女房はよくテレビの健康番組を見ている。そこで色んな情報を得て健康に前向きな「気」になっている。しかし健康番組で言っていたことを聞いているだけで、それを取り入れて健康管理しているのは見たことがない。「知っていること」と「やれる」ということは別モノ、と言われるように知識を得て安心しているだけなのであろう。
世の中にあふれている医学や健康に関する情報は玉石混合である。これが体に良いと聞けばそれを食べ、あれが体に悪いと聞けばそれを食べないようにする。しかし当事者はどういう根拠があって、体の何に良いのか悪いのかは全然分かっていないことが多い。10年前まで常識だと思われていたことが、今は軒並み打ち消され正反対になって行く、これが今の栄養学である。例えば、「正しい栄養バランスで食事を摂りましょう」といわれるが、そもそも本当に万人にとって正しい栄養バランスなどと言うものは分かっていない。個々人の体の状況に合わせ、その人がもともと食べていたものや、その嗜好を参考にして、そこから何を増やしたり減らしたりすれば良いかを考えるべきなのであろう。個人の栄養バランスの基準はあっても、医療従事者が万人に向かって提唱できる「理想の栄養バランス」というものは存在しないようである。
私は10年前から「糖質制限」に興味を持ち、食事ではなるべく糖質は摂らないように心がけている。その切っ掛けは、私の友人が「境界型糖尿病」と診断され、医者から言われたカロリー制限を伴う食事療法はせず、当時話題になり始めた「糖質制限」を始めた。その結果、医者が驚くほど数値は改善され、肥満もなくなり、その後も真性の糖尿病にはなっていない。その話を聞いて糖質制限に関する本を読み、その理屈に納得してからは、なるべく糖質を抑えることを意識している。
そんなことから、今回本屋で「糖質制限の真実」(山田悟著)という新書を見つけ読んでみた。以下、本に書いてあることを抜粋してみる。
生活習慣病は、糖尿病と高血圧と脂質異常症の3つで8割を占めるといわれる。著者は糖尿病専門医であるということから糖尿病に限定すると、6人に1人が血糖異常者、40歳以上に限定したらおおよそ3人に1人が糖尿病予備軍という。したがって糖尿病予防が大きく生活習慣病の改善につながってくることになる。
糖尿病とは、我々が摂取するでんぷんなどの糖質(炭水化物)が消化され、ブドウ糖となり血液中に運ばれる。人間の血糖値を下げるホルモンはインスリンだけであり、そのインスリンがすい臓から分泌されないとか、その量が不足しているとか、分泌されているのに十分に作用しないなど、様々な原因で慢性的に血糖値が高くなるのが糖尿病である。糖尿病になると、ブドウ糖がエネルギーを必要としている細胞の中に運ばれなくなり、血液の中にあふれ血糖値が高くなる。この高血糖が長期間続くと、全身の血管がダメージを受け続け、様々な合併症を引き起こす原因となる。
欧米の人はインスリンを出す力が強く、太っていなければ食べても食べても充分なインスリンが出るため、血糖は上がりにくい。したがって欧米人は太っていれば糖尿病のリスクは高いが、太っていなければリスクが少ないという分かりやすさがある。一方日本人(東洋人)はそもそもインスリンを出す力が弱く、肥満になる前に血糖が上がってしまう人がたくさんいる。事実日本人の場合、糖尿病を発症する人の半分は肥満ではない。
糖尿病になる人の原因でまず、父母に糖尿病の人がいる場合は遺伝的になりやすい。次に普段から高糖質のものを過剰に食べている人で、3つ目は加齢により糖尿病のリスクは高くなる。それは若い人に比べて高齢者の方が、すい臓からのインシュリンを分泌する能力が衰えきて、血糖値が上がりやすいからである。したがって高齢になれば毎日の食事を低血糖なのもにし、トレーニングしてある程度の筋肉量を保っていれば、すい臓もアンチエイジングができて、血糖値が上がりにくい体になる。
糖質とは、1gあたり4キロカロリー以上を持っているものが糖質、持っていないものが食物繊維と呼ばれ、炭水化物というのは、糖質と食物繊維を足したものである。
