お正月、練馬区の豊島園に映画を見に行ったとき、駅前にあったマクドナルドの店が閉店していた。入り口の装飾物は無残に剥がされ、そこに大きなポスターが掲げられていた。それには「21年間のご愛顧ありがとうございました」と書かれていた。私は映画を見るとき、ほとんどこの駅のそばにあるシネコンを利用している。その際に待ち時間があるときはマックに入って珈琲を飲む。私が行くのは土日であるが、その時は豊島園に遊びにきている親子連れで何時も込んでいた。その豊島園も次第に寂れて行き、往年の賑わいはなくなている。そしてマック自身もナゲットや異物の問題で客数が激減し、結局21年続いた店も採算が合わなくり、閉鎖になったのかもしれない。
閉店したマック
マックの跡にオープンしたドトール
先週、久々に豊島園に映画を見に行ったとき、閉店していたマックの跡にドトールコーヒーが開店していた。映画の待ち時間があったのでこのドトールに入ってみる。広く綺麗になった店内は若い人達で満員である。珈琲を飲みながら店内を観察して分かることがある。一つは以前に比べて客席が広くなった。それはマックに比べ厨房スペースが少なくてすむからであろう。二つ目は客層と店内の雰囲気が変わった。マックは子供連れが多く、油臭とともに何となく荒れた雰囲気があった。しかし同じ混雑していても若い男女が多く、珈琲が中心だと整然とした雰囲気である。今マックは落ち目、反対にコーヒーチェーンは上り調子である。盛者必衰、時代の流れの中でやはり変化は確実に起こっていることを感じる。
会社の近くにパスタの店がある。5~6年前までは時々はランチを食べていたが、最近はほとんど行ったことがない。それは店の雰囲気から、何となく入り辛く感じるようになったからである。店に掲げてあるイタリアの国旗は汚れてポールに巻きついたまま、店の前に置かれた水槽は藻で緑色に汚れ、ショーケースの中は何も無くホコリが溜まっている。唯一営業しているのが分かるのはランチメニューの建て看板だけである。以前は夫婦でやっていた店、さて今はどうなっているのか?、そこで時々は行っているという人に聞いて見た。ランチメニューは相変わらず、パスタ2種のチョイスとケーキとコーヒー付きで1000円である。以前は周辺のOLがよく来ていた。しかし年々客数が落ち、時には1組だけの時もあったという。何年か前から奥さんは働きに出て、旦那さんがアルバイトを使ってランチだけにしたようである。
店の入り口
巻き上がったままになっている国旗
営業していることが分かるのは建て看板だけ
この店の様子を外から見ていても、その凋落振りは分かる。店にお客を迎える気構えは無く、惰性でやっているだけのように見える。これでは客が減っていくであろう。しかし店を運営している主人はそれが分からないのであろう。毎日毎日ちょっとづつ店が汚くなっていく。その毎日の変化は当事者には分かりづらい。「昨日と同じようにやっているのに、なぜ客はこなくなるのだろう」そう思うのかもしれない。しかし私のように時々見て通る者には「荒れているなあ~」と感じ、また次ぎのときは「入る気がしないなあ~」と思うようになる。「客商売の基本は客の目線でものごとを考えること」だと言われる。結局一歩引いて客の立場から自分の状況が見えないのである。
マックも基本的には同じなのであろう。ファストフードの雄として全国に展開したが、やがて絶頂期を迎える。客数が落ちてくると、セット割りなどして単価を落とし客数を上げる。客数が戻れば単価を上げて売り上げを作る。そんな繰り返しでなんとか維持してきた業績も、ナゲットと異物問題で一気に消費者離れにつながった。時間の流れの中でファストフーズに対する顧客のニーズが変わっていたのに対応できなかった。それはファストフーズのガリバー的存在がゆえに慢心があったのであろうか、打つ手も小手先の策だけで業績の回復は思うに任せない感じであった。「消費者ニーズの変化をとらえ、どう変わっていくか?」、「言うは易く行なうは難し」である。
6月の初め、上に書いたパスタ屋の前を通っていたら入り口に閉店の張り紙があった。
「ああ、やっぱり」
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