「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

聞こえ方  気遣いで改善

2012年07月15日 22時40分51秒 | 介護帳
 
 加齢で聴力が衰え、 一般的には補聴器を使います。

 しかし 本人の意欲や周囲の気遣いで、 聞こえ方が改善されることがあるといいます。

 79才の女性は、 補聴器でも会話がうまくいきませんでした。

 「相手に 自分が難聴だと伝え、 自分から相手に近づいたり、

 ゆっくり話してもらうよう 頼んだりしてみて」 と、 言語聴覚士に助言されました。

 女性は、 「難聴だと知られるのが 嫌だったけど、

 思い切って実行したら 随分聞きやすくなり、 外出が楽しくなった」 と 喜びます。

 高齢者は 単に音が 小さく聞こえるだけでなく、 高音や子音が聞こえづらく、

 「音は聞こえても、 言葉が聞き取れない」  という人は多いものです。

 家族に テレビの音が大きいと言われたら、 コードレススピーカーを近くに置いたり、

 無線で補聴器に音声を送る 補助具などがあります。

 ただ 使い方によって 耳を痛める可能性もあるので、

 医師や言語聴覚士に 相談が必要です。

 難聴の高齢者には 周囲の協力が大切。

 助けになるのが  「聞こえの自己評価表」 〔*注〕 です。

 本人がどれくらい聞こえにくいのか 把握できれば、 手助けしやすくなります。

 耳元で大きな声で話すと、 逆に声が割れ、 聞きづらくなります。

 相手と正対し、 ゆっくり、 自然な抑揚で 話すのが基本です。

 他に、 語尾を曖昧にせず はっきり言い切る, 複数の人が 同時に話さない,

 テレビや水洗いの音など、 周囲の余分な音を減らす、 などを心がけましょう。

 難聴を理解すれば、

 コミュニケーションが取れない高齢者の 孤独感を減らすこともできます。
 

〔*注 : 「聞こえの自己評価表」 〕

 「そうだ」 「そうかもしれない」 「そんなことはない」 で回答します。

① 二人以上が同時に話すと 聞き取れない

② 自動車の中での話が 聞きにくい

③ 人が もぐもぐ話していると感じる

④ 周りの人が  「補聴器を付けてみたら」 と 考えているようだ

⑤ 騒音の多い環境にいる (いたことがある)

⑥ 相手に もう一度言ってと頼んだり、 話を推測して判断したりする

⑦ 相手の顔を見ている方が 話が分かると感じる

⑧ テレビのセリフが聞き取れない

⑨ 携帯電話の着信音に 気付かないことがある

⑩ 集会や授業などで 話が分からない

 「そうだ」 5点, 「そうかもしれない」 3点, 「そんなことはない」 1点で

 計算し、 合計15点以下なら 問題なし。

 30点前後なら 耳鼻科で相談を, 40点以上なら 詳しい検査と補聴器を検討する。

〔読売新聞より〕
 
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こまめに訪問  月額定額制

2012年07月13日 20時35分31秒 | 介護帳
 
 今春の介護報酬改定で、 24時間体制の訪問介護サービスが 新しく始まりました。

 「定期巡回・ 随時対応訪問介護, 看護サービス」 といいます。

 従来の訪問介護は、 日中に30分以上滞在し、 利用は週数回がほとんどでした。

 新サービスは、 ヘルパーや看護師が 1日に3~6回前後、 定期的に訪問します。

 緊急の呼び出しにも応じ、 24時間体制で駆けつけます。

 訪問1回当たりの滞在時間は 10~15分程度と 比較的短いですが、

 費用は 何回利用しても定額制です。

 従来型は 利用回数に比例していました。

 新サービスの費用は、 要介護度に応じて設定されており、

 看護も併用する場合と 介護のみを利用する場合で 異なります。

 例えば 要介護度3では、

 30分未満の身体介護の利用が 毎日2回なら、 従来型のほうが安くなります。

 毎日3回以上 利用するなら、 新サービスのほうが低額になります。

 ただし新サービスには 緊急時の呼び出し対応もあり、

 「安心を買う」 という 意味もあります。

 単純に 訪問回数・ 時間の合計と 費用だけを、 比較することはできません。

 新サービスの対象としては、

 独居で歩行困難だが、 トイレまでの移動を助けてもらえば、

 自宅での生活が続けられる人 などが想定されています。

 ただ、 実施できているのは 全国で29市町村のみで、 普及が望まれます。

〔読売新聞より〕
 
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「食べる力を」  家族の思い -- 命に寄り添う (3)

