭(びんせん)」は学習していましたが、訓読みは押さえていませんでした。

 このあとの 24 から 30 までは、すべて平成15年度以降の過去問。そうして見ると、やはり(一)は最近にしては易しかったのでしょう。



(二) 書き取り   26/30 点

1.  ドウヨク   胴欲/胴慾
 多くのリピーターの皆さんと同じく「獰欲」と書きました。「辞典」の見出し語ですが、言葉自体を知らなかったので、まあ仕方なし。

2.  ソウソウ たる顔ぶれ   錚錚
 1級の勉強を始めた頃、「壮壮」だとばかり思い込んでいたこの言葉が実はこんな難しい漢字を書くのだと知り、びっくりした記憶があります。本試験できちんと書けて良かったです。

10.  ニジ む   
 旁の部分を「参」と混同して、横棒を書いてしまいました。残念。



(三) 国字  10/10 点

 無事にフルマーク。



(四) 語選択・書き取り  8/10 点

2.  春風の肌寒いさま。   料峭
 25-3 の過去問そのままの出題。

3.  視野が狭いこと。見識がないこと。   管窺
 「かんき」という言葉がなかなかピンと来なかったのですが、選択肢群を何度も読み返すうちに頭に浮かんで来て正解。良かった良かった。

4.  身分の低い者の服。また、無頼漢。   褐寛博
 おそらく多くのリピーターが、いずれ出ると睨んでいた三文字熟語。私もその一人だったのですが、いざ出題されたら「褐」を「葛」と書いてしまいました。情けなぃ・・・


(五) 四字熟語  28/30 点

 落とし穴が待っていました。

キ  刺字(漫滅)
 3級配当。下位級配当熟語までまだ手の回らない私としては、見たことも聞いたこともない熟語でしたが、他の9個の熟語はすべて書けたので、消去法で答が「まんめつ」であることが判明。そこから推測で書き、かつ、最初「慢滅」としていたのを終了直前に思い直して正解。嬉しかった~ ^^

 これで今回の(五)は満点、と思っていたら、なんと意味問題の「残忍で貪婪なさま。」(正解は「鴟目虎吻」)を早とちりと言うか不注意と言うか、「豺狼当路」にしてしまって2点失いました。ああ何ともったいない・・・。自信満々だったのでこの箇所は見直しもしませんでした。見直していればすぐに気付いたはずで、慢心するとやっぱり何も良いことはありませんねぇ。



 以上で、表面はちょうど 100 点。個人的にはこれまでで最高の得点ですが、今回、表面は満点(110点)の人が何人かはいたのではないでしょうか。


 「その2」 に続きます。


  

【麕至】の標準回答

2016-02-12 20:02:26 | 雑記
 さきほど帰宅すると、27-3 の標準回答が届いていました。昨日記事にした【麕至】の読みはというと・・・

 「くんし」 「きんし」 どちらでも可

というものでした。19-1 で出題された時と同じですので予想通りと言えば予想通りですが、意図してのことかどうかは不明ながら、19-1 では「きんし」「くんし」の順だったのが、今回は「くんし」「きんし」の順になっています。本来は「くんし」であるとの「辞典 第二版」の記載をベースとしつつ、「きんし」も許容する、との主旨なのかもしれませんね。

 取り急ぎご報告まで。