見出しを見て、息を呑んだ。
アルゼンチン:軍政の秘密収容所から人骨1万点
AP通信などによると、ラプラタ市で9日、軍事独裁政権時代(1976~83年)の秘密収容所跡地から、政府に違法に殺されたとみられる人の骨約1万点が見つかった。銃殺場跡には、約200発の弾痕も確認された。骨は焼かれており、殺害人数や身元は不明。
軍政時代、左翼とみなされた市民が当局に拉致、殺害された。政府発表では死者・行方不明者は約1万3000人だが、人権団体は約3万人と推定している。【メキシコ市】
軍隊に政治を握らせておくとどういうことになるか、ということの見本が、80年代のラテンアメリカ軍事政権だった。そして、その軍事政権を後押ししていたのが米国CIAだった。
チリでは、選挙で選ばれた左派のアジェンダ政権を軍事クーデターが潰して軍事政権が確立したが、そのバックにも米国企業とCIAがいたし、その結果もたらされた政治も、死者・行方不明者数万人というものだ。
今回人骨が出たアルゼンチンでも「
汚い戦争(La Guerra Sucia)」と呼ばれる大弾圧が行われた。非合法的に拉致・拘束・逮捕・殺害された家族の行方を求めて大統領府前の広場に立つ「五月広場の母たち(Madres de Plaza de Mayo)」たちの活動は25年にも及ぶ。
自分が、憲法は国民を統制するものでなく国家権力を統制するものであるという原則にこだわるのも、シビリアンコントロール(文民による軍の統制)にこだわるのも、アルゼンチンやチリで暴力によらない政治活動や思想の表明を試みた何万人もの人々が非合法に拉致・拘束され、正式の裁判も受けられず、殺害されていることを知っているからだ。
合掌……身元特定は難しいのかも知れませんが、五月広場の母親たちに、息子さん娘さんたちの骨を返してあげたいです。