2012年07月12日 20時54分57秒 | 介護帳
 
 Aさん (49才) の母親 (84才) は、 糖尿病の脱水症状で入院しました。

 急性期病院から、 療養型病床に転院すると、 胃ろうを勧められました。

 理由は、  「15分で食べられないから」  でした。

 Aさんは 強い憤りを感じます。

 「前の病院では食べていたし、 話しもできた。

 胃ろうは 食事介助の人手を 省くためではないのか。」

 Aさんは胃ろうを断りましたが、

 鼻からチューブで 水分や栄養を送る 方法になりました。

 半年後、 母は声が出なくなり、 飲み込む力も 一層落ちてしまいます。

 Aさんは親しい歯科医に 口腔リハビリを勧められました。

 歯科医に 食べる機能を評価してもらい、 リハビリ指導を受けます。

 あごの動きに関わる 首周辺の筋肉は、 マッサージで かなり硬さが取れてきて、

 期待を持って リハビリを続けています。

 一方、 ある女性は、 夫が脳梗塞で寝たきりになり、

 医師から  「胃ろうにしても、 口から食べられるようになれば 外せる」

 と説明され、 承諾しました。

 しかし病院では 口のリハビリは行なわず、 食べる力は戻りませんでした。

 女性が 胃ろうから栄養を入れようとすると、 夫に手をつかまれたことがありました。

 「 『もういらない』 という 意思表示だったと思う。

 食べる訓練もしないのに、 安易に延命させる 医療はやめてほしい」

 命のありように関わる 本人や家族の思いが、

 病院の都合や 医師の安易な判断で 軽視されてはなりません。

〔読売新聞より〕
 
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民間の支援  父との絆回復 -- 命に寄り添う (2)

2012年07月11日 20時35分41秒 | 介護帳
 
 B子さん (62才) は、 最愛の母とは逆に、

 父との関係は 長年うまくいっていませんでした。

 B子さんは 病弱な母の介護を 一人でしていましたが、 調子を崩して倒れました。

 父 (88才) が 母の介護を引き継ぐと、 今度は 父が倒れてしまいました。

 母はまもなく 病院で亡くなり、 父は体力が急に低下しましたが、

 B子さんは体調が悪く、 父の介護をできる 状態ではありませんでした。

 そこで支援を受けたのが、 生活自立の支援や相談を行なう 会員制のNPO協会です。

 B子さんは 93才になった父に、 同協会の保養所に移ってもらいました。

 病院と違い、 宿泊者は 自由に時間を過ごせます。

 訪問診療やヘルパーも頼め、 B子さんも好きなときに来て 泊まることができました。

 しかし 父は脳梗塞を起こし、 口から食べる力も衰えました。

 協会のカウンセラーは、

 「二人の絆を取り戻すまで、 もう少し頑張ってほしい」  と願いました。

 B子さんも同じ思いで、 相談の結果、 父に胃ろうを付けてもらいました。

 B子さんは父を看取るため 施設に住み込みます。

 父は衰弱が進んで 言葉数も少なく、

 お互いわだかまりもあって 視線を合わそうとしませんでした。

 でも次第に 目と目で会話ができるようになり、 1年が過ぎたある夜。

 B子さんが  「おやすみ」 と声をかけると、

 父は  「一人になっても大丈夫か」 と 聞いてくれました。

 自分を案じてくれ たその言葉に、 B子さんは愛情を感じたといいます。

 翌朝、 父は 微笑みながら旅立ちました。

 「快適な環境で、 父と二人だけの時間を 作ってもらったおかげで、

 最期にやっと 心が通じ合えた」

 そう B子さんは感謝しています。

〔読売新聞より〕
 
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透析患者を在宅で看取る -- 命に寄り添う (1)

