IEEEという国際的電気電子情報の学術グループ活動で、関西支部主催の見学会がありました。
場所は奈良県立橿原考古学研究所です。十数名の人たちが参加しました。
外観は相当に大きな建物です。
広い会議室で所員研究者による説明がありました。そもそも「考古学」とはなんぞや・・・英語ではアーケオロジー(archaeology)という学術領域で、明治時代の日本学者が考古学という用語を作りだしました。現代では中国でもこの漢字が使われているそうです。
つまり考古学は、遺跡,遺構,遺物から,それを残した人類の過去の文化を研究する学問です。
広報担当の研究者水野氏の概要説明があり、その後に遺物の保存方法の研究と実践を担当している研究者奥山氏の講演がありました。
例えば、盗掘がされていなかった藤ノ木古墳の事例が、フルカラーのスライドで紹介されました。一般に、土器、石器は発掘しても劣化が殆ど無いが、繊維、植物(木など)、金属、色彩素材などは地上では変化が激しい。水に浸かっている間は変化がなくても、取り出して乾くと変質しやすいとか、材質がもろくて取り上げて、研究室に持ち帰る方法が難しいなどを解決する工夫を拝聴。
銅鏡の模様を3次元測定機を導入して、数値データ集積の研究を進めています。その成果として、奈良県で発掘したとても小さな鏡の破片に残っていた一文字の漢字を発見し、それを過去に群馬県で発見された銅鏡の文字と照合した結果、同じ鋳型であることが判明しました。この時代の大和(やまと)の文字入り鏡として新発見だそうです。
空気中でも変化が殆ど無い土器、石器の破片を収蔵している倉庫です。遺物は、土器や瓦の破片も記録して、IDを付して全て保存しているそうです。この建物に保存しているものは、研究が未完で問い合わせも予想される遺物が中心です。その他のものは、過疎地の廃校となった学校などを借りて保管している、公共建物は構造がしっかりしているからだそうです。
建物の耐震性はあるそうですが、棚に積み上げたケースが落下することが東北地震であったため、急遽、ロープで固定していました。
さて、冒頭写真のピン、「LMAG」という意味は、終生会員の集まりです。実年齢とIEEE会員歴の合計が100を越えると、ライフメンバー(LM)となって年会費が無料になります。機関誌や論文誌も無料で入手できます。
遺物の整理と修復作業室の風景です。
土器、瓦の欠片にIDを印字する作業。
インクジェットプリンターだそうです。
土器の修復です。実物の破片と、中継ぎの材料とは意図的に色を変えて、将来の研究のために区分ができるようにしています。
土器の修復作業途中の模様です。ジグゾーパズルそのものですが、人工的パズルと違うのはパーツが紛失している場合があります。
報告書が大量に保管されている書庫も見学しました。
古代の遺物では、木簡、竹簡、紙に墨で書かれた情報は千年以上も残っているいるのに、現代の写真フィルムはもはや製造中止、デジタル記録メディアは100年も持たないだろうという議論がありました。検索機能はデジタルならではのイノベーションですが、保存性能は千年まえの技術に負けています。
こんな証明書をいただきました。