「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

違うやり方で行動するために 決断すること (1)

2015年08月25日 19時49分50秒 | 「BPD 実践ワークブック」より
 
※ アクション・ステップ 50
 
 想像の中に身を置くことで、 あなたの状況を見極めましょう。
 
【パート1】
 
 邪魔されない時間と場所を選び、 次のシナリオをかみしめてください。
 
 暗くてカビ臭い、 地下牢に閉じ込められていると 想像してください。
 
 何故ここにいるのか分かりませんが、 誰か権力者を怒らせたようです。
 
 あなたは怯えています。
 
 誰かが遠くで、 苦痛と孤独のせいか、 叫んでいる声が聞こえます。
 
 あなたに 同じ運命が降りかかったのかと、 恐怖に駆られます。
 
 外から足音が聞こえてきて、 扉の前で止まります。
 
 扉が大きくきしんで開き、 重いケープを身に付けた、 大きな男が現れました。
 
 見知らぬ男は黙って、 あなたを励ますように微笑み、 着いてくるように促します。
 
 あなたは怯えますが、 着いていくことにしました。
 
 ほの暗い廊下を 延々と歩いていき、 次第に空気が軽くなるようです。
 
 見知らぬ人に感謝を感じますが、 まだ何が起こっているのか分かりません。
 
 やがて、 鉄の門の所へ着き、 門の向こうには 日の光と緑の草が見えました。
 
 男は振り返り、 微笑んでから、 大きな錠を外して 鉄の門を開けました。
 
 「あなたは解放されました。 行っていいのです」
 
 あなたは外に出たいのですが、 まだ恐れています。
 
 「誰が何故、 私を地下牢に閉じ込めたのですか? 
 
 誰かが追ってきたら、 どうなるのでしょう? 
 
 あなたは誰ですか?  何故いま解放してくれるのですか?」
 
 彼は繰り返します。
 
 「もう行っていいのです。 自由なのです」
 
 あなたは混乱しますが、 暖かな日光の中に踏み出しました。
 
 ひどく喉が渇いているのを 思い出します。

 プールの中の噴水に、 水がほとばしっています。
 
 人々が 水差しを水で満たしながら、 泉のそばに 静かに穏やかに立っていました。
 
 まだ 何が待っているのか分かりませんが、 少なくとも暖かく、 快適で自由です。
 
 見知らぬ男が言った言葉は、 あなたのターニングポイントでした。
 
 もし恐れて 外に踏み出さなかったら、 どうなっていたでしょう? 
 
 奇妙な混じり合った感情が 心を流れ抜けていきます。
 
 誰かが カップを手渡して言います。
 
 「お飲みなさい。 ここは水がたっぷりあるのです」
 
(次の記事に続く)
 
〔「境界性人格障害=BPD 実践ワークブック」
 (星和書店) 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉 より〕
 [星和書店の許可の上掲載]
 
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