monologue
夜明けに向けて
 



わたしが米国に滞在していた頃、ロサンジェルスのクレンショウ地区に「国際劇場」という日本映画専門館があった。ふだんは米国の新作映画をハリウッドで観ていたのだが新しい日本映画が「国際劇場」に来るといつも夫婦で観に行った。支配人は顔なじみになって入場料をまけてくれた。寅さん映画は向こうのアメリカ人にも人気があってその中で描かれる下町人情の話が通じた。その「国際劇場」で見た映画でもっとも印象的だったのは「蒲田行進曲」 だった。舞台は松竹蒲田撮影所のはずだがその背景の景色はわたしが京都の小学校の遠足で撮影所巡り見学に行った太秦の映画村あたりの風景のようだった。なつかしいような珍しいような気分で日本映画黎明期のスターとその取り巻きの異常なようで当たり前のようなペーソスを秘めたコメデイ映画を観たものだった。あの映画の主役たち、風間杜夫、松坂慶子などをテレビで見かけるとなつかしくなる。
fumio

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