体にとっては高血糖そのものも、血糖の上下動もよくない。血糖の上下動が大きければ大きいほど、多くの脳細胞が死に、認知機能が低下するので、血糖値は上がってから抑えるよりも、最初から上がらないようにする方が望ましい。糖質摂取量を少なくし、必要最小限のインシュリンで血糖値をなだらかに保っていくというのが、体には一番負担が少ない方法である。また食事をする順番も大切で、野菜が最初である必要はなく肉や魚が先でもOKであるが、糖質を最後にお腹に入れる(カーボラスト)にすることで、血糖値の急激な上昇を抑えることができる。
穏やかな糖質制限が健康に一番良いといえるのだが、では糖質をどのぐらいにすれば良いかということになる。現在の日本人の糖質摂取量は平均1日270g~300gであるが、これを1日に半分以下の70g~130gにすれば良いと思われる。具体的には1食あたり6枚切りの食パン1枚、ご飯であれば小さめな茶碗に小盛(70g)、麺であれば半玉程度が望ましい。しかし、それではお腹が空くので、糖質の少ないおかずをお腹一杯食べても構わない。お酒はビールや日本酒ではなく、ウイスキーや焼酎の蒸留酒であればOKである。
2008年に世界ナンバーワンの臨床医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された試験では、過去に健康に良いとされた「脂を控えてカロリーを控えるグループ」と、地中海食の「カロリーは控えて脂は食べるグループ」と、「カロリーは気にせず糖質だけを控える糖質制限のグループ」を比べた。その結果もっとも効果のあったのは糖質制限のグループだったそうである。また血中の中性脂肪を一番下げたのも、動脈硬化の発症リスクを下げたのも、やはり糖質制限だったとされた。したがって、カロリー、たんぱく質、油脂の摂取量の面倒な計算をしなくても、低糖質にしてさえいれば、血中の脂も根こそぎよくなり、体重、脂質、血糖が改善できるという。今では糖質制限は民間療法扱いから、確固たる根拠のある効果的な食事療法であることが証明されたていることになる。
昔から「健康のためには油はなるべく控えた方が良い」と言われ続けているが、これからは油を控えるという話は無くなっていく。少なくても一般的な油、植物性の油、オリーブオイルは積極的に摂った方が良い。糖尿病とも関連深い動脈硬化の予防のためには、積極的にバターなどの油脂は摂った方が良いというのは最新の考え方である。今までは卵やバターなどを控えることで、血中のコレステロール値が下がり、心臓病の予防につながるとされていたが、食べるコレステロールを控えても血液中のコレステロールは下がらないと言うことが明らかになった。唯一トランス脂肪酸と過酸化脂質と呼ばれる古くなった油はやはり危険性があるというのが今の見解である。またカロリー制限は骨密度を落としアンチエージングどころではなく、エイジングを促進することになるそうである。
※お酒でも乳製品でも多くの食品が、カロリーオフ、脂肪ゼロ、糖質00%カットなどとアピールしている。果たしてそれは健康に良いことなのかと考えると、何となく「良さげ」と思ったり、メーカーがそう言っているから体に良いのだろうと思ったり、はっきりした根拠も無く、ただ漠然と買っているのかもしれない。例えば分子生物学の本によると、コラーゲンを摂ったからといって、人のコラーゲンに変わることはありえないと言う。それと同じように、脂肪を摂ったから体に脂肪が多く付くわけではない。体脂肪は使われなかった糖質がエネルギーの貯蔵のために脂肪に変わるわけで、脂肪の摂取を減らしても、体に溜まった中性脂肪を減らす事は出来ない。大切なのは糖質(炭水化物)の摂取を減らすことなのである。
「自分の健康は自分で守る」、そういう観点からすれば、ただ言われることを鵜呑みにするのではなく、何が正しいのかは自らが勉強し、自分の健康管理に取り入れていく方が面白し持続するように思うのである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます