風月庵だより

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雨の中の少年

2007-06-01 12:27:18 | Weblog
6月1日(金)曇り【雨の中の少年】

昨日は雷も鳴り、雨も一時的にかなり強く降りましたね。丁度退社時刻に東京方面では一番ひどいようでしたが、皆さんは雨に降られませんでしたか。

さて昨日は駒澤大学でのゼミに参加させて頂き、帰りは終バスの時間になりました。その頃もまた雨足が強くなっていました。バスを待ってバス停に立っていましたら、雨の降りしきる中を、自転車を抱えるようにしてやってくる少年の姿が見えました。

傍まで来た少年を見ると、びしょ濡れです。「どうしたの」と聞くと、「鍵をなくしてしまったんです。家に電話したくて公衆電話を探しているんですが」というので、私はすぐに携帯電話を差し出しました。

少年はお母さんと話をしているようで、どこかに自転車を預けて、バスで帰ってくるように言われたようです。どの方面のバスかと尋ねたら、私と同じ方面のバスなので、もうすぐ最終のバスが来てしまう。

早くに預けられるところを探さなくてはなりません。少年はあたりを見回して、向かいにあるお店に頼もうと、重い自転車を抱えて走って行きました。

無事に預けることができて戻ってきたびしょ濡れの少年に、タオルはあるかと尋ねたら、スポーツバッグの中から、タオルを引っ張り出してちょこっと一箇所だけ拭いたので、お節介おばさんとしては「もっとよく拭きなさい、風邪を引いてしまうよ」と言いました。

ようやく乗れたバスの中での少年との対話。少年はサッカーの練習の帰りだそうです。同じバスなので降りるところを尋ねたら、ほとんど終点に近いところです。それほどに遠いところから、自転車でやってくるのですから、えらいものだと感心しました。

またお家の人にバス停まで迎えに来て貰ったら、と進めましたが、「走れば5分ぐらいですから、平気です」と返事が返ってきました。きっと日頃から甘やかされて育っていないのだと思いました。

住所を教えて下さい、と少年は紙にボールペンを添えて私に差し出しました。そのきちんとしていることにも私は感心しました。一つの行為にその少年の生きる姿勢が表れているようにさえ受けとめられたのです。

私も自分の手帳に彼の住所を書いて貰いました。中学2年生だという少年と住所のやりとりをして、私の方は乗り継ぎのバス停で先に降りました。少年はバスの中から、手を振っています。私も振り返しました。

家に帰ってしばらくすると、電話が鳴りました。でると先ほどの少年の声です。少年はきちんとお礼を述べてくれました。その後に電話口には少年のお母さんが出られて、また叮嚀なお礼の言葉をいただきました。

私はこの少年のお蔭でとても心が癒されました。この少年はきちんと躾けをうけて育てられているのでしょう。少しのことでは甘やかされていないと思います。電話にしても先ず少年がかけてきて、それから母親に代わるということにしても、親は子どもの主体性を大事にしているのであろうと思いました。

親に負担をかけられないので、高校は都立に行きます、とも言っていたけれど、スポーツで鍛えられたり、勉強で鍛えられたり、生活にも鍛えられたりして、たくましく育っているこの少年のような少年少女も日本にはたくさんいると思います。

暗いニュースばかりが耳に入りますが、少年少女を暖かく見守る社会でありたいですね。今日は六月一日、衣替えです。