2012年07月10日 19時51分15秒 | 介護帳
 
 透析は週3回、 4時間ほどの通院治療で行ないます。

 患者の負担が大きいですが、 生命維持のため、 基本的にやめられません。

 透析を受けていた 70才の男性が、 肝臓がんの手術を受けました。

 完治せず、 容体は悪化しましたが、 透析に通い続けました。

 しかし3ヶ月後、 衰弱が目立ちはじめ、 夫婦で 通院を見合せることに決めました。

 自宅で訪問診療を受け、 ビールを飲みたいと言う夫に、 ストローで飲ませると、

 「おいしい」 と喜びました。

 1週間後、 妻や訪問看護師に見守られ、 眠るように亡くなりました。

 妻は、  「透析しないと死んでしまうかも、 という不安はあったが、

 無理に通院すれば、 逆に死を早めたかもしれない」  と振り返ります。

 近年、 患者の高齢化とともに

 透析を見合わせたり、 中止する例が 多く報告されています。

 日本透析医学会は、

 本人や家族の同意で 導入を見合わせたり、 中止する際の 手続きを示しました。

 また、 「腹膜透析」 という 選択肢もあります。

 カテーテルで腹の中に 透析液を注入し、

 体の腹膜を通して 血中の老廃物を除く方法です。

 本人や家族でも扱え、 通院の必要がありません。

 効率は低いですが、 活動の妨げにならず、 透析液の交換は 外出先でもできます。

 82才で 透析が必要なった男性は、 直腸がんの手術も受けており、

 看取りも考えて 腹膜透析にしました。

 86才で亡くなる前日まで 自宅で腹膜透析を続けました。

 男性の次女は、  「入院したら、 高齢の母は 父と一緒にいられなかった。

 しっかり見送りができて 良かった」 と語ります。

 透析患者が最期まで心穏やかに 家族と過ごす方法を、 医療は考えるときです。

〔読売新聞より〕
 
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「支える環境を」  切実な声 -- 認知症  長寿国の現実 (6)

2012年07月09日 18時53分51秒 | 介護帳
 
 「前頭側頭型認知症」 と診断された 70才代の母親と、 40才代の娘は、

 二人で暮らしていました。

 この認知症の特徴である万引きを、 母親は何度も繰り返します。

 徘徊で目が離せず、 暴力や暴言も激しく、 心中も考えるほどでした。

 疲れ果てた末、 母親を精神科に入院させました。

 ところが、 強い薬の影響で歩けず、 口もきけなくなってしまったのです。

 娘は 母親を思わず抱きしめました。

 母親を精神科に入院させた 61才の女性は、

 ベルトでベッドに縛りつけられた 母の姿に 涙があふれたといいます。

 病室の窓には 鉄格子がはめられていました。

 介護施設に戻るためには、 暴れないように 強い薬を飲ませるしかありませんでした。

 施設に移った母親は 動けなくなり、 昨年亡くなりました。

 「仕事があり、 在宅介護は限界だった。

 でも あれしか方法はなかったのか。

 毎日、 母の位牌の前で 謝っています」

 一方、 認知症の父親を 精神科に入院させたことのある 女性 (48) は、

 こう言います。

 「介護施設から追い出された父を、 病院は誠心誠意みてくれた。

 看護師の腕には、 患者につねられた痕が 一杯あったが、 笑顔で対応してくれた」

 別の女性 (46) は、

 「父が入院する精神科は、 ケアが行き届き、 家にいる時より元気。

 母が入所していた特養より ずっといい」  と強調します。

 共通するのは、 在宅介護サービスの貧しさと、

 激しい認知症の症状を 受け止めきれない介護施設の実態です。
 

 「市民後見人」 を活用すべきという 声もあります。

 研修を積んだ市民を 市町村に登録し、

 家庭裁判所が 後見人として選任する仕組みです。

 地域の事情に詳しく、 身近な人が 必要な知識を身に付け、

 いざという時に 支える体制が必要です。

〔読売新聞より〕
 
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国を挙げて 対策進む欧米 -- 認知症  長寿国の現実 (5)

