構造改革をどう生きるか
~成果主義・拝金思想を疑え!~ 森永卓郎
第56回
「サブマリン」内閣が浮上したとき日本に何が起きる
同感。来年夏の参議院議員選挙で与党が勝つというシナリオは、私にとっては鬱どころか恐怖だ。
~成果主義・拝金思想を疑え!~ 森永卓郎
第56回
「サブマリン」内閣が浮上したとき日本に何が起きる
では、今回の安倍内閣では、なぜ「大したことをしない」のか。その目的が、来年7月の参議院選挙に勝利することだからである。
そのためには、波風を立てないよう深く潜行することが第一だ。国民に痛みを与えることはもちろん、タカ派の正体がばれるようなことは一切してはならない。
あくまでも爽やかで、優しくて、そして頼りになる総理大臣を演出するのだ。
中川昭一政調会長や麻生太郎外務大臣が、「核武装の議論をするべき」と述べて物議をかもしているが、そもそもそれは安倍総理の持論だ。現に、副官房長官時代には「現行憲法の下でも核武装することは可能だ」とも述べている。
だが、今回の騒動で安倍総理は、「非核三原則は国是である」と答弁して火消しに躍起になっている。
まさにサブマリンである。だが、そんな簡単に人間の本性が変えられるものだろうか。いや、そんなことはできるわけがない。
期が熟せば潜水艦は浮上する。参院選で自民党、公明党が勝てば、サブマリンは一気に浮上するだろう。そのとき、国民は安倍内閣の本当の姿を目にするに違いない。
参議院選挙に勝利すれば、間違いなく内閣改造を行って、本格的な実力派内閣を立ち上げるはずだ。そこで、まず行われることが確実なのは大増税である。
尾身財務大臣は、就任会見で「消費税率の引き上げ論議は来年秋以降に行う」と語っている。見方を変えれば、参議院選挙が終われば消費税率の引き上げをしますよということにほかならない。
小泉内閣で進められた弱肉強食の経済構造改革も、急ピッチで進められることだろう。格差はどんどん広がる。だが、わたしが本当に心配なのは、日本が戦争に巻き込まれる事態である。
安倍総理は、「日本国憲法の枠内でも集団的自衛権の行使は可能である」という考え方を持っている。これに従えば、わざわざ憲法を変えなくても自衛隊は戦争に参加できることになる。米軍に付き従って行動しているうちに、集団的自衛権を行使せざるをえない状況に陥り、自衛隊が、そして日本という国全体が、いつのまにか戦争に巻き込まれていたという可能性は十分にある。
戦後60年あまり、日本はいま最大の戦争リスクにさらされているといってよいだろう。
そう考えると、来年夏の参議院議員選挙は、日本の命運を決める大きな選挙となるといっても過言ではないのだ。
同感。来年夏の参議院議員選挙で与党が勝つというシナリオは、私にとっては鬱どころか恐怖だ。