(前の記事からの続き)
世界が驚いた、 日本の被災者の 冷静さや忍耐強さは、
一体どこから来たものなのでしょう?
香山リカさん。
「横並び意識が 良いほうに働いて、 今回は 命を救うかたちで機能している。
自己中心的な生き方では 結局 共倒れになってしまう。
それよりも お互いが思いやりを持って、 私よりも人様をと。
ある時期までは 日本人の多くが 持っていた特徴だと思う」
日本人の自然観や死生観を 指摘する声もあります。
アメリカのノーベル賞受賞作家・ パール=バックは、
「つなみ」 という小説の中で、 長崎県雲仙で聞いた話を 書いています。
津波によって 多くの人の命が奪われたあと、 子供の問いかけに 父親が答えます。
「日本で生まれて 損したと思わんか?」
「生きる限りは 勇ましく生きること、 命を大事にすること。
わしら日本人は幸せじゃ。
わしらは 危険の中で生きとるから、 命を大事にするんじゃ」
自然と共に生き、 その悲劇をも落ち着いて受け止める 日本人の姿に、
パール=バックは 強い感慨を覚えたといいます。
自ら里山に身を置き、 日本のあり方を考える、 里の哲学者・ 内山節さん。
「日本の人たちは、 絶えず自然災害に遭いながら 生きてきた。
自然の凄さに対して、 ある種畏敬の念を持つ 生き方をしてきた。
大変辛いけれども、 そこにしか 生きる世界がないということを、
人間の精神の奥の方に 脈々と受け継いできた。
そういうものは消えそうで消えない」
仏教研究を通じて 日本人の心を問い続ける、 文化人類学者・ 上田紀行さん。
「苦しみの状況に向かい合ったときに、 皆で助け合って、 支え合って、
耐え忍んでいくというメンタリティが、 日本人の中には深く流れている。
第二次世界大戦の 焦土と化した日本が、
これだけ復興できたという メンタリティと、 とても近いものがある。
苦しみを いかに支え合っていくかという 共同体の姿があった。
だが その後の経済発展の中で、 我々は 苦しみを共に分かち合って、
助け合って生きるという部分を 忘れていたと思う」
〔 TBS 「サンデーモーニング」 より 〕