2012年07月07日 20時49分51秒 | 介護帳
 
 イギリスの 「メモリーサービス」 事務所に、

 男性 (74才) から電話が入りました。

 「自分は認知症かもしれない」

 スタッフ2人が 男性宅を訪ね、 物忘れなどの症状や 生活状況を聞き取りました。

 専門医を含めた会議で、 初期の認知症と診断。

 男性と妻に、 今後の経過や 介護サービスの説明をしました。

 発症初期から支援することで、 長く自宅生活ができ、

 長期入院などの社会コストも抑えられます。

 英国は09年に、  「国家認知症戦略」 を策定、

 柱のひとつが 「メモリーサービス」 です。

 日本の認知症の新対策は、 この仕組みを参考にしました。

 英国には、 増加する認知症を  「国家的危機」 と表明しています。

 認知症にかかるコストは、 医療や介護, 働けなる損失も含め、

 年に約3億円と試算しました。

 アメリカでは 昨年1月の 「国家アルツハイマープロジェクト法」、

 オランダ, フランスでも 対策を勧めています。

 WHOは、 50年までに 世界で認知症の人は、

 今の3倍の 1億1500万人とし、 警鐘を鳴らしました。

 一方、 日本は、 認知症の在宅ケアは 不可能に近いと言われます。

 有効な対策が乏しいまま、

 虐待, 介護殺人, 離職など、 認知症を巡る問題が 後を絶ちません。

 65才以上の割合 (高齢化率) が23%と 世界で最も高い日本が、

 認知症対策は 欧米に比べて 貧困さが目立ちます。

 本来は日本がリードすべきで、 これ以上の遅れは許されません。

〔読売新聞より〕
 
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仕事、 家族失う働き盛り -- 認知症 長寿国の現実 (4)

2012年07月06日 20時49分21秒 | 介護帳
 
 57才の料理人の男性は、 51才のとき 念願の自分の店を開きました。

 が、 その直後に やる気が失せ、 疲れも取れなくなり、 うつ病を疑いました。

 54才で 若年性アルツハイマーと診断されます。

 店をたたみ、 妻が働いて 家計を支えました。

 けれども、 疲れ切って追い詰められた 妻の求めで離婚。

 現在は生活保護を受けながら、 ボランティアとして 料理の腕を振るっています。

 でも最近は 料理の段取りを考えるのが 難しくなってきました。

 65才未満で発症する  「若年性認知症」 は、 全国で約3万8000人。

 働き盛りの発症例が増えています。

 認知症本人だけでなく、  「介護離職」 という形で 仕事を失う現役世代もいます。

 介護休養の制度も、 実際には 利用するのに気が引けたり、

 会社の協力にも限度があるのが 現実です。

 やむなく解雇された人は、

 世間から置き去りにされ、 価値のない人間になったような 気がするといいます。

 介護・ 看護が理由の退職者は、 2006年からの1年間で 約15万人。

 02年の1.5倍に増えており、 多くは40~50才代です。

 認知症が 現役世代に与える 影響は大きく、

 仕事, 子育て, 住宅ローン, 老親の介護など、

 現役には 高齢世代と異なる問題があります。

 しかし支援が乏しく、 家庭崩壊なども起きているのが 現実です。

 国が 6月に打ち出した新対策には、

 就労継続など 若年性認知症への支援がうたわれています。

〔読売新聞より〕
 
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成年後見  量も質も不足 -- 認知症  長寿国の現実 (3)

2012年07月05日 20時56分00秒 | 介護帳
 
 「息子に殴られる。 助けてください」

 認知症の80代の女性が、 ショートステイの職員に訴えました。

 体のいたる所に あざがあります。

 自治体の担当者が 女性を特養に入居させ、 親子を離しました。

 長男は 熱心に介護していましたが、

 病状が進む母を 受け止めきれず、 暴力に走ってしまったのかもしれません。

 別の80代の女性は、 本人が分からない間に、

 1000万円以上あった預金が 3年でほぼゼロになっていました。

 息子が 借金の返済に使ったのです。

 認知症の被害者は、 高齢者の家庭内虐待の 半数を占めます。

 背景には、 家族の介護負担があります。

 高齢者の判断力の 低下部分を補い、 できるだけ 自立した生活を送るため、

 成年後見制度が導入されました。

 けれども 認知症高齢者が200万人を超え、 一人暮らしも増加するなか、

 量も質も追いついていません。

 ある80代の女性は、 NPOと 「任意後見契約」 を結びました。

 将来、 判断力が落ちたとき 後見人になってもらうため、

 170万円あまりを預けました。

 しかし 約束は果たされず、 6年後 アパートの部屋には、

 腐った食べ物が散乱し、 尿臭がこもる中に 女性が座りこんでいたのです。

 預金が頻繁に引き出され、 健康状態も悪化していました。

 弁護士らが協力して NPOと契約を解除、 社会福祉士が後見することになりました。

 成年後見の申し立ては 年3万件を超えましたが、

 制度を悪用した 詐欺事件などが相次ぎます。

 財産の着服は 2年足らずで550件、 被害総額は約55億円に上ります。

 98%は親族が後見人ですが、 法律家の不正も目立ちます。

 ケアを家族任せにせず、 第三者の後見人に 繋げる仕組みが必要です。

〔読売新聞より〕
 
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初期の症状を把握  集中支援 -- 認知症  長寿国の現実 (2)

2012年07月05日 20時55分25秒 | 介護帳
 
 台所の床に 魚の骨が散らばり、 浴室には汚れた衣類が 積まれていました。

 「上の階から水が漏れている」  という苦情で、

 地域包括支援センター 〔*注〕 の職員が、

 90才代の夫婦が暮らす アパートを訪れたときのことです。

〔*注: 市町村が設置する 福祉の総合相談窓口。〕
  
 問題はないと 夫は言いましたが、 妻の肌着は 便を漏らした跡で 汚れています。

 二人とも 認知症の疑いがありますが、

 その自覚がなく、 介護保険の利用も断られました。

 早めの支援があれば、 普通の暮らしが続けられるのに。

 支援が乏しく 在宅で暮らせない 現状を変えるため、

 国は 認知症の新対策を発表しました。

 5年間で、 看護師や作業療法士などによる  「初期集中支援チーム」 を

 全国に配置します。

 地域包括支援センターが拠点となって、

 認知症が疑われる高齢者宅を 訪問して支援を行ないます。

 激しい症状が出た際に 往診などに当たる、

 「身近型認知症疾患医療センター」 も整備します。

 福井県では、 11年前から  「初期集中支援」 に取り組んでいます。

 65才以上の高齢者がいる 家庭を訪問し、

 認知症の可能性や 生活状況などを調べます。

 疑いがあれば受診を促し、

 介護サービスや財産管理などの 福祉サービスの利用も勧めます。

 認知症が進むと出やすい 徘徊などの症状や、

 介護疲れしないための サービスなども説明します。

 しかし こうした取り組みを 全国で行なうには、

 人材確保や育成など 課題もあります。

 2000年に介護保険が始まりましたが、

 認知症に関しては  「空白の10年」 と言われています。

〔読売新聞より〕
 
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徘徊の父  精神科頼み -- 認知症 長寿国の現実 (1)

2012年07月03日 20時00分36秒 | 介護帳
 
 うつろな目で、 両手をベッドに縛られ、 見舞いのたびにやせ細っていきます。

 入院前はピンピンしていたのに、 足がもつれて立ち上がれません……。

 精神科病院で 自分の父親の姿を 目にしたとき、 男性は足がすくみました。

 この男性の父親は、 69才のとき認知症と診断され、

 やがて徘徊するようになります。

 息子である男性に、 ステッキで殴りかかってくることもありました。

 母親も倒れ、 男性は次第に限界になっていきます。

 かかりつけ医に勧められ、 精神科病院に入院させました。

 その結果が、 冒頭の光景です。

 男性は 必死に介護施設を探し、 半年後に転居させました。

 「当時は知識も支援もなく、 追い詰められた。

 もっと 在宅への支援があれば、

 父から人間らしい生活を 奪わずにすんだのに ……」

 認知症の人の 精神科病院への入院は、

 1999年の3万7千人から、 2008年には5万2千人に増えました。

 うち半数が 6ヶ月以上の長期入院で、

 本人の体力や気力を 落とす危険性があります。

 平均入院期間も 2年7ヶ月に及びます。

 しかし 認知症で入院した人の6割は、

 居住先や支援が整えば  「退院可能」 でした。

 精神科は そもそも治療の場なので、 患者が暮らすのに適してはいません。

 事故を防ぐため 管理的になるし、 プライバシーもありません。

 にも拘らず、 長期入院が増えるのは何故でしょう。

 在宅への 医療や介護サービスが不十分なうえ、

 介護施設も 対応に困ると 入院に頼りがちだからです。

 病院で症状が落ち着いて 介護施設へ移っても、

 暴れたり 他の入居者に迷惑をかけ、 病院に戻される例は 少なくありません。

 認知症の人は 環境が変わると症状が悪化しやすい という特徴を、

 施設側も理解して 対応する必要があります。

 一方 病院側に対しても、 統合失調症の入院が減った分、

 経営のために 認知症高齢者でベッドを埋めている、 という指摘もあります。

 退院できる状態になっても、 疲弊した家族の元へ 支援なしに戻すのは困難です。

 本人と家族の関係が壊れていない 早い段階から、 在宅への支援を始めないと、

 長期入院はなくなりません。

〔読売新聞より〕
 
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高齢者の救急 (3) -- 介護と連携  急変に備える

2012年07月02日 20時07分51秒 | 介護帳
 
 高齢者の救急入院で多いものに  「誤嚥性肺炎」 があります。

 細菌などを含んだ唾液が、 誤って気管側に入って 起こる肺炎です。

 ある病院では、 80才代の救急患者の3分の1を 誤嚥性肺炎が占めます。

 誤嚥性肺炎の原因は、 脳卒中の後遺症や 高齢者のために、

 飲食物を食道側に送るとき 喉がなめらかに動かなくなるためです。

 未然に防ぐには、 医療と介護の連携が必要です。

 担当のケアマネージャーが 高齢者の異変を 速やかに察知して、

 家族に連絡し、 病院に繋げるなどの例があります。

 病院で誤嚥性肺炎が発見され、 手遅れにならずにすみました。

 この病院では 患者が入退院を繰り返さないよう、

 摂食・ 嚥下訓練を行なっています。

 専用のゼリー食や、 とろみがついた食べ物を使い、

 誤嚥しにくい食べ方や 体の姿勢を指導します。

 自宅や施設では、 口の中の細菌を減らす 口腔ケアが再発防止になります。

 普段からケアを担当している 訪問看護師, ヘルパー, ケアマネージャーと、

 担当医らが話し合う会議を 3ヶ月ごとに行ないます。

 顔と顔が見える 関係ができていると、

 異常に気付いた時に 早めに病院に対処できるからです。

 地域での 医療と介護の話し合いの輪が 広がってほしいものです。

〔読売新聞より〕
 
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食べこぼしを減らすには

2012年07月01日 22時41分31秒 | 介護帳
 
 ある介護施設で、 食べこぼしを減らす取り組みを 進めています。

 きっかけは、 入所者が食事のときに付けている エプロンです。

 「赤ちゃんの前掛けのよう。

 尊厳を傷つけているのではないか」

 介護職員が 看護師や理学療法士らを交えて、

 エプロンを外すにはどうしたらいいか 話し合いました。

 その結果、 エプロンをする人は 一人もいなくなりました。

 会話や笑顔も増えるので、 家庭でも 食べこぼしを減らすことは大切です。

 まず大事なのは、 食事中の姿勢を安定させること。

 椅子に座ったとき、 足裏が踵まで しっかり床に付くようにします。

 足が浮いていたら、 足元に踏み台などを置きます。

 また、 背もたれや肘掛けと体の間に クッションを挟んで、 体を安定させること。

 正しい姿勢は、 誤嚥のリスクも減らすことにも 繋がります。

 皿と口の距離も 大切です。

 皿を手で持ち上げられなければ、 皿を置く位置を 少し高くします。

 皿と口が近づくと 食べやすくなります。

 このほか、 昼食前に 口の周りや舌を動かす 体操を行ない、

 カラオケや本の音読も 取り入れています。

 声を出せばお腹もすくし、 姿勢の安定に必要な 腹筋も鍛えられます。

 食べ物を口に運ぶまでに 箸やスプーンからこぼしてしまう場合は、

 作業療法士や理学療法士に 相談しましょう。

 食べる姿勢や、 手に麻痺があっても

 持ちやすいスプーンや すくいやすい形状の器などについて 尋ねます。

 口に入れたあとに こぼれる場合は、 歯科医師や言語聴覚士に 相談します。

 食べ物を喉へ送り込む 舌の機能が衰えているなら、

 食べ物を 舌の奥の方に入れるなどの 工夫をするだけで、 効果があります。

 認知症の場合には、 食事中であることを忘れ、

 食べ物を口に入れたまま こぼすことも。

 「続きを食べましょう」 などと 声かけをするといいでしょう。

 食べこぼしが続き、 低栄養で 全身の機能低下にならないためにも、

 周囲の支えが必要です。

〔読売新聞より〕